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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
3章・アルバンの血戦

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第70話 町への帰路

こちらの敵の掃討が終わって間もなくして、亮達が戻ってきた。

「終わった…いや、終わらせてくれたようだな。未菜、よくやってくれた」

どうやら、未菜の奥義を知っていたようだ。

まあ、彼女らのリーダーなのだから当たり前かもしれないが。


「あの光の柱は何だったんだ?」

ラギルが、割と気になる事を言った。

「それなんだけど…向こうで気になるものを見つけたのよ」


「何を見つけたんだ?」


「これなんだけど…」

未菜が手に持っていたのは、妙な光沢のある青色の小さな玉だった。

「向こうに『死人の心臓』があったから、壊してきたんだけど…そのすぐ近くにこれもあったの」


亮は、近づいてそれを見た。

「亮、これ何かわかる?」


「いや…わからんな。だが、妙な魔力を感じる。持っておいた方がいい気がする」


「わかった。『死人の心臓』の近くにあった時点で、何となくただの石じゃないような気はしたんだけどね」


「『死人の心臓』ってなんだ?」

珍しく樹が質問した。

「この世界のあちこちにある、アンデッドの発生源たる謎のオブジェクト。見た目は白か黒の単色の不定形の塊なんだけど、明らかに不気味なオーラをまとってるからわかりやすい」


「へえ…あ、そういや何回か、そんなの見たことあるな。うーん、言われてみれば確かにあれのそばでよくアンデッドを見かけるな」


「そう。あれはアンデッドを近くに出現させるオブジェクトなの。その原理や正体は全くわからないけどね」

なるほど、つまりマ◯クラで言うところのスポナーというわけか。

「でもそれなら、壊せば良いだけなように思えるんだが?」


「そう。実際『死人の心臓』は硬いけど脆いし、吸血鬼狩り以外でも壊すことはできる。まあ、人間が壊すのはちょっと難しいけどね」


「それで、それを壊せばもうアンデッドは出てこないんだな」


「近くの心臓がそれだけであればね。場合によっては近隣エリアに複数の心臓があることもあるから、油断はできない」


「ほーう…」

俺が納得した様子を見て、未菜は言った。

「さ、まず行きましょ。早いとこ向こうの人達と合流しなきゃ」


「だな」




そうして、俺達は町への帰路についた。

だが、それは来た時のようには行かなかった。


最初の異変は出発から数分もしないうちに訪れた。

突如、蝙蝠のような翼に青い目を持つ怪物が群れで襲ってきたのである。

奴らは本物の蝙蝠のように飛び回り、俺たちに噛みつきや爪による攻撃を仕掛けてきた。

亮達曰く『バティアー』という悪魔系の異形だそうだが、とにかく動き回るのが厄介な相手で、武器による技は勿論だが魔弾を放っても巧みに躱され、それどころかカウンターで爪攻撃を食らう始末だった。

「雷法 [ドームスパーク]」

迅が電の術を使って複数体を一気に仕留め、そのままの勢いで残った奴らもどうにか撃墜し討伐できたが、無駄な消耗を強いられた。


さらにその後、謎に大量のアンデッドが現れた。

最初ゾンビかと思ったのだが、明司の反応から違うと察した。

「ちっ…対日光性吸血鬼(デイウォーカー)か!」


それらはパッと見先ほどのゾンビに似ているのだが、ゾンビと違って走ってくる上に短剣や槍などの武器を持っている。

何より、口には鋭利な牙を持っている。

どうやら吸血鬼、のようだが…今は真っ昼間だ。日光に当たっても平気なのか。

というか、昨晩遭遇したものとはそもそもの容姿が異なる。

昨晩の紗妃の言葉でもほのめかされていたが、この世界には複数種類の吸血鬼がいるらしい。珍しいパターンのような気がする。


向こうは技こそ出してこないものの、シンプルに武器を振り回してくるので無駄な動きがない。

短剣持ちは動きが比較的速いので避け、樹や未菜に任せる。

俺が主に狙うのは槍持ちだ。相手の技量にもよるが、基本的には有利に立ち回れる。

技も出さず、ただ振りかざしてくるだけの相手となれば、なおさらだ。

「棍技 [ウォッシュ・シティアル]」

樹が水を飛び散らせながら棍で振り払い、2体を倒してくれた。

残りは、俺含む他のメンバーで適当にあしらう。


さらに先へ進むと、なんと…

道が、黒い柵のようなもので塞がれていた。

しかも、恐らく奥へ通り抜けれるであろう門のようになっている所には、何やら立派な異形だかアンデッドだかがどっしりと構えているではないか。

「なっ…」


「オレ達がここを通って、まだ数時間だぞ?よくこれだけのものを敷けたな…」


「あの柵…壊して行くか?」

ラギルが大剣を担いでそう言ったが、亮は首を横に振った。

「いや、あの柵からは強い魔力を感じる。破るのは難しそうだ」


「と、なると…」

俺達の目線は、必然的に門に立ち塞がるモノへ向く。

改めて見ると、それは黄色い目に紫の体を持ち、頭には2本の小さな角のようなものもある、大柄な鬼のような姿をしていた。

目の前に行くと、それは喋りだした。

「おお、来たな冒険家一行。待っていたぞ」


「冒険家一行…俺達のことか」


「他に誰がいる?お前たちの事は、我らの耳にも入っている。よって、こうしてオレがお前たちを潰すために派遣されたわけだ」


「ほーう…」

俺が斧を抜き、亮達も武器を構える。

すると、そいつはにやりと笑った。

「吸血鬼狩り…あれだけの軍勢をやっても潰せなかったか。まあよかろう。ここでまとめて始末すればいいだけのことだからな」


「そうか…お前があのアンデッドどもを呼び寄せたのか。そして…お前にはまだ仲間がいるな?聞かせてもらおう。ボスは誰で、どこにいる?そして、目的は?」


「答えない、と言ったら?」


「…いや、いい。まずは、そこをどいてもらおう」


「ふん…ならばオレを倒すがいい。お前らが何を言おうと、オレはここを離れる気はないし質問に答える気もない。お前らの力で、オレを動かせるかな?」


そして、それは武器であろうトゲだらけのハンマーを出して言った。

「オレは異形ガレグ鬼。冒険家一行よ、お前らの力をオレが見てやろう」



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