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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
8章・エルメルの戦火

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第620話 眠る坑道の話

 アムラ、マクシスと共に城を出ると、ちょうど昇ってきた朝日が辺りを照らしていた。

ついさっき、エルメルの夜明けともいうべきことが起きたのを考えると、なかなか悪くない光景だ。



朝日を見ながらラスタに戻り、残っていたメンバーに今回の戦績を報告した。

結果として作戦が上手くいったこと、国が復興に向けて動き出す方針が固まったことを伝え、みんなはとても喜んでいた。


「出身国でもないのに、そんなに嬉しいもの?」と首を傾げるアムラに対して、「たとえ祖国でなくとも、崩壊していた国が復興に向けて歩き出すのは嬉しいことです」とキョウラが言った。


「そんなもんなのかしら。・・・てか、あなた僧侶ね?」


「はい。・・・あなたは、祈祷師ですね?」


「そうよ。私はアムラ、こっちの彼はマクシス」


「私はキョウラといいます。・・・」


 2人はしばし睨み合った・・・かに見えたが、少なくとも争いに発展することはなかった。よかった。


とはいえ、正直ちょっと不安ではある。僧侶、つまり修道士系の種族は祈祷師系種族と対立しているそうだし、キョウラの性格やアムラたちの事情を考えると、何かの拍子に争いになる可能性は十分にあるだろう。


「キョウラ、警戒することはないわ」


 母の言葉で、キョウラは多少は安心したようだった。


「ごめんなさいね。この子、間違ったことが嫌いで・・・祈祷師には警戒することが多いの」


「まあ、それは仕方ないかもな。で、あんたは?」


「私はエリミア。吏廻琉(りえる)と呼んでくれるかしら」


「名前が二つ・・・?あ、そうか洗礼名か。てか、なんか顔似てるな。親子か?」


「ええ、私はキョウラの母親よ。キョウラは僧侶で、私は司祭だけど」


吏廻琉が司祭だと聞いて、マクシスは驚いた様子だった。

「司祭か・・・そんな人の娘なら、そりゃご立派な性格にもなるよな」


少なからずとげのある言い方だったが、吏廻琉は特に何も言わなかった。

殺人者と同じく、祈祷師はみんなこんなものなのかも知れない。





「さて・・・これからどうする?」


 操縦室にて、改めて(いつき)(ひかる)と向かい合い、これからのことについて話した。

大陸の八大国はすべてまわった。では、これからどうするか?


「順調に行くと、次はセドラルに戻るってことになるが・・・どうする?」


「うーん、まあそれでもいいような気もするけどな・・・」


 地図で見ると、エルメルはセドラルの南西に位置しているが隣接はしておらず、北のアルバンか東のロードアを通っていく必要がある。


そして現在俺たちがいる首都ラフトの位置、および道中の地形も考えると、セドラルへの道中はなかなかハードなものになる・・・と、輝が話してくれた。


「アルバンを通ってくにしろ、ロードアを通ってくにしろ、セドラルまでは時間がかかる。少なくとも2週間はかかるだろうね」


「2週間か・・・まあ物資も大丈夫だし、時間はどれだけかかっても別に・・・」


 そんな会話をしていると、マクシスが部屋に入ってきた。なんでも、イナとアーツに連れられてラスタ内を探索していたところだったらしい。

ちなみに、アムラの方は美羽に連れ回されているという。


「ここが操縦室か。・・・まあ、小難しいことはわからんが、これで走れてるんならいいんじゃないか?」


なんか適当な返答だ。まあ・・・いいだろう。小難しいことはわからん、ってのは俺も同意だし。


「で、何の話をしてたんだ?」


「これからどうするかって話だ。俺たちはもともとセドラルから来たんだが、今まで大陸の八大国をまわってきててな。このエルメルで最後だったんだ」


「へえ・・・そういや、大陸各地をまわってるって話だったな。けど、ここからセドラルに向かうとなると、ちょっと遠いぜ」


「だから、どうするかなって話してたんだ」


「なるほどな。・・・」


 マクシスは少し考えた末、何かひらめいたようにそうだ、と切り出した。


「その前に、ちょっと寄り道してかないか?この前、ブルーから面白そうな話を聞いたんだ」


「ん?どんな話だ?」


「エルメルの地下には、昔使われてた坑道とか地下施設がたくさんあってな。その大半がもう使われてないものなんだが、その中にはかつて希少性の高い鉱石が取れて、しかも掘り尽くされる前に閉鎖された坑道なんかもあるらしいんだ。もちろん今は誰も使ってないものばかりだから、もしかしたらいいものが取れるかもしれない」


 その話を聞いて、探求者組が大きく反応した。


「おお・・・!そりゃいい話だ!姜芽、すぐに寄り道しようぜ!」


「地下に眠る廃坑、そしてそこには掘られていない鉱石が・・・!んー・・・いいね!すんごくそそる!」


「めちゃくちゃロマンあるじゃないか・・・そういうの、大好きだぜ!」


種族柄当然ではあるが、樹、イナ、アーツは大喜びだ。そのテンションに、マクシスはちょっと引き気味だった。


「・・・えらく喜ぶんだな。とにかく、次の目的地はそこでいいんじゃないか?」


「そう・・・だな。マクシス、その場所はわかるのか?」


「一応ブルーから聞いている。無論、しっかり覚えている」


「よっしゃ!それなら、すぐに行けるな。ブルー、これにその場所を書き込んでくれ!」 


 輝に差し出された地図に印をつけ、マクシスは「これでいい」と言った。

その場所は、ポーン坑道という名前らしい。


「坑道自体はあちこちにあるんだが、その中でも貴重な鉱物が取れたのがポーン坑道だ。武具の加工や錬金に使う鉱石はもちろん、宝石なんかも取れたらしい」


宝石と聞くと、正直ちょっと期待する。

それは輝も同じなようで、急いで向かおう!と意気込んだ様子で言った。


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