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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
間章・地底からのコンタクト

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第630話 参加の資格

 ローレンが消えたあと、奴が立っていた場所には奇妙なものが落ちていた。

それは淡い紫色をした、直径20センチほどの四角く薄い石板・・・なのだが、ちょっと力を入れたら折れそうなほど薄い。


「なんだこりゃ?」


みんな集まってきて、それに注目した。

そして、アムラが「あれ、何か書かれてない?」と発言したことで、うっすらと何かの文字が書かれていることに気がついた。


ただ、それは「筆記されている」というよりは「刻まれている」というべきもので、石板を何かで直接傷つけて書き込んだらしいものだった。


 魔人の残したものということで、かつて魔人だった美羽ならわかるかと思って尋ねたが、ダメだった。


「傷の深さもまちまちだし、これだけじゃわかんないよ。インクでもあれば別だけど」


すると、メニィが反応した。

「インクなら、私の部屋にありますよ!」


「え、そうなの?・・・でもそれ、使っていいの?」


「もちろんです!それを使って、この石板を染色すれば、もしかしたら・・・!」


 俺はメニィを見、美羽を見て言った。

「よし、すぐに戻ろう」






 そうしてラスタに戻ると、メニィは部屋から黒いインクが入った瓶を持ってきた。

なんでも、彼女は旅先であったことを日記や絵にして記録しており、インクや絵の具は常備しているのだという。


「オーケー。これを使えば・・・」


さっそくバットに石板を置き、その上からインクを垂らした。

そして水で軽く流すと、見事傷のところに沿ってインクが残り、書かれていた文字が浮かび上がった。


・・・が、それは俺たちには解読できないものだった。やはり、魔人の言葉か。


 ここで、改めて美羽に文字を解読してもらった。

彼女が魔人だったのはずっと昔のことだが、魔人の文字は忘れていないらしい。


「えーっとね・・・『クライモリア』って書いてある。・・・」


言いかけて、美羽はにわかに驚いたような様子を見せた。


「なんだ?『クライモリア』ってなんだ?」


「これはね・・・要は、一種の果たし状よ。クライってのは、魔人が気に入らない相手を正々堂々潰すために仕掛ける決闘。そしてモリアは、『申し込み』とか『要求』って意味がある。つまりこれは、決闘を申し込むものなのよ」


 果たし状と聞いてゾワッとしたが、直後にメニィがこう言った。


「でも、日時とかの指定は?果たし状って、普通日時とか相手を指定しますよね・・・」


「それについては、たぶん裏に書いてある。・・・ちょっと待って」


美羽は石板を裏返し、再びメニィからインクを受け取って全体にかけた。

そしてまた石板を水で洗い、刻まれた文字を浮かび上がらせた。


今度は、表とは違い小さめの文字で書かれた5行くらいの文章が書いてある。


「やっぱりそうだ。・・・詳しいことが書いてあるね。『優れた力を持つであろう地上人へ 我々は諸君の力に恐れと疑問を抱いている。よって、地上への進出断念をこの決闘で判断することとした。闇に包まれる夜の21時、これを受け取った場所に来い』・・・」


 なるほど、まさしく果たし状だ。

つまり魔人たちは、地上の人類を恐れてはいるが、どれほどの力を持っているのか完全には把握しきれていない。


故に決闘を持ちかけて強さを正確に測り、地上進出を諦めるかどうかの参考にしたい、ということなのだろう。


「けど、『闇に包まれる夜』ってなんだ?夜は暗いもんだろ?」

マクシスの疑問はもっともだ。


「たぶん、新月の夜のことだね。魔人は光に弱いから、地上に近づくのは新月か、天気の悪い日の夜にすることが多いのよ」


「なるほど、そういう意味か。・・・あれ?とすると、次の新月っていつだ?」


 これについては、すぐにわかる者はこの場にいなかった。

だが、タイミングよくたまたま部屋にやってきたセキアが知っていた。


「次の新月?・・・明日だよ」


「えっ・・・!?」


その言葉に、みんな一斉に驚いた。

セキアもビクッとしていたので、俺は慌てて謝った。


「ああ、ごめんな。・・・明日、新月なのか?」


「うん。わたしは月をよく見るからね、月の満ち欠けのことはよく知ってる」


「そうか、ありがとう。・・・」


 ラスタに戻ってきた時点で、すでに夕方だった。そして今は、18時をまわったところである。

つまり、あと27時間後には・・・。


「明日って・・・すぐじゃない!」

アムラが焦ったように言う。


「21時、って書いてあったんですよね?だとしたら・・・あと27時間!すぐです!」


「せめて、3日は猶予がほしいところだったな。まあ、この軍はメンバーが多いみたいだから、なんとかなるだろうが・・・」


 マクシスの言うように、この軍のメンバーは多くいる。だが、魔人との決闘なんてのに出してよさそうなメンバーはそう多くない。


「決闘ってことは、相手もそれなりに強いやつをよこしてきそうだな」


「そりゃあね。なんせ、地上進出を諦めるかどうかの大舞台に出す選手なんだしね」


美羽は、果たし状を見ながら続けた。


「果たし状には、こっちのメンバーの指定もある。『1人から4人、足りなければ3人以下でもいい』だって」


「足りなければ・・・?くそっ、なめやがって。けど、4人くらいなら余裕で選べそうだな」


「そうだね。・・・あ、でも、今回は私も出たいな」


「もちろんいいとも。となると、俺を除いてあと2人か・・・」


考えていると、美羽が助言してきた。

「ナイアを呼んで、占いをしてもらったほうがいいんじゃない?」


「確かにそうだな。よし、ナイアを呼ぼう」


「ちょっと待って!まだ時間がある。メンバー編成もそうだけど、明日でも遅くはないんじゃない?」


 それは・・・確かにそうだ。

21時というのは、あくまで「明日の」21時であって、「今日の」21時ではない。


「・・・わかった。それじゃ、本格的に考えるのは明日にしよう。今日は、この話は終わりだ」




そうは言ったが、その後夕食時から寝る直前まで、明日に控える魔人との決闘のことが頭から離れなかった。



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