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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
7章・魔法の国ラーディー

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第470話 「賢者の核」

 開かれた通路の先へ進むと、大きな部屋に出た。


入り口の部分に水を通さない結界が張られており、この部屋の中だけ空気があった。

部屋に入ると、いきなり水が無くなったものだから、少しばかり驚いた。


何やら難解な実験装置らしきものがあり、さらにその横には大きな球形の謎の機械もある。

また、部屋内には他の場所へ続くような通路は見当たらない。


どうやら、ここが最深部のようだ。


「フェルマーが欲しいって言ってたのは、確か『賢者の核』ってやつだよな。えっと・・・」


「これじゃないか?」


 俺は、恐ろしいほどに目立つ球形の半透明の装置の中に浮かぶ、紫色の結晶を指さした。

よくわからないが、強大な魔力を感じる。


「ああ、たぶんそれだな。けど・・・どうやって取ろうか?」


結晶は装置の中にある。従って、このカバーのような装置を何とかしなければ取り出せない。

だが、この装置を開くにはどうしたらいいか。


 一応、球形の装置の横にはキーボードのようなものがついている。

これであるコードを入力すれば、開くのだろうか。


「パスコードで開くタイプか・・・って言っても、そんなもんわかんないしねえ」


リアンナが頭を抱える。


 亜李華が近づき、何やら調べ始めた。


「結晶を封印している装置も動いてますし、壊れてはいないと思います。どう入力すればいいのかだけわかれば、結晶を取り出せそうです」


「そいつはよかった」


突然、聞いたことのない声がした。




「ありがとね。あんた達が先行してくれたおかげで、楽にここまで来れたよ」


 部屋の入口とは別の壁が、音もなく滑るように開いた。そこから現れたのは、濃い藍色の外套を纏った女だった。


その後ろには、魔法の杖を構えた二人の女がついてくる。彼女たちの足取りは静かだが、殺気を隠してはいない。


「・・・誰だ!」


「あたしはニーレ・ドレイヴ、ベルベット魔団のメンバーさ」


 名乗りながら、女は長く垂れた水色の髪をたくし上げ、深海を思わせる冷たい瞳を光らせた。


「ベルベット魔団・・・!?まさか、この遺跡を荒らしに来たのか!」


イルが警戒すると、彼女はため息をついた。


「荒らしだなんて、人聞き悪いねえ。あたし達は『宝探し』をしてるんだ。あんた達冒険家と、何も変わらないさ」


そうは言うが、ベルベット魔団ということは、こいつは盗賊だ。

冒険家と盗賊を一緒にするなんて、樹とかが聞いたらキレそうだ。


「しかしまあ・・・あの異形どもを蹴散らしながらここまで来た挙句、あっさり賢者の核を見つけるなんてね。感心したよ、やるじゃないか」


 女は緩やかに微笑む。だがその笑みは、まるで氷のように感情の温度を感じさせない。

そして今の言葉から、やはりこの装置の中にある結晶こそが、賢者の核であるらしいとわかった。


「さて・・・さっそくだけど、『賢者の核』はあたしたちが頂くよ」


部下のひとりが杖を掲げ、もう一人は装置に向けて魔法陣を浮かび上がらせている。遠隔で解析でもしているのか。


「ちょっと待て。こっちが先に見つけたんだぞ!」


「ああ、そうだね。けど、ここに先に来たのはあたし達だ。ちょっと遅れてきたあんたらを黙って通してやったのは、邪魔な異形どもを片付けてもらうため。ただそれだけさ」


 女がそう言うと、両脇の2人が杖を構えた。

この2人もまた、他の魔団のメンバーとは明らかに違う。


「宝ってのは、最終的に手に入れたもん勝ちだ。例えどんな事情、経緯があろうともね」


女・・・ベルベット魔団のニーレは、手に水球を出した。

もはやわかりきったことではあるが、やる気のようだ。


「さあ・・・試してみようじゃないか?誰がここのお宝の所有者にふさわしいか」


 俺たちは武器を構える。

と、薄い水の幕がニーレの背後からせり上がり、鏡のような水面を作り出した。


そこに映ったのは、こちらの姿とは別の何かだった――。


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