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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
間章・封じられし者たち

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第525話 断罪の聖堂

 丘陵の先――

黒く枯れた木々に囲まれるようにして、古びた礼拝堂のような建物がぽつりと佇んでいた。


窓はすべて潰され、屋根は崩れ、崖のような斜面にめり込むようにして立っている。

だがその入口だけは、不自然なまでに綺麗だった。まるで“誰か”が、出入りしているように。


「・・・ここが、奴らの拠点ってわけか」


俺は斧を肩に担ぎながら、仲間たちの様子を見回した。誰もが無言で、ただ前を見据えている。


「正確には、拠点の支部の一つでしょうね」


 キョウラが、呟くように言った。


「彼らはこの国を乗っ取り、支配するような組織です。こんな小さな拠点が本拠地とは思えません」


なるほど、それは確かにそうだ。


「中に、難民になった人たちが囚われてる可能性があるんだったよね?」


 ミアの言葉に、キョウラが頷く。


「はい。少なくとも、夜会のメンバーがいることは確実でしょう」


「まあどちらにせよ、放ってはおけないな」


龍神が静かに刀を抜き、雷の気配が空気を走る。


「時間をかければ、犠牲が出る・・・速攻で落とそう」



 


 突入と同時に、闇がぶつかった。

中は朽ちた石造りの通路。血の匂いが濃い。

奥から複数の気配――異形たちが、まるで待っていたかのように押し寄せてくる。


「レイヴェリア、前を頼む!」


「当然よ!」


 レイヴェリアが大剣を構えた。

その長身に見合う、二メートル超の大剣。刃が地を裂き、空気が鳴る。


「邪魔よ、どきなさい!」


彼女の一撃で、先陣を切って現れた異形――硬質の骨で構成された人型の魔物が、数体まとめて吹き飛ばされた。

重量に任せた斬撃ではない。“技巧”と“質量”が融合した、鮮烈な一撃。


「続けてやるわ!」


 踏み込む。地を抉る。

かなり重そうな大剣を、まるで遊ぶように片手で扱い、横薙ぎの一撃を繰り出す。


「[竜殺しの円環]!」


半円状に放たれた斬撃が、正面の敵をまとめて断ち切る。壁にめり込んだ敵ごと、空間が悲鳴を上げる。


 レイヴェリアはマーディア・・・高位の、妖精系の異形だ。

人に近しい、美しい姿をしているが、その見た目からは想像もできないほどの力と、戦闘技術がある。


そのことを、よくわからせられるシーンだった。



「ふう・・・あっけなかった。やっぱり、異形にはそんな強いのいないね」


 刃を肩に担ぎ直し、彼女は残念そうに言った。

マーディアは、総じて優れた剣や刀の腕を持ち、それでいて強い者との戦いを求める異形だそうなので、彼女からすれば弱くてお話にならない、といったところなのだろう。


強くて、しかもやたらと綺麗な足を覗かせる彼女をさらに奥へと踏み込んでいく。



 


「通路の奥に、魔力の反応があります。生体の反応も・・・!」


 キョウラの声が走る。


「誰か、囚われてるな・・・!」


俺たちはさらに奥へと突入する。

朽ちた聖堂の奥に設けられた地下礼拝所――そこはもはや“神聖”など欠片も残っていない、歪んだ供物の間だった。


 そこには、囚われた人はいなかった・・・が、代わりに厄介なものがいた。

人間に酷似した顔と体。細身で赤黒い衣装に身を包んだ、闇の力を持った存在・・・。


「・・・夜会の一員か!」


空中に浮かぶように佇む、おそらくは祈祷師であろう異人が、微笑んだ。


「ようこそ、死の宴へ。高貴なる異形の妖精と、それに選ばれし者たちよ」


 そして、その背後には。


「・・・あれは!」


吏廻琉が声を上げる。


奥の檻に、数人の人々が囚われていた。

衣服はぼろぼろで、意識も朦朧としていたが、明らかに生きていた。


「彼らの救出は後よ!先に、あいつを落とす!」


「・・・来るわよ!」



 レイヴェリアが、吠えるように叫ぶ。


「[断罪の大車輪]!」


彼女の大剣が魔力をまとい、円環のように宙を巡る。

風が駆け抜け、眷属の周囲を切り裂くように斬撃が収束していく。


「あんたたちのつまんないお遊びは、ここで終わりよ!」


 轟く一撃が相手の術を中断させ、崩れかけた天井が振動した。


「・・・俺たちも行くぞ!」


炎、雷、風、光、闇。

いくつもの力が結集し、一つの闇を貫こうとしていた。



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