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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
8章・エルメルの戦火

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第586話 裁きの白光

 天井の裂け目からまばゆい光が差し込み、デリクが降り立つ。

その影は、これまでの夜会メンバーとは明らかに格が違った。


空気が震え、広間そのものが圧し潰されるように重くなる。


「・・・ようやく、降りてきたか」

喉が勝手に震えた。息が詰まる。

リュミエールが低く唸り、刀を構え直す。


 俺は正直、背筋が冷えた。

奴は武器を持っていない。ただ、腕に抱えた分厚い魔導書を開いた。


「[インペル]」


次の瞬間、視界が白に染まり、何かが砕けるような音が響く。


 目を開けると、石床は砕けてボロボロになり、周囲にその破片が散乱していた。

そしてリュミエールたちは、防御していたはずにも関わらずダメージを受けていた。


たった一撃、それもおそらく牽制だろうに・・・この威力か。


「っ・・・ふざけないでよ・・・!」

レイヴェリアが唸り、大剣を握りしめる。

だが、距離が遠い。

奴は悠然とページをめくりながら、こちらを試すように見下ろしている。


 そこで、ミルエラが叫んだ。

「隊長、合図を!」

リュミエールがうなずき、刀を振るって斬撃を飛ばす。

俺たちも、それと同時に飛び込んだ。


だが、奴の前に光の壁が現れ、立ち塞がった。

それに触れた瞬間、焼けるような痛みが皮膚を走り、反射的に飛び退く。

当然の如く、武器は弾かれた。


「なんだ・・・!?結界か!?」


「そうみたいね・・・くっ!」


リュミエールは歯を食いしばる。

彼女からすれば、悔しいことこの上ないだろう。


 そんな中、デリクは冷淡に言い放った。

「私はこれでも聖職者です。汚らわしい異形の女どもを裁くくらい、容易いことです」


その直後、再び光の嵐が吹き荒れた。

そして、異形たち・・・リュミエールとミルエラ、そしてルファリア、レイヴェリア、ソティアの姉妹の体に、X字の鋭い光が走った。


「・・・!!」


 光が消えると、彼女たちは立ち尽くしたまま腹や胸を押さえ、血を大量に滴らせていた。

どうやら、さっきのX字の光で切られたようだ。


「あれ・・・まさか、異形特効か!」

リャドが叫んだ。


「修道士が使う白魔法、そして光魔法には、異形に特効を持つ魔法があるが・・・あれも、その類いか!」


「御名答です」

デリクはそう言いつつ、再び魔導書を開いて光の嵐を起こした。


「これは『インペル』、異形に特効を持つ光の魔導書・・・ですが、屠れるのは何も異形だけではありません」


 直後、今度は美羽がうめき声を上げた。

同時に、龍神やリャド、ミアも・・・。


「っ・・・!」

次の瞬間、俺も目を覆っていた腕に激痛を覚えた。

左手で触ると、生暖かい液体が掌を濡らした・・・血か。


「『インペル』は、光の魔導書としては最上位に位置するものの一つ。下手な異人の奥義より、威力がある代物です」


 まばゆい光の嵐が収まると、そこには不敵に微笑み、魔導書を手にしたデリクの姿だけがあった。


「異形のお嬢さんたちは、私にさぞ恨みがあるでしょう。ですが、それを晴らせることはない・・・あなたたちが、異形である限りはね」


嘲笑うように言うデリクに、リュミエールは再び怒りを燃やした。

「・・・ふざけんな!私たちを・・・ムーランを、バカにするな!!」


「バカにするな?滅相もない。むしろ、最大の敬意を払って差し上げているではありませんか。せっかくここまでたどり着いた、異形の美女たちに」


 その言葉が神経を逆なでしたのか、リュミエールはますます怒った。

彼女の隣に立つミルエラも、同様に激怒した。

「こいつ・・・許さない!絶対に・・・!!」


「お前は・・・みんなを穢して、辱めた!その罪、命と血で償ってもらう!!」


すると、デリクはにわかに首をかしげた。

「何か勘違いしておりませんか?私はあなたたちのお仲間に、手を出してはおりません。少なくとも、直接はね」


「だとしても、お前が部下たちに命令して、みんなを穢したのは事実・・・お前だって、同じことをしたのよ!!」


 俺の目に映ったリュミエールは、烈火の如き怒りの声を上げていた。

彼女はそのまま、刀に白い魔力をまとわせる。

そしてミルエラと共に、血を流しながらデリクに切りかかった──鬼のような形相で。


デリクはそれを躱した──かに思われたが、ミルエラの刀がわずかに左腕に掠った。

それにより服が破け、そこだけ肌が露わになった。


「・・・ほう?」

奴は、怒涛の勢いで刀を振り回す2人の攻撃を避けつつ、驚いたような顔をした。

「異形が、私の体を傷つけた?・・・それも、インペルを食らって・・・?」


 話している間に、とばかりにソティアが剣で斬撃を放った。

それは見事に命中し、奴の右の脇腹を切り裂き、血を飛び散らせた。


「・・・」

奴はもう何も言わず、逃げるようにテレポートした。

そして奥の壁の前に現れ、杖を取り出した。


「なかなかやりますねえ、皆さん。ですが、もう終わりにしましょう」


 その言い方から察した俺は、すぐに自分のまわりに結界を張り、盾を構えた。

他のみんなも、同様に防御をした。


「『燃える光をご覧あれ』。奥義 [聖滅光(ルクス・アナイア)]」


奴を中心とし、さっきの魔導書とは比べ物にならないほどまばゆい光と、皮膚を焼くような熱が放たれる。

それは辺りを白く塗りつぶし、同時にそこにあるものを焼き尽くすようだった。


 周りが気になっても、あまりに強烈な光のために目を開けられない。


奥義の発動と共にキーンという音が響き、今に至るまで鳴っているので、それが終わるまで耐えればと思い、目を閉じたまま全力で盾を構え、結界に魔力を流した。


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