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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
2章・サンライト訪問

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第43話 苺の秘密

「…」

全員が凍りついた。


「ほ…本当…なのか?」


「私の母は、サンライトの司祭エリミア・リエス…洗礼名を吏廻琉と言います。…あ、洗礼名っていうのは、司祭が名乗る(あざな)のようなもので、呼び名に使われる名前です」


その名を聞いて、煌汰が反応した。

「その名前、聞いたことあるかも…」


「マジか…?」


「うん…確か、サンライトの司祭の一人で、相手の記憶を奪う奥義を持ってるって…あ!」

煌汰とほぼ同時に、俺も気づいた。

そして、輝がそれを口に出す。

「もしかして、苺さんから記憶を奪ったのって…!」


「…」

当の苺本人は、先程から何やら頭を抱えていた。

そして、はっとした顔になった。

「…そうだ!」


「苺さん?」


「思い出しました!私の本名はサディ…サンライトの大司祭です!」


「…え!?」

複数人が叫んだ。

「苺…じゃないのか…!?」


「苺とは、私の洗礼名。サディ・アルラシアというのが、私の本名です!」


「ほ、本当か…!」

まさか、このタイミングで記憶を思い出すとは。

「だから苺さん、やたら高い魔力を持ってたのか…」


「こんなに突然思い出すなんて、メニィの薬が効いたのかな…」

煌汰の言う通りだとは思う。

「今、完全に思い出しました…。私は、彼女に…吏廻琉に記憶を奪われたのでした!」

すると、キョウラが喚いた。

「…そんな、まさか!母は大司祭様とも親しく、国と全ての魔法種族を想う、心優しい人です!大司祭様にそんな非礼を働くはずが…!」


「しかし、あの時私は、確かに彼女の魔法を受けました。最後にレギエル姉妹が使ったあの魔法…見覚えがありましたが、今思えば彼女のものです!」

聞き慣れない名前が出てきたので、説明をお願いする。

「ちょ、ちょっと待て。レギエル姉妹?って誰だ?」


「…そうですか、あなたはご存知ないですか。

レギエル姉妹は、かつてサンライト大神殿に所属していた司祭の姉妹です。姉がポルクス、妹がカストルといい、私の母の元弟子でもあります。

もとは人間だったそうですが、母に弟子入りするや否や素晴らしい才能を発揮してまたたく間に司祭まで上り詰めたと言います。

しかし、彼女らは何を思ったのか、ある時突然母から禁忌の魔導書を盗み出し、姉妹揃って破門となりました。

その後は長らく消息を絶っていたのですが、あの時突然戻ってきたのです。そして、私に記憶を消す魔法を使って…!」


「…だとしたら、今サンライトの神殿を乗っ取ってるのはその姉妹って事か!」

輝に続くように、俺も言った。

「しかも、その時倒されたっていう大司祭は、実は苺さんだったんだ!」


「まさか…そんな…」

キョウラは、ショックを受けたようだった。


「で、でも、その魔法を使ったのはその姉妹なんだろ?」


「確かにそうですが、あの演出は間違いなく吏廻琉の魔法です。私は、彼女とは長い付き合いですのでわかりました。

そして、あれを使えるのは吏廻琉以外にいません!」


「てことは何だ…その姉妹に、キョウラの母親が協力したってことか?」


「恐らくは。しかし、なぜ…私と彼女は、数千年来の親友であるはずなのに…」

苺は、とても悲しげな顔をした。

「苺さん…」

俺はかける言葉が出なかった。


「…行きましょう。何としても彼女に会い、真相を確かめなければ!」


「だな…!」


「母が、大司祭様を裏切ってレギエル姉妹に属するなんて…そんなはずはないと信じたいですが、現にこうして苺…いえ、サディ様が真実を思い出された以上、真偽の程を確かめない訳にはいきません!私も、覚悟を決めて真実を確かめます!」

キョウラは、右手をぎゅっと握って言った。


「よし!そうとなりゃ、すぐに大神殿に向かうぞ!苺…いや、サディさんか、ここから神殿までどれくらいかわかるか?」


「ここからなら、4日ほどかと。それと皆さんに言っておきますが、私の本名はサディですが、一応洗礼名は苺ですので、なるべく『苺』と呼んでもらえると嬉しいです」


「わかった。じゃ、これからもよろしく頼むぜ、大司祭苺様!」


「…はい!」



そうして、司祭苺…もとい大司祭サディとの新たな旅が幕を開けたのであった。






話が終わり、銘々が部屋に戻ったあと、メニィはぼやいていた。

「まさか、苺さんがサディ様だったなんて…」

俺は、そんなメニィに質問した。

「知ってるのか?」


「もちろんです。というより、この国の住人で知らない人はいないと思います。大司祭サディ様は、かつての八勇者の一人、司祭カトリアから直々にサンライトを託された大賢者様の娘さんで、私達サンライトの民の事をいつも考えて下さっているんです。持っている魔力も絶大で、この国が魔法種族の国でありながら他国から侵攻されない最たる理由にもなっていた方です」


「よっぽどすごいんだな…でも、何でそんな人が2人の司祭に?」


「詳しくはわかりませんが…以前もお話した通り、あの時レギエル姉妹は異様な力を持っていました。どこであれだけの力を得たのかわかりませんが、あの力でサディ様を打ち破り、そして…キョウラさんのお母様との間に何があったのかはわかりませんが、彼女の力を使ってサディ様の記憶を消し去ったのでしょう」


「なるほど、そういうことか…となると、やっぱりそのレギエル姉妹ってのを倒さなきゃないな」


「ええ、可能ならば。というより、そうしないとこの国はいずれ滅びます!姜芽さん、私も尽力しますので、どうかこの国をお救いください!」


俺だけに期待されても困る。

だが…まあ、そうだな。


「ああ、きっとやってやる。それに、俺は一人じゃないしな」


ここは一つ、主人公っぽく決めておくか。



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