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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
8章・エルメルの戦火

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第540話 連携の一閃

「──行くぞ!」


 俺が合図を送ると同時に、ルファリアが風を斬り裂き、龍神が雷光を纏って突っ込む。 バルトは大剣を構え、正面から迎え撃つ構えだ。


その瞬間──俺は左右へ分かれた二人とは逆に、低く地を蹴ってバルトの足元へ滑り込む。

奴の視線が一瞬だけ、俺に向いた。


「うぉりゃっ!」


 龍神の雷をまとった刀が、バルトの大剣に叩きつけられる。

火花と雷光が弾ける中、ルファリアが逆側から回り込み──

鋭い刀閃が、バルトの背へと走った。


だが、バルトは片手で大剣を持ったまま、拳を後ろへ振り抜く。


「──襲いな」


 拳と刀がぶつかり、ルファリアは押し返される。

だが──それが狙いだった。


「そこだ!」


俺はバルトの足元へ踏み込み、炎を纏った剣で袈裟に斬り上げた。

これなら、さすがに防げまい。



「・・・なにっ?」


 バルトは大剣を逆手に振り下ろし、俺の剣を受け止めていた。

化け物じみた腕力と、反射神経。そして──その目に、微かに浮かんだ嘲り。


「なかなか面白え。けど、ちょっと足りねぇな」


「・・・っ!」


俺はすぐに距離を取った。

バルトはまるで“試している”かのように、深追いはしてこない。


 その隙を、ミアと煌汰が見逃さなかった。


「[烈火閃]!」


「[氷冷結界]!」


 ミアの炎と、煌汰の氷が同時に放たれる。

相反する属性がぶつかり、爆ぜると同時に、バルトの周囲が一瞬だけ煙に包まれた。


その一瞬──ルファリアが煙の中に飛び込む。


「[斬影刃]!」


 風を裂く一閃が、バルトを襲う。

・・・ところが、


「──お返しだ」


煙の中から、青く輝く水刃が弧を描いてルファリアを襲った。


「・・・っ!」


ギリギリで受け止めたが、勢いは殺しきれず、ルファリアは吹き飛ばされ、床を転がる。


「ルファリア!」


 俺が叫び、駆け寄ろうとした瞬間──


「来るな!」


ルファリアがすぐに体勢を立て直し、俺たちを止めた。

その目は、まだ折れていない。


「・・・もっと派手にやるか!」


 龍神が叫び、より強力な雷を纏った刀を振るった。


「[迅雷裂破]!」


雷鳴が轟き、大剣を構えるバルトに斬りかかる。

奴はそれを受け止めてきた──だが、今度は少しだけ、足が後ろに滑った。


「──ほう」


 奴がわずかに目を細めた。

今のは、確かに押せたはずだ。


「みんな・・・ここからだ。反撃と行こうぜ」


俺は剣を構え、振り返らずに言った。

全員が、無言で頷くのがわかった。



 最初に飛び出したのは、ルファリアだ。

彼女は風を纏った刀を水平に構え、バルトの正面から斬りかかる。


「[疾風連斬]!」


連撃の嵐がバルトに降り注ぐが、奴は大剣を振るい、それを次々と弾き返した。


 ルファリアは怯まず、再び距離を詰める。

その瞬間、バルトが反撃の一撃を繰り出す。


「・・・そこだ!」


間髪入れず、龍神が割り込んだ。

刀でバルトの大剣を受け止め、ルファリアをかばう形で力をぶつける。


「[雷轟突]!」


 激しい雷光が弾け、バルトの身体を直撃した。

奴は軽く後退し、額に小さく汗が滲む。


「おおっと、少し効いたか?」


龍神が不敵に笑い、バルトが忌々しげに舌打ちした。

こいつは水の技を使っていたし、雷に弱いのかもしれない。


 そこで、ミアが技を繰り出した。

一度手にした扇に魔力を流し込んでいたことから、特に強力な技──おそらく、奥義だろうか。


「火の中に踊れ!奥義 [紅蓮舞]!」


彼女は、扇を大きくあおぐように一閃する。すると巨大な炎が現れ、大きく渦巻く。

バルトは即座に水を張った大剣で受け止めたが、ミアは止まらなかった。


「[火返し]!」


 ミアの扇が輝き、炎が反転する。

まるで吸い込まれるように、炎がバルトの大剣から流れ込み、刃を伝って奴の腕を焼いた。


バルトは、わずかに顔を歪めた。

ミアのカウンター技は、しっかりと決まった。


 ルファリアがその隙を逃さず、再び突っ込む。

龍神と共に、左右から挟み込むように斬りかかる。

さらに──


「[ハイブリザード]!」


煌汰の氷魔法が、バルトの顔に吹雪を吹き付けた。

それにより、奴の動きが一瞬だけ鈍る。

そこを狙って、ルファリアの刃がバルトの肩口に食い込んだ。


「よし・・・!」


 飛び散る鮮血を浴び、ルファリアは確かな手応えを感じた、という顔をする。

バルトがたまらず大剣を振るって二人を弾き返したが、今のは確実に通った。


「へっ・・・やってくれるじゃんか!」


バルトが舌なめずりをした。

奴の大剣には、微かに焦げ跡と氷の結晶が残っている。


「次は──俺の番だ」


俺は剣を構え、奴の真正面へと踏み込んだ。


「お前はなかなか強い。けどな・・・俺たちは、強い奴と何度も戦ってきたんだ」


 炎を纏った剣を、奴の大剣にぶつけた。

その瞬間、雷光と氷刃、そしてミアの炎が、俺の剣と同時にバルトへと襲いかかる。


「──なっ!?き、汚ねえぞ・・・!!」


これには、さすがのバルトも対応が遅れた。

雷と炎と氷、そして刃が交錯し、爆発するような光が塔の最上階を照らした。



 ──激しい風圧の中。

俺たちは、四人揃って武器を構えたまま、バルトを見据える。


煙の向こうで、バルトが肩で息をしていた。


「・・・ふぅ。大した骨のある奴らだ・・・」


 バルトは、ここからが本番だとばかりに大剣を構え直した。


「・・・けど、こっちもまだまだだ!」


俺は全員に目配せした。

誰もが、燃えるような闘志を目に宿していた。




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