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第2話 盗賊ソネット

奴らが向かってきてる間に、向こうの武器を確認する。

向こうはみんな斧のようだ。

これなら、まあ…対等な戦いが出来るだろう。


奴らを引き付け、まずは薙ぎ払う。

そして、最初に起き上がってきたやつの胸に斧を振り下ろす。

後ろからもう一人が襲ってきたが、

「[フラッシュ]!」

キョウラが白い光を放ち、倒してくれた。


残りの一人は斧を振り上げて向かってきたので、左手に避けつつ足を払って転ばせ、その背中を叩き割る。

それでもまだ起き上がろうとしてきたので、もう一度斧を…と思ったが、その前にキョウラが光でとどめを刺してくれたので必要なかった。



「ふう…てかキョウラ、今のは何だ?」


「光魔法、即ち修道士の専攻魔法です。今使ったのは、初級の魔法ですが」


「光魔法…」


「はい。この世界では、種族によって扱う魔法の属性が違うんです。私達修道士は光、祈祷師は闇、それ以外の種族はことわり、すなわち火、水、電、地、風、氷の六属性を扱います」

なんか、RPGみたいだ。

魔法…いやー、心が震えるな。

俺は、魔法は使えない…多分。


「とにかく、先へ行きましょう。まだ洞窟までは距離があります」



丘を越えた先で、また盗賊が出てきた。

そいつは剣持ちだったのだが、ちょっと攻撃が当たりづらかった。

それに対して、向こうの攻撃は割と当たりそうになる。

というか、普通に食らった。


当たり前だが、痛い。

刺された腹から血が滴る。

これが、戦いってやつか。

苦戦していると、キョウラがまた魔法を使ってくれた。

でも、これでは盗賊は倒せなかった。

そこで、キョウラは剣を抜いて斬りかかった。


大丈夫か…?と思ったが、心配無用だった。

キョウラは、華麗なまでに相手の攻撃を避けつつ自身の攻撃を当て、なんなく相手を倒したのだ。


「すげえ…キョウラ、強いんだな」


「いえ、私は剣士の家系なので、その血を引いている所があるだけです」


「それもすげえよ。しかも魔法も使えるなんて、一人でも十分じゃないか?」


「いえ…先程も申しました通り、私は孤独が苦手でして。一人だと、普段は出来る事が出来なくなってしまうんです」


「そうか…」

ようは、寂しがり屋なわけだ。

てか、よく見たら結構かわいいじゃないか。

綺麗な茶髪に、茶色の瞳。

顔立ちも、普通に人間界にいそうな感じだ。

これでさらに聖女って…好きな人はとことん好きそうだ。


「姜芽様、お怪我は大丈夫ですか?」


「ああ…まあ、ちょっと痛いが…」


「無理はなさらないで下さい。私が回復しますので」


「回復なんか出来るのか?」


「はい」

キョウラは杖を手に出し、高々と掲げて言った。

「[ヒール]」

不思議な青い光が俺の体を包んだかと思えば、傷が塞がると同時に痛みも消えた。


「おお…すげえ…」


「傷を負ったら言って下さい。その都度回復しますので」


「回復…か。やっぱり僧侶…というか聖職者なんだな」


「回復魔法は、誰でも使えるものですが」


「あ、そうなのか?」

誰でも…か。俺も魔法使いたいな。


「姜芽様、どうか私のお側にいて下さい。私、一人は嫌です…」

キョウラは、俺に寄り添ってきた。

「わ、わかった」


やばい。女の子が、くっついてきた…!

めちゃくちゃドキドキした。

俺は恋愛経験とかは全くなく、彼女いない歴=年齢である。

故に、異性には興味はない…

いや、ある。

自分に自信が持てず、恋愛も消極的に考えてしまうだけだ。


あと、こんな事を言うのもなんだが、キョウラの髪?ローブ?はちょっといい匂いがする。

まるで、ラベンダーみたいな。

花の匂いは好きだ。

が、今はそんな事を考えてる場合ではない。


「姜芽様?鼓動が激しいようですが…どうかなさいました?」


「い、いや、なんでもない…」

体が火照ってるのを感じる。

しかも、ドキドキしてるのに感づかれた。

めちゃくちゃ恥ずかしい。

だが、ここは演技をせねば。

男として、自分を頼ってくれてる女の子の前でデレるなんてことはしたくない。

無理やり平然を装い、先へ進む。




村を出て、どのくらい経っただろう。

ここまで、十人以上の盗賊を倒してきた。

俺の体は、返り血でまだらに赤くなっている。

キョウラは最初、そんな俺を物々しい目で見てきたが、今となっては気にもかけていない様子だった。



これまでの戦闘で、いくつかわかった事がある。

まず、これは何人かの盗賊から聞き出した事だが、今出てきている盗賊はみな、ソネットという大きな盗賊団の所属であるらしい。

ということは、奴らはソネットの盗賊、ということになるのだろうか。


次に、キョウラの戦い方。

キョウラは基本的に光魔法を使っているが、たまに剣で戦う事もあった。

その動きは、見てて惚れるくらいカッコよかった。

彼女は剣士の家系の生まれだと言ってたが、それもうなづける。

まあ、俺は他にこの世界の剣の使い手を見たことはないが。


で、それにはちゃんとした理由があるらしく、「魔力」というものが切れないようにしている、ということらしい。

魔力…か。ゲームとかラノベではよく聞く単語だが、正直どんな性質を持ってるのかよくわからない。

この世界の魔力は、どんなものなのだろう。

俺は、魔力を持てる人間…いや、異人なのだろうか。


次に、奴らの武器。

これは見てわかると言えばそうなのだが、どうも斧、鎌、剣、ナイフがメインで、特に斧、片刃のタイプのものを使ってる奴が多いようだ。

そして、これは俺…というか俺の武器との相性にも関わってくる。


しばらく使ってみてわかった。

俺の武器は両刃の斧だが、斧は結構癖の強い武器のようだ。

使い方が「振り回す」のみで、「突く」事ができないし、射程も剣に比べると短い。

何より武器自体が重いので、どうしても振り回す速度が遅くなり、攻撃を外すと隙が出来る。


さらに、これは敵が使ってくるのを見て気付いた事だが、斧は剣などと違って軌道が読みやすい。

それなりの経験がある奴なら、攻撃を避けてその隙を攻めるのは簡単だろう。

かくいう俺も、盗賊の振るう斧の軌道をある程度読めるようになってきた。

今はまだ大丈夫だが、そのうち俺の斧を避ける敵が出てくるだろう。

どうにか、対策を講じた方が良さそうだ。



なんてことを考えながら進むと、いかにもな髭面の大男が現れた。

今までの奴らより、持っている斧もごつく、体もでかい。

そして何より、声がやたらでかい。


「おぉ?こんな所にノコノコ来るたぁ、とんだ間抜けがいたもんだな。

死にたくなきゃ、持ってる物を全部よこしな!」

いかにもなセリフを吐いて、斧を地面に刺してきた。


「お前がここの盗賊どものボスか?」


「んな事はどうでもいい。…って、おお?よく見れば可愛い嬢ちゃんもいるじゃねえか。

よおし、」


「…ふう。キョウラ、やるか」


「はい」

そして、俺は盗賊に駆け寄る。

斧を振りかぶり、叩き割るように振るう。

向こうは、斧を横にして攻撃を受け止めてきた。

すぐに斧を外し、向こうの腹のあたりで横に振ったが、斧の広くなっている部分で防がれた。


さらに向こうは、俺を蹴り飛ばしてきた。

そして体勢を立て直している隙に、高々とジャンプして斧を振り下ろしてきた。


「姜芽様!…[ホーリー]!」

キョウラが魔法を放つと、空中の盗賊に沢山の小さな白い光が降り掛かった。

「ぐわっ…!?」

盗賊がバランスを崩して落ちてきた所に、斧を振り上げる。


これでやったか…と思ったのだが、奴は呻きながら立ち上がってきた。

腹から血を湧き水みたいに流しながら立ってくる様は、正直言って怖い。

けど、ここは勇気を出そう。


立ち上がってきた所に、斧を斜め下から振り上げる。

キョウラがとどめを刺すまでもなかった。

盗賊は、うめき声を上げながら倒れた。




すると、奥のいくつかの茂みがガサガサと動き、盗賊達が出てきた。

襲ってくるかと思ったが、違った。

口々に「なんだあいつ…!」とか「退散だ、退散だ!」とか言いながら逃げて行った。



「逃げた…」


「姜芽様、追いましょう。彼らは恐らく、洞窟に向かっています」


「洞窟に…?よし、追おう!」

奴らを追えば、奴らの巣窟にたどり着けるかもしれない。


俺はそんな俊足でもないのだが、やけに早く走る事ができた。

異人は、足も人間より早いのだろうか。

とにかく、奴らを見失わないように、かつ気付かれる事のないように、走った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 非常に独創的で [気になる点] 特別なストーリー設定 [一言] 各方面は奥深い存在です。 私の小説も面白かった
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