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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
3章・アルバンの血戦

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第61話 飢えた町

翌日には、目的の町へついた。

まあ町…というには小さく、どちらかと言うと村という感じであったが。


住人達は快く俺達を受け入れてくれた。

大した歓迎は出来ないと言われたが、そんなのはどうでもいい。

俺達はあくまで旅人であって、貴族ではないのだ。

何なら、こうして滞在を認めてもらえるだけ幸いである。


町の人達は、意外にもほとんどが防人あるいは人間だった。

戦士の国、というから戦士がメインなのかと思っていたのだが…

そのことを言ったら、町長は豪快に笑った。

「そんなわけありませんよ。アルバンはみんなの国だ。戦士の国なんて言われてますが、それは国を建てたのが魔戦士バレスで、首都のメゾーヌに戦士がたくさんいるからでしかないんです」

確かにセドラルにも防人以外の種族がいたし、まあ不思議はないか。


「あの…」

ナフィーが、申し訳無さそうに言った。

「ん?なんだいお嬢さん」


「この町の人達…みんなお腹を空かせているみたいですが、何かあったのでしょうか?」


「ああ、それは…」

町長は、顔を曇らせた。

「…ここ数か月、この国は飢饉のような状態になっておりまして、とにかく食べ物がないのです。うちはまだマシなほうですが、メゾーヌなんかはひどい事になっておりますぞ」

言われてみれば、町の人達はみんなだいぶ痩せている。ミイラのよう…とまではいかないが。

「なんでこんな事になったのかはよくわからんのですが、戦士王エウル様が病に倒れたってのが関係してるんじゃないか…なんて言われておりますな」


「戦士王エウル?」


「はい、エウル様はこの国の王です。メゾーヌにあるアルバン城に住んでおります。かつては「無双の戦神」と呼ばれるほど強い戦士だったそうです。

とてもお優しい方だったのですが、今は何やら病にかかっておられるとか…」


「病…か」

それを聞いてすぐ、城へ突っ込もうと思った。

こういう時は大抵裏の事情があって、王様は本当は病ではなく誰かに毒を盛られてたり、呪いをかけられてたりするものであるからだ。

そしてそこの真相を暴けば、おのずと食料危機の真相も判明するだろう。

そうすれば、この国を救う事ができる。


とは言え、すぐには動けない。

ただでさえ仲間が増えてきて、同時に色々とモノも増えてきたので、馬車を改築しなければならない、と輝から聞いているからだ。


「町長さん、俺達、しばらくここに滞在させてもらっていいか?」


「別にいいですが…何かご予定でも?」


「それについてなんだが…このあたりの木をいくらか切らせてもらえないか?今使ってる馬車を改築したいんだが、それに使いたいんだ」


「それなら、南の森の木を好きなだけ使ってもらって結構ですぞ。このあたりでは木材が腐るほど取れますのでね」

そして、町長はついでとばかりに話してくれた。

かつてこの国を作った魔戦士バレスは、元々は木こりとして生計を立てていた。

そのため、かつての自分と同じく木こりとして生活する者たちのために、国の至る所にたくさんの木を植えた。

そして各地の集落の人々に、近くの森林や山の手入れをするように、と言い残した。

故にこの国には現在も木が多く、大陸でも有数の木材産出地であるという。


「木材がたくさん取れるなんて、便利だな」


「ええ、おかげで家や家具を作るのには苦労しないんですよ。まあ、それを食べる事が出来たら、大助かりなんですがね!」

町長は朗らかに笑ったが、この人も飢えに苦しんでいるのかと思うと、複雑な気持ちになった。




俺は柳助、ナイア、煌汰と一緒に町長に教えられた森へやってきた。

煌汰以外のメンバーは斧を持っている。

斧…ということからも察せられる通り、木を切りに来たのだ。

柳助が自前の斧を持っているのにはちょっと驚いたが、昔は普通に使っていたと聞いて納得した。

煌汰は斧を持っていないが、伐採した木についてる細かい枝を剣で切り落とさせるためについてきてもらった。


「どのへんのを切ろっか?」


「なるべく奥の方が良い。手前の方は管理がしやすいから、まだ植えて間もない木が多いだろうからな」

柳助の言う通り、森の入口付近の木は幹が細く若いものが多かった。

確かに、これを切るのはまだ早いだろう。


入ってしばらく進むと、幹が太く、どっしりしている木が多くなった。

「この辺でいいかな…それにしても、輝に木材のこだわりがなくてよかったな」


「そうだな。なら、まずは…あれにしよう」

柳助が指差したのは、幹が俺の腰回りほどもある、杉のように真っ直ぐな大木。

高さも20メートルくらいある、かなりの高木であった。

「デカいな…結構な大物じゃないか?」


「いや、そうでもないと思うよ」


「そうか…?」


「これ、たぶんメトログの木よ。メトログの木は、大きいものだと30メートルを超える事もあるらしいから、これはまだ平均的な方じゃないかな」


「そうだな。それにメトログは杉の仲間で、杉材とほぼ同じ性質を持つから、良質な木材になる。早速伐採しよう」


そうして、木の伐採を始めた。

俺と柳助で根本に斧を振るい、木を切り倒す。

倒した木は煌汰が細かい枝を取り除き、ナイアが魔法で縮めてバッグに入れる。

二人がそれらの作業をしている間に、俺達は次の木を探す…といった感じで作業を進めていく。


木を切り倒すのは、なかなか時間がかかり大変な作業である。

時折ナイアにも手伝ってもらい、何とか進める。


そうして、5本の木を伐採した時だった。


「…ん?」

俺は背後に何かの気配を感じた。

振り向くと、微かに何かの影が見えた…


「うわっ!」

突然、煌汰の叫びが響いた。

慌てて振り返ると、緑色の奇怪な生物が煌汰の顔面にまとわりついていた。

「なんだ…離れろ…っ!痛っ!」

煌汰が顔を歪ませると同時に、頬から血が滴る。


それを見た直後、俺も背中に何か衝撃を受けた。

後ろを見ると、煌汰を襲っているのと同じ生物がくっついていた。

剥がそうとしたが、異様に力が強くなかなか離れない。

ナイアが生物の足?触手?を切り落としてくれたおかげで、なんとか引っぺがせた。

「なんだ、こいつは…!」


柳助が、短剣で煌汰に張り付く生物の足を切りながら言った。

「みんな、武器を取れ!こいつは『メーディアシード』…植物系異形の種だ!」

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