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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
8章・エルメルの戦火

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第602話 エルメル城・右の通路

 俺たちは、入り口から見て右の通路を進んだ。

この城は、入ってすぐのところで道が左右に分かれていたので、まずは右側を選んだ形だ。


こちらの頭数は結構多いが、下手に分散すると危険なので、固まって進む。

ナイアの占いによれば、敵も総力を結集して来ているという。少しの油断もできない。


「来たな!」


 現れたのは、四人組の男。

いずれも盗賊っぽい格好をしており、夜会の者なのかラフトレンジャーなのかはわからない。

だが、どちらにせよ倒すことに変わりはない。


一人目が振るってきた剣の攻撃を躱し、背後にいた槍持ちを斬る。

三人目が短剣を持って突っかかってきたが、セキアが術で牽制した。


 四人目は、アグレスの術で動きが鈍ったところに、ルファリアが斬撃を飛ばした。

それだけでは倒れなかったので、ナイアが大剣で斬り上げた。


残りの三人は、それぞれアーツ、沙妃、エンズと斬りあった。

その際、エンズは棍の先端に光の刃をまとわせ、舞うように立ち回って敵を斬った。

さながら、樹のようだ。


 アーツは剣を用い、同じ剣持ちと斬りあった末に相手の胸を切り裂いた。

沙妃は2本の短剣を振るい、片手で相手の短剣を受け止めつつ、もう片方の手で脇腹を突き刺し、そのまま首を突き刺して下まで切り下ろした。


さらに沙妃は、2本の短剣を組み合わせてブーメランのようにし、通路の奥に向かって水平に投げた。

それは、俺たちの気づいていなかった通路の奥の敵の喉元を切り裂き、血と共に戻ってきた。


「それ、ブーメランにもなるのか」


「そうだよ。てか、今更?」


 そんなことを言っている間に、後ろからも怒号と足音がした。

はっと振り向きつつ斧を構えたが、俺が行く前にナイアが技を繰り出した。


「[衝撃斬]!」


大剣を地面に掠らせつつ振り上げ、まっすぐに飛ぶ衝撃波を起こして、距離のある敵をまとめて吹き飛ばす。


そして敵が転んだところに、風の魔弾を飛ばして追撃して、しっかり息の根を止める。

そう言えば、ナイアは風属性だ。


「・・・大丈夫そうだね。今のうちに、進もう!」





 そうして進んだ先々で、様々なものを見た。

いずれも、奴らのこの城での暮らしぶりがよくわかるものだった。


あちこちにある広間のような部屋には、人数が増えたことで足りなくなった分の寝床を無理やり作ったのか、寝袋やベッドがところ狭しと並べられていた。


それほど広くない部屋も複数あったが、どれも机の上は散らかり、椅子は倒れ、床も汚くなっていた。

タンスや本棚は、金になるもの以外は中身をことごとく捨てられたらしく、ほぼすべてが空だった。


 かつて食堂だったであろう部屋は、本来の目的通りに使われてはいるものの、ゴミ屋敷のごとく散らかっていた。

また腐った食べ物でもあるのか、入り口の扉を開けた瞬間に強烈な臭いが鼻を刺し、無数のハエが飛び回っている。


それらの光景を見たソティアは、「あいつら・・・こんなとこでもの食べてんの?」と引き気味に言った。

異形である彼女たちからしても、ここまで不衛生な環境で飲食をするというのは理解しがたいのだろう。


「まるでネズミだな。・・・いや、ネズミに失礼か」

ゼンが、吐き捨てるように言った。




 食堂の扉を早急に閉め、通路を進んでいく。

道中でちょくちょく敵が出てきたが、どれもそれなりに手強いものばかりだった。


異能持ちはいないものの、出撃前に受けたナイアの占い通りさまざまな属性の術、そして多様な武器を使ってくるものが現れる。

魔導書持ちもしっかり現れるので、魔法による遠距離攻撃を被弾しないように振る舞う必要性も生まれる。


 一応回復はできるが、前後から敵が来て挟まれるとちょっと危ない。

幸いこちらも頭数が多いから、ダメージを受けたら仲間の後ろに隠れて回復、ということができる。


とはいえ、敵の中には遠距離攻撃持ちがおり、それらが回復中を狙い撃ってくることもあるので、やはり基本は被弾しないように避けるのが安泰である。


 しばらく戦闘を続け、皆の顔に少しばかり疲労の色が出てきた。

沙妃は息を切らし、ルファリアやソティアの鎧には血が滴っている。

だが、まだまだこれからだ。


「皆、少々疲れてきたようだな」

エルドはそう言って、何やら透明なドーム状の結界を張った。

すると、たちまち体の疲れが吹き飛んだ。


「言っていなかったが、私は皆の疲れや傷を癒やすことができる。ただ、これは魔力の消費が大きくてな、そう乱用できるものではない。この先も非常時には使うが、あまり当てにはしないでほしい」


 まあ、それは仕方ない。全員をほぼ全快できるような手段は、使う機会が限られているのがお約束だ。


それに、エルドに負担をかけるわけにもいかない。この先、より一層傷を負わないように、慎重に進んで行きたい。

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