第465話 ペリルの町
王に示された町・・・ペリルへ向かう旅路は、至って順調だった。
時折敵が現れるが、どれも大して強くもなく、容易に蹴散らせる。
出てくる敵はベルベット魔団、つまり盗賊の他、軟体系と呼ばれる系統の異形が多かった。
色や姿は様々だが、基本的にスライムっぽい液体状の異形で、多くは負傷か弱体の毒を持っている。
奴らは総じて体を飛び散らせたり、得体の知れない液体を吹きかけてきたりといった攻撃をしてきた。
物理攻撃は効きづらいので、魔法攻撃で攻める。
・・・まあ、いかにもスライムといった感じだ。
これらの異形は、特に地と闇が有効なものが多く、ちょうど城下町で買ったばかりの魔導書を持ったメニィたちの恰好のカモとなった。
メニィは「ジアース」、ラウダスは「アヴィース」という魔導書を使っていた。
前者は地属性で、空が暗くなったかと思うと地面が光り、岩の巨人のようなものが現れて大地を隆起させる、という演出。
後者は闇属性で、詠唱と同時に闇の翼が現れ、それが羽ばたくと無数の羽根が相手に向かって矢のように飛んでいく、という演出だ。
どちらも超上級の魔導書というだけあり、大半の異形を一撃で片付けていた。
おまけに範囲も広く、複数体で現れてもまとめて倒してくれる。
俺も負けじと専属魔導書の「ゼノフレイム」を使った。
でかい火球を落とす、という少々地味な演出の魔法だが、威力は折り紙付きだし、範囲もそれなりに広いので、負けてはいない・・・と思う。
ちなみに、他にはセルクとキョウラが超上級の魔導書を使っていた。
セルクは「ハイボルト」という辺りの空気を震えさせながら無数の雷を手から放つ雷の魔法を放ち、キョウラは「ジャッジメント」という光の魔法を放っていた。
これはまず天空に巨大な光輪が現れ、そこにキョウラの声が反響する。そして重く荘厳な鐘の音と共に、世界そのものが一瞬止まったかのような静寂が訪れ、天から光の柱が降り注ぐ、というものだ。
いかにも高位の光魔法らしい演出である。
そして、それ一発で10人近い盗賊の集団が一瞬で蒸発した。キョウラが聖女なのもあって、おおいに心が震えた。
さて、そんなこんなでペリルに到着した。
地図と樹の情報によると、大陸の南側に位置するアミール海に面した都市であり、この国で最大級の港町だという。
「この町に、伝説の短剣を蘇らせる方法を知ってる魔導士がいるんだよな・・・」
「王様はそう言ってたな」
ペリルの町中は、これといったところのない普通の港町であった。
しかし、1つ問題があった。
というのも、なんとこの町は現在進行系で、異形に襲われていたのだ。
最初にそれを理解したのは、町に入って数歩歩いたところでだった。
突然悲鳴が聞こえたかと思うと、1人の男が横から走ってきて、躓いた。
そしてその男を追ってきていたらしい、ウミウシのような異形が男に襲いかかった。
もちろん黙ってはおらず、すぐに炎の魔弾「フレイムラッド」を放ち、異形を撃退した。
男に話を聞くと、どうやら突然海の異形が大挙して町を襲ってきたらしい。
すでに、数人の町人がやられたという。
どうしてそんなことに?とも思ったが、そんなことを気にするのは後だ。今はとにかく、この町を守ろう。
皆がそう決断するのに、時間はかからなかった。
出撃メンバーは俺の他、セルク、はな、亜李華、煌汰、アルテト、キッド、龍神。
異形の数が多そうなので、こちらも人員を多めにしていく。
海辺の町ということで、町を襲っているのはおそらく「水棲」「魚」「両棲」の異形。なので、それらの弱点である氷と雷を扱える者を連れていくといい、という樹の助言を受け、選んだメンバーである。
拠点ラスタを安全そうな場所に停め、町中に繰り出すとさっそく襲われた。
人型に近いが、体が水っぽく輪郭が曖昧な、ちょっとスライムっぽさもある異形だった。
「こいつは・・・軟体系か?」
「いや、水棲だ。『ミュルク』って呼ばれる、海の異形だ!」
龍神がそう言いつつ、「五点の稲妻」と唱えて雷を浴びせた。
すると、異形はビリビリと痺れた後、しゅうっと縮んで消えた。
「倒したのか?」
「ああ。他にもまだまだいるはずだ・・・早いとこ、全部片付けようぜ!」
そうして、俺たちは駆け出した。




