第68話 吸血鬼狩りジャック
「吸血鬼狩りの団長…なんでそんな人が村長をやってるんだ?」
「まあ色々あって…な。この村は、古くから我々が拠点としている場所でもあるんだ」
「へえ…こういう組織って、もっと人気がない所に拠点を作るイメージがあったんだが」
「ここもかなりの田舎だ。それに村の住人も少ない。我が団は人数が少ないからな、村に溶け込むほうが何かと都合がいい」
「そんなもんか」
「ああ。我らはこの国で唯一の吸血鬼狩りだ、そう簡単にやられる訳にはいかない」
「あれ、そうだったっけ?」
団長…亮は、紗妃を見た。
「お前は…そうか、我らの仲間か」
「仲間、ってことはひょっとして…」
「うむ、私は殺人者だ。まあ、厳密には少し違うが」
「どういうことだ?殺人者にも亜種が存在するのか?」
ラギルが首を捻ると、樹が言った。
「殺人者は亜種…ってか近縁種が結構いる、って聞いたことあるぜ」
「そうだ。そして私は、その中の『無情者』という種族なんだ」
「無情者…ねえ」
無情者は恥や後悔、良心を感じない殺人者よ、と紗妃が素早く説明してくれた。
「戦闘力は殺人者の中でも高い方なんだけど、自他の将来や安全に無関心なのが難点ね」
「自分自身の将来にも無関心なのか…それで普通に生活していけるのか?」
「生きてはいける。ただ、私は普通の仕事はどうにも出来なくてな、もっぱら暗殺稼業をしている」
「そうなの?私も元々暗殺者だったのよね…今は盗賊だけど」
「そうか…まあ、今はこんな状況だ、盗賊になる者も珍しくない。生きてさえいけるなら、何も言うまい。
それで?今すぐに向こうへ行けるな?」
「ああ…」
「なら、ちょっと待ってくれ。団員を何人か連れて行く」
そう言って、亮は席を立った。
数十分後、亮は4人のメンバーを連れてきた。
青目の白い長髪の男、櫻巳明司。
緑目の赤い短髪の男、木埜里迅。
黒目に黒の長髪の女、琴摩未菜未菜。
そして、茶髪の長髪に水色と青の目をした女、什也青空。
それぞれの紹介を終えると、亮は「今回はこのメンバーで出撃する」と言った。
「こいつらもみんな殺人者なのか?」
「ああ。明司は無情者だが、それ以外は全員殺人者だ」
「そうか。…」
俺は、何となく青空が気になった。
オッドアイ…って言うんだっけか。左右で色が違う瞳の持ち主は、なかなか見ない。
すると、青空はそれに気づいたようで、俺に声をかけてきた。
「どうかした?」
「いや、ただあんたの瞳が気になってな」
「そう。…まあ、そうだよね。でも、これは人間に生まれた時からのものだから」
「え、あんた元人間か?」
「うん。私は転生して殺人者になったからね。何なら、うちのチームはみんな転生だよ?」
「あ、そうなのか?」
「そうだな、おれたちはみんな転生だ…亮も含めてな」
明司がそう言った直後、何やら外が騒がしくなった。
「なんだ?騒がしいな…」
「あー、たぶんお客さんが来たのね」
紗妃はそう言ったかと思うと、にやりと笑って続けた。
「お相手してあげましょう、ジャックの皆さん?」
「…そうだな。姜芽さんよ、申し訳ないが臨時の仕事が入ったようだ。あなた達に協力するのは、それが終わってからでいいか?」
「もちろんだ。というか、俺達も協力させてもらうぜ」
「それはありがたい。だが、奴らは普通のやり方では倒せない。だからこれを使うといい」
亮は、謎の透明な液体が入った瓶を渡してした。
「これは聖水というものだ。これを頭からかぶれば、あなたにも奴らを倒す事が出来る。残りのお二人も、使ってくれ」
俺は一思いに瓶の蓋を開け、中の液体を頭からかぶった。
全身が濡れた…と思ったら、瞬時に乾いた。
確かに、普通の水ではなさそうだ。
「紗妃は私達の同族だから、聖水は必要ないな」
「ええ」
「よし…ではみんな、行くぞ!」
家を出ると、何人かの人達が待ち伏せするかのようにいた。
そして、亮達の姿を見ると口々に助けを求めた。
彼らの言葉をまとめると、村の外にアンデッドの群れが現れたので倒してほしい、ということだった。
それを聞いた亮は、もちろんだ、そのつもりだと了承した。
こうして村の人達が助けを求めにくるという事は、彼らは信頼されているのだろう。
なんだか、辺境の小さな自警団という感じがする…例えが少しわかりにくいかもしれないが。
そうして、いよいよ村の外へ繰り出した。
すると、すぐに"それ"が目についた。
「あ、あれか…」
明らかに目の焦点が合っておらず、ゆっくりとふらつきながら歩く人型のモノ。
それは全身の肌が変色して、腐ったようになっている。
見るからに「ゾンビ」である。
亮はあたりを見回し、短剣を取り出して言った。
「ざっと15と言ったところか。姜芽さんたちは、奴らとの戦闘経験はあるか?」
「俺と紗妃は昨日、一回だけ。あとは…」
目線を移すと、ラギルと樹は頷いた。
「あるみたいだ」
「そうか。なら、お二人に説明しよう。あれはゾンビ、最も基本的なアンデッドの一種だ。動きは遅いが、生きた異人や異形よりも耐久が高い。だから、頭…というか首から上を狙って一撃討伐するといい」
「遠距離から一撃…」
俺ははっと閃き、素早く振り向いて一体のゾンビの頭めがけて斧を投げた。
斧は見事ゾンビの額に命中し、ゾンビは静かに倒れた。
その斧を回収して、俺は亮に言った。
「こんな感じか?」
「…ほう、気が早いな。その通りだ。それと、できるだけ遠距離で仕留めるようにすると安全だ。奴らは近づくと噛みついたり引っ掻いたりしてくるが、それ以外の攻撃は基本できないからな」
「なるほど。あ、一つ聞いていいか?」
俺は、これまた人間界でのイメージが強い事を言った。
「奴らに、火は効くか?」
「奴らは動きが鈍い、低級のゾンビだ。奴らになら、弱い火魔法でも十分な効果がある」
「よっしゃ、なら楽勝だ!」
そうして俺は両手に火を灯す。
すると、青空達が反応した。
「あ、あんた火使いだったのね。なら助かるわ」
「これはおれ達の仕事が減りそうだな。…まあ、たまにはいいか」
他のメンバーも武器を出した。
では、アンデッド狩りと行こうか。




