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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
3章・アルバンの血戦

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第65話 術と異能

俺の左右の地面から2つの火球が浮かび上がる。

それらは頭上でひとつになり、倍の大きさの火球となる。

それは高速で突っ込んでいき、メーディアが構える触手を容易く焼き切った。


「おお…!」

火球は消えるまでに計3本の触手を焼き切った。

本体…というか一番太い茎を切ることはできなかったが、それでもなかなかいい感じだ。


何も言わずに次に行く。

次は右手に火球を出現させ、それを正面に6つ浮かべる。

そして、術を唱える。

「炎法 [カルネージフィン]」

全ての火球が繋がって六角形の魔法陣となり、炎が噴き出す。

それは火炎放射器で噴き出す炎のように猛々しく、長い。

先ほどより長時間炎に晒されたメーディアは、触手だけでなく葉も燃え出した。

体が燃え、悶え苦しんでいるのを見る限り、相応のダメージを受けているようだ。

「姜芽、ひょっとして…」


「ああ…」

煌汰が思った通りだ。

俺は、たった今「覚醒」した。

体に宿る魔力と自身の異能を、ようやくまともに操れるようになったのである。


俺は魔法はよく知らない。

だが、たとえ魔法を知らなくても、異能で攻撃しようと考えれば自然とそれっぽい演出の攻撃ができる。

そこから、ふと閃いた。

異能に自身の魔力を乗せれば、どうなるか。

それを試したのが、今の結果である。

火を操る異能に魔力を込めれば、それだけで能力攻撃であり魔法攻撃でもある「術法」を放つ事ができる。

そして魔力は、自身の心持ちと集中力次第でどうにでも調節できる。


俺は「術」を無理に扱う必要はない。

魔力を込めて「異能」を扱えばよいのだ。


「姜芽…もしかして異能と術の紐づけが出来たの!?すごいじゃん!」

ナイアが褒めてくれたが、今はそんなものを受けても喜べない。

「ついにそこまで行ったか。なら、もう術も大丈夫だな?」

柳助への返事代わりに、また術を使う。

「[ファイアアーム]」

柳助の足元に微かに赤い光が現れ、彼の全身を覆う。


「…何をした?」


「ちょっとしたバフ掛けさ。今のは、しばらく腕力を上げる効果がある」


「腕力を…」

柳助は察したのか、単身でメーディアに向かって突っ込む。

そして触手を躱しつつ飛び上がり、技を決めた。

「槌技 [剛腕の震撃]」

メーディアの茎にハンマーを叩きつけ、その全身を激しく揺らす。

すると、メーディアはくたっと地面に倒れて動かなくなった。


「倒したのか…?」


「いや、ダウンさせただけだ。今のうちに畳み掛けよう」


俺とナイアは茎の切断を狙おうとしたが、柳助に止められた。

「待て。それより、ヤツの本体を潰そう!」


「本体!?…って、どこに?」


「ヤツの花の中だ…まずはどうにかして、花を開かせねば!」


そう言えば、こいつはずっと花を閉ざしている。真っ赤なつぼみ…というと薔薇のような綺麗な花を思い浮かべるが、こいつは恐ろしい異形である。

試しに触ってみたが、その花弁は「花」と呼んでいいのか、というほどに恐ろしく硬い。これでは、攻撃して無理やりこじ開けるのは難しいかもしれない。


「えらく硬いな…」


「僕が試してみる![速戦速結]!」

煌汰が花弁を瞬時に凍らせた。

だが、その全体を凍らせる前にメーディアが動き出した。

「…まずい!離れろ!」

柳助が言った直後、俺達は全員触手の薙ぎ払いを受けてふっ飛ばされた。



立ち上がって見てみると、花弁は中途半端に凍りついている。

「…どうにかして、花を開かせないと!」

その直後、最初に俺が切断した触手が再生した。

「急いだ方が良さそうだな…」

とは言え、どうしたものか。

触手を切るにも、一度凍らせてからでないとできない…。


と、奴は花をすぼめ、少し上に向けて…

「…またやる気だな!」

言わずもがな、前回俺を追い込んだやつである。

奴は、今回は煌汰目掛けて麻痺液を吐いた。

煌汰は即座に反応し、液体を全て空中で凍らせて地面に落とした。

「やるな」

だが、メーディアはすぐに次の麻痺液を吐く準備をする。

もちろん、その間も触手の攻撃は健在だ。


次は、麻痺液を俺に向かって吐いてきた。

「…っ!」

結界を張ってガードする。

言っていなかったが、さっき覚醒した時に結界の展開もできるようになった。

魔力を調節できるようになったから…と言いたい所だが、厳密にはまだ未熟な部分もある。

魔力の操作に少し時間がかかる事もあるし、毎回適切な術を使えるかはわからない。

だが、ついさっきまで火球を撃ち出すくらいしか出来なかった事を考えれば大きな進歩であろう。


「…!姜芽、結界も張れるようになったのか!」


「とりあえずはな。っと!」

その瞬間、触手を総動員して連続攻撃を叩き込んできた。

ナイアは心配してきたが、大丈夫だろう。

この程度では壊れないはずだ。




やがて、メーディアの攻撃が止まった。

直後、俺は結界を消して飛び出し、叫ぶ。

「[フレイムベール]!」

メーディアのまわりに薄い炎の壁が現れ、全体に微弱な炎の攻撃を加える。

その結果茎から伸びる触手に小さな火がつき、花弁と萼は発火して炎が燃え上がった。

葉はわずかに赤く光り、茎は変化はなかった。

「な…何してるの…?」


「…よし、わかった!」

今のは、いわば火への耐性を確かめる術。火属性の通りが良い部分は発火し、炎上する。

平均的な部分には小さな火がつき、効きづらい部分は微かに赤く光り、全く効かない部分には何も起こらない。

つまり、こいつは触手と花弁に火が通り、茎と葉には通らないということになる。


まず茎から伸びる触手だが、粘液をどうにかせねばならないので煌汰の力を借りる。

「煌汰!あいつの粘液を全部凍らせてくれ!」


「わかった!」

煌汰がメーディアの全身を覆う粘液を全て凍らせたら、素早く触手に「紅蓮割り」を打ち込んで切断し、その上で高く飛び上がる。

するとやはり花弁が開かれ、萼から触手が伸びてくる。 

「炎法 [バーニングリング]!」

炎の輪を召喚し、萼の触手を全て焼き切る。

そして、花弁の中に見える口のような部分に魔弾を放つ。

「[フレイムレイト]!」


魔弾は花と萼を貫通した。

そして、メーディアは雄叫びのようなうめき声をあげ、最後の抵抗とばかりに全体を大きくくねらせ、倒れた。







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