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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
3章・アルバンの血戦

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第57話 脅威の山賊

外へ飛び出し、しばらく歩いて振り向くと、馬車は消えていた。

そう言えば、馬車を消せる魔法があったんだっけか。

とすると、みんなで来た方がよかったか?

…まあ、いいか。


奴らの中にいるであろう種族と同族の(なお)に加えて、回復役もいるのだ。

パーティのバランスは、決して悪くないはずだ。


「あそこですね?」


「しっ…静かに」

メニィに対し、吏廻琉は静かにするよう指示した。

どうせバレているのなら、別に静かにする必要はないと思うのだが。


その考えは、程なくして崩れ去った。

道の両脇の木の上からかすかに物音がした…と思ったら、次の瞬間には矢が飛んできた。

間一髪で躱したが、音が聞こえてなかったら当たっていただろう。

「静かにしてて、正解だったな」


「ええ」

メニィは、今矢が飛んできたそれぞれの木の上に手のひらを向けた。

「[ローグ]!」

手のひらに石の(つぶて)が生成され、一直線に飛んでいった。


すると、見事上にいたモノが落ちてきた。

どちらも弓を持った男で、質素な服を着ていた。

「今だな…」

猶は短剣を抜いて高々とジャンプし、右の男の胸に2本の短剣を刺してバツ字に切り裂いた。

そして、速やかに短剣を抜いて片方を左の男に向かって投げた。

短剣はちょうど起き上がってきた男の額に突き刺さり、男は無言で倒れた。


「おお…!」


「お見事です、猶さん」


猶が手を伸ばすと投げた短剣が手元に戻ってきたのを見て、直感的に短剣自体に魔法がかけられているのだと理解した。

あんな事も魔法で出来るのか。

「あっと、まだいるみたいだぜ?」

猶に言われ、辺りの気配に気づく。

俺達の周りには、木の他にも低木や茂み、岩などがたくさんある。

その裏側、あるいは上から、奴らは俺達をじっと狙っている。

「さて、どうしたもんか…」

メニィに、またさっきの魔法を使えないかと聞いてみたが、小声でそれはかえって危険です、と言われた。

下手にこちらから手を出せば、集中砲火を食らう事になるという。

となると、どうすればいいんだ。


「…」

4人で固まって硬直していると、やがて猶がぽつりと呟いた。

「面倒だ、もう行こうぜ」

奴はパッと姿を消した。

次の瞬間には、俺の右後ろの木から山賊が血を流して落ちてきた。

そしてこれを皮切りに、奴らは一斉に攻めてきた。


俺に向かってきたのは、メイスを持った男。身なりは少々汚かったが、髭面でも大柄でもない、ごく普通の盗賊のような格好をしていた。

…普通の盗賊、って何かよくわからんが。


向こうはシンプルにメイスを振り回してくるだけだったが、その勢いからパワーがあるのが伝わってきた。

やはり戦士なだけある…って何でわかるんだ。

「[ブレイクムーン]」

適当に振り下ろしを躱し、斧を振り上げる技を決めて倒せるかと思ったのだが、そうはいかなかった。

なんと、相手は膝をついて踏みとどまったのである。

そこで、今度はジャンプして頭を叩き割る。

すると、今度こそ奴は倒れた。


次は剣持ちが向かってきた。

正直分が悪いが逃げる訳にはいかないので、なんとか対処する。

振るってきた剣を「横弾き」でガードし、斜め下から振り上げる。

やはりこれでは死ななかったので、すぐに次の技につなげる…と思ったら、相手は高速で突っ込んできた。

慌てて斧を振るったが躱され、そのまま腹を突かれた。

痛みとともに後ろに倒れそうになるが、なんとか数歩の後退で持ちこたえる。

そして、相手の頭に斧を振るう。

躱されたかと思うと、すぐにまた攻めてくる。


やはり、剣の相手は辛い。

リーチが長く、「突き」ができ、機動力もある武器に斧で勝つのは、残念ながら難しい。

さっきも、振りかぶっている間に突きを食らった。

だがそれは武器の重さ故の事で、どうしようもない。



と、ここで閃いた。

「[ソロファイア]」

左手を斧から離し、掌を相手に向けて術を唱えた。

至近で命中したこともあってか、相手は3メートルほど後ろに飛んだ。


斧を振り上げるのには力がいる。だが、手を元の位置に戻すのには力はいらない。

そこで、斧を振るい切ったら素早く左手を離し、術を放てる用意をする。

これなら、攻撃直後の隙を減らせる。

それに、今回のように楽に倒せない相手が出てきた時でも、容易に追撃が出来る。

魔法が効かない相手はともかく、基本的にはこれだけでかなり戦いやすくなるだろう。




仲間たちの方を見てみると、吏廻琉はリスペア…キョウラも使っていた、確か白魔法…を使いこなし、山賊たちをほぼ一撃で倒している。

メニィは「ランド」や「ヒート」といった、地属性や火属性の魔導書で戦い、猶は短剣の二刀流で楽に相手を捌いていた。

特に猶は、護身術ばりの動きで相手の攻撃を躱しつつ、技も使わずに簡単に山賊を倒していた。

その動きからして、かなりの戦闘の経験者である事は容易に想像できた。

さすがは殺人者、といったところか。



そうして戦うこと数十分、どうにか待ち伏せしていた山賊は全て倒す事ができた。

ざっと、10人くらいだろうか。

「ふう…終わったな」


「ええ…あとは、あの柵を破壊するだけね」

吏廻琉は手を伸ばし、魔法…ではなく術を唱えた。

「風法 [エアグリル]」

局所的な突風が巻き起こり、行く手を塞ぐ柵は全て吹き飛ばされた。

「これでいいわ。馬車に戻りましょう」




後で聞いたのだが、今回襲ってきた山賊には2人だけ殺人者がおり、どちらも猶が相手したらしい。

そこまで鍛錬を積んではないようだったが、メニィや俺が戦っていれば危なかったかもしれない、とのことだ。

直接戦わずに済んだのは、運がよかったのだろうか。


その後もちょくちょく山賊…ガルメンの一味らしき異人を見かけたが、気づかれることはなかった。

馬車を透明にする魔法は、本当に便利である。


夕方には、山の中腹まで来た。

この辺りは木もまばらで十分なスペースがあるので、今日はここで停泊することになった。





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