表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
8章・エルメルの戦火

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

607/693

第574話 開かれる扉

 剣士の刃を押し返した瞬間、背筋に悪寒が走った。

「姜芽、上だ!」

輝の叫びに反応し、咄嗟に盾を掲げる。


氷を砕くような衝撃が走る。

別の敵が屋根から飛び降り、真上から大剣を叩き込んできた。盾に火花が散り、腕が痺れる。


「っ・・・増援か!」

歯を食いしばり、剣を薙ぐ。だが、息が切れて胸が焼けるようだ。

標高5000メートルを超える山の空気は薄すぎて、全力で斬り合うたびに視界が霞む。


 輝の矢が飛び、屋根の上から狙っていた弓兵を一人撃ち抜いた。

「姜芽、持ちこたえろ!・・・輝が数を削る!」


「ああ頼む!」


俺は盾で大剣を受け止め、剣士の横薙ぎを弾き返す。炎の剣を振り抜くと、敵の外套が燃え上がり、呻き声が雪に溶けた。


その隙に輝の矢がもう一人の弓兵の胸を貫く。矢羽根が突き立ち、敵は雪の上に崩れ落ちた。


「──まだいるぞ!」

声と共に、二人の剣士が建物の影から突進してくる。


「くそっ、息が・・・持たねぇ!」

肺に冷気を吸い込むたび、頭がくらりと揺れる。それでも剣を振り下ろし、盾で刃を受け流す。


 輝が矢を番えたまま走り寄り、叫ぶ。

「姜芽、下がれ!一気に決める!」


「・・・わかった!」


俺は敵を押し返すように盾を突き出し、無理やり距離を取る。

すると、すぐさま輝の矢が放たれた。


一本、二本──間髪入れず連射された矢が、敵の足元と腕を正確に射抜く。動きが鈍ったところを、俺が炎を纏った剣で一気に叩き斬った。


「──っらあぁぁ!」

火柱が吹き上がり、剣士二人が同時に倒れ込む。


 残る弓兵が最後の矢を放つ。だが、それは俺の盾に弾かれた。

次の瞬間、輝の矢が真っ直ぐに飛び、敵の喉元を貫く。雪に血が散り、静寂が戻った。


俺は大きく肩で息をしながら、剣を地面に突き立てた。

「・・・はぁ、はぁ・・・終わった、か」


「姜芽・・・まだ油断するな。音を聞かれたかもしれない」


 そう言う輝の顔も蒼白で、吐く息は荒い。俺たち二人とも、寒さと空気の薄さのせいで限界が近い。

だが──雪に埋もれる敵の死骸を見下ろしながら、確かに手応えはあった。


「・・・数で押されても、この程度ならやれる。二人ならな」

俺は苦笑し、輝の肩を軽く叩いた。


「当然だろ」

輝もわずかに笑みを返す。





 雪が降ってきた。

吹雪く音に混じって、遠くで仲間たちの気配が揺らいだ気がした。


仲間たちによる鍵の捜索は、まだ続いているだろう。

それまで、俺たちはここで──必ず持ちこたえてみせる。




 雪はさらに強くなり、視界は白に塗り潰されていく。

吹雪のざわめきに混じり、足音が近づいてきた。


「姜芽!輝!」


白い靄の中から現れたのは、ミアたちの一行だった。

ミアの腕には黒鉄の鍵のようなものが握られている。表面に彫り込まれた文様が淡く光り、吹雪の中でも存在感を放っていた。


「見つけたんだな・・・!」

俺は荒い息を吐きながら言う。


ミアは小さく頷き、雪を払うように息をついた。


「ええ・・・あっちの建物に祭壇があったんだけど、その奥の仕掛けから出てきた。たぶん、あの扉に使う鍵よ」


 リャドが爪を納めつつ、俺たちを見回す。

「お前たちも・・・襲われたんだな」

雪の上に転がる敵の死骸に、彼の表情が硬くなる。


「ああ。増援もあったが、なんとか持ちこたえた」

そう言った瞬間、痺れた腕が重く落ち、剣を支える手が震える。

輝も同じで、矢を番えたままの指が白く凍えていた。


「姜芽、輝・・・無茶しすぎ」

美羽が心配そうに近寄ってきて、俺の頬の切り傷に手を伸ばす。

「・・・後で治すから。今は立ってて」


「平気だ。大丈夫・・・だ」

苦笑しながら斧に組み直した剣盾を背に掛ける。




 それからしばらく、仲間は全員戻ってきた。

雪の中庭に、輪ができる。

一応確認したが、みなボスと思しき敵には会わなかったらしい。


風は強まり、アジトの建物が影のように霞んでいた。

それでも、全員の目はミアが掲げた黒鉄の鍵に注がれている。


「これで・・・扉を開けられる」

ミアの声が吹雪を割るように響いた。


果たして彼女の鍵は──見事扉にはまり、そのまま回すことができた。

ガチャリ──という音を聞き、俺たちは互いに頷き合う。


 ボス・・・あの僧侶の男が、この先にいるかはわからない。

扉の先からは、得体の知れない魔力を感じる。

だが、進むより他はない。


扉が開かれ、俺たちは建物の中へと足を踏み入れた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ