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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
8章・エルメルの戦火

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第577話 氷雪を裂く斬撃と風

 扉を押し開けると、冷たい風が一気に吹き込んできた。

外は白一色の雪原で、降りしきる雪が視界をかすませている。


「・・・外に出られた、と思ったが」

俺は半歩足を止めた。


雪煙の中、影が揺れ動く。

やがて音がした──金属の擦れる音、靴が雪を踏みしめる重い足音。


「・・・囲まれてるな」

龍神が低く唸る。


 次の瞬間、雪煙の中から斧を担いだ巨躯が現れた。

それに続いて槍を構えた二人組、そして闇をまとった魔法使いが三人。

合計六人──どれも、いかにも暗殺者らしい風貌だった。


「・・・やっぱり、簡単には通してくれねぇか!」

俺は斧を握り直し、雪の上に足を踏み込む。


 斧兵が真っ先に突っ込んできた。

振り下ろされた重い刃を盾で受け止めると、火花が散り、衝撃で腕が痺れた。

続けざまに槍兵が横合いから突きかかってくる。


「チッ・・・!」

盾で槍をはじき、逆に斧を振り抜く。

炎を纏った刃が雪を溶かし、槍兵の腕を浅く裂いた。


 後方から闇魔法が飛ぶ。

黒い稲妻のような魔力が、視界を切り裂くように走った。

リャドが前に飛び出し、爪で魔力の一部をはじき散らす。

「・・・闇使いは、おれに任せろ!」


「助かる!」

俺は斧兵の重撃を受け止めつつ、叫び返す。


 雪煙を割って、輝の矢が飛んだ。

一本は槍兵の肩を射抜き、もう一本は魔導士の杖を弾く。

「姜芽!前を抑えろ、輝が削る!」


「おう!」


そこで龍神の刀が横一文字に閃き、突っ込んできた槍兵の脚を払った。

転倒した敵の喉元に、美羽の刃が突き立つ。

「数が多いね・・・でも崩せば勝てる!」


 その瞬間、闇魔法が再び飛ぶ。

黒い矢が俺の盾を貫きかけ、雪に黒焦げの穴を穿った。


「ぐっ・・・!」

思わず足を取られた俺の脇に、斧兵の重撃が迫る。


「姜芽!」

龍神が飛び込み、刀で斧の軌道を逸らす。

雪煙の中で、金属音が轟いた。


「助かった・・・!」


「まだまだだ・・・踏ん張れよ!」


 吹雪の中、斧と槍、魔法が入り乱れる。

敵は数と連携で押してくるが──俺たちもまた、背を預け合って戦える仲間だ。


雪原に赤い飛沫が舞い、戦いはさらに苛烈さを増していく。

槍兵の一人を斬り伏せても、雪煙の奥からさらに突き出される穂先が迫る。


敵の槍が龍神に伸びた瞬間──一筋の斬撃が散った。


「そうはいかない!」


 ミルエラの刃が唸り、槍を切った。

燃え上がる穂先を投げ捨てる敵の胸に、彼女は間髪入れず蹴りを叩き込む。

雪を蹴散らして後退する槍兵を、輝の矢が狙い撃ちにした。


「一本、仕留めた!」


 その横合い、闇魔法の詠唱が響いた。

黒霧の矢が雨のように降り注ぎ、俺たちの頭上を覆う。


「下がれ!」

俺が叫ぶより早く、蒼い光が雪原を裂いた。


「・・・甘い!」

リュミエールが刀を振るうと、風の壁が一気に立ち上がった。

闇の矢はことごとくそれに突き刺さり、鈍い音を立てて砕け散る。


 そのまま彼女は一歩踏み出し、一振りで複数の斬撃を生み出した。

それは魔導士の胸元をめがけて飛ぶ。

一人が咄嗟に転げてかわしたが、残る二人は肩や脚を切り裂かれ、悲鳴をあげた。


「いいぞ、リュミエール!」

俺が叫ぶと、彼女は静かに頷き、次の技の構えを取る。


 ミルエラが再び前線に躍り出る。

斧兵の巨腕に怯むことなく接近し、刃を回転させて弾き返す。

雪煙の中、美しい刀身が弧を描いた。


そうして注意を逸らされた斧兵の脇腹を、龍神の刀が深々と切り裂いた。

巨躯が呻き声をあげ、雪に崩れ落ちる。


 残るは槍兵一人と、負傷しながらもなお立つ魔導士たち。

雪はさらに激しく降りしきり、視界を白く塗りつぶす。

それでも──ミルエラとリュミエールの刃が、道を切り拓く。

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