第601話 エルメル城・入り口
それからほどなくして、エルドたち及び北や西の入り口から入ってきた仲間たちもやってきた。
みんな、ここまで誰にも絡まれずに済んだ・・・と言いたいところだが、ルファリアとソティアについては男たちからやたらと見られたという。
「実害はなかったから無視してきたが、じろじろ見られるのはいい気はしなかったな」
ルファリアはそう言うが、正直彼女たちの場合、ここの連中でなくても通りすがりに見られそうだ。
何しろ、彼女たちは上半身には立派な鎧を身に着けつつも、脚は剥き出しにしている美女である。
ルファリアに至っては胸元が開き、美しい谷間を覗かせている。
こんな女が歩いてたら、そりゃ男たちは視線を奪われるだろうし、二度見するだろう。
だが、たぶん彼女たちにそんなつもりはまったくないのだ。
実害がなかったのなら、それは何よりだが。
「・・・さて、ここからどうやって入る?」
赤い道を渡りきり、いよいよ城へ突入!というところまで来たのだが、入り口の前には見張りがしっかりおり、しかもその入り口につながる道も一本しかない。
道の下には、水がたっぷり溜まった堀があるが・・・絶対入りたくない。
濁っているし、下水みたいな臭いがする。
どう見ても、どう考えても不衛生である。
「簡単なことさ。あの2人を眠らせて、その間に入ればいい」
アグレスが何かの術をかけると、門番2人は途端にでかいあくびをし、壁に寄りかかって眠り始めた。
「これでいい。さあ、行くよ」
入り口の門に、鍵はかかっていなかった。
ただ薄暗かったので、「ファイアーランプ」を唱えて照明を確保した。
「ここまで来れば、もう町中にいたような奴らは来ないんだよね?」
沙妃がそう言うと、アグレスは頷いた。
「ああ。けど、ここからはもっとヤバい奴らがわらわら出てくる・・・腹をくくるんだね」
少し進むと、すぐに敵が現れた。
「ん?・・・何者だ!」
弓を持った男だった。
撃たれる前にと、魔弾を撃って仕留めた・・・つもりだったが、すぐに立ち上がってきた。
なので、次は斧を投げつけた。
見事首に命中し、血を迸らせながら男は倒れる。
「今ので、見つかったか・・・!」
「いや、まだだ。見つかったなら、もっと大勢の敵が押し寄せてくるはずだ!」
エルドの言う通り、かもしれない。
とにかく、見つかっていないうちが華だ。今のうちに、なるべく多くの敵を不意打ちで倒したい。
「照明魔法だと、こっちの位置がバレる。このほうがいいね」
アグレスはそう言って、「ナイトアイ」という魔法を唱えた。
どうやら暗視の魔法らしく、炎の照明が無くとも全員が闇の中を見通せるようになった。
確かに炎を浮かべる照明魔法より、こっちのほうが安全だろう。
また、同時にアグレスは別の魔法も使い、進むべき道を示した。
その方向に進めば、ボスのいる部屋にたどり着けるということだった。
「あんた、いろいろできるんだな」
感心したように俺が言うと、アグレスはふん、と鼻を鳴らした。
「お世辞はやめてくれ。あたしは、この城に巣食う奴らと同じくらい汚れた呪術師だ。汚いことしか、取り柄がないのさ」
そうは言いつつも、廊下の向こうからこちらの姿を確認して声を張り上げた3人の敵を拘束しつつ、闇の術で一掃する。
「・・・そっちを頼むよ!」
その言葉通り、反対側の通路からも敵が2人来た。
どちらも魔導書持ちらしく、本をかざして炎を飛ばし、氷を吹き付けてきた。
炎は俺が、氷は亜李華がガードする。
そしてその直後、俺たちの背後からルファリアとソティアの斬撃が飛ぶ。
それによって奴らは致命傷を負い、一撃で片付く。
さらに、それから少し間を置いて別の敵が同じ場所から出てくる。
それには、俺と亜李華の術で遠距離攻撃を仕掛けた。
「[フェルバイアード]!」
「[ブリザーショット]!」
どちらの攻撃でも、敵は一撃だった。
「今のところ、そこまで強い奴は出てきてないな・・・」
「油断しないで。ここはまだ入り口、先に行くほど強いやつが出てくる!」
ミアが、扇を構えて言った。




