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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
7章・魔法の国ラーディー

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第443話 首都への道中

 マロネ村での戦いを終えた俺たちは、すぐに首都ラーディーへ向かうことを決めた。

ベルベット魔団の本拠地を潰すにせよ、まずは情報を集めなければならない。


キョウラ曰く、「首都には情報を持っている方も多いでしょうし、国王や魔法兵団の方々とも接触できるかもしれません」とのことだ。


 ちなみに魔法兵団とは、この国の首都にあるラーディー王城に仕える兵士たちのこと。

メンバー全てが魔法種族で構成されている、大陸でも珍しい兵団らしい。


ここまで見てきた魔法種族のイメージからすると、軽装の兵隊なのかなと思ってしまう。

まあ、さすがにそんなことはないだろうが。


「でも、ここから首都までは少し距離があります。数日間だけとはいえ、多少の危険を伴う旅になるかと」


「まあ、しばらくは気を張って進もう。盗賊だけが敵じゃないだろうし」


 リディアが弓を手にして言った。

彼女曰く、まだ事件は完全に解決しきってはいないらしい。


「奴らは数年間、村の川に毒を流してた。たかだか4人の奴らに、そんなに長い間毒を用意し続けられるはずがない。バックに、大きな力を持った何かがいると思う」


確かに、それはそうかもしれない。


マロネ村の村長に報告を済ませ、簡単な補給をした後、俺たちはラーディーへ向かうことにした。




 道中は平和だった。しばらくは。


「こっから先は、森を抜ける道か」


「ええ。ここを抜ければ、ラーディーの手前にある交易町まで一直線です」


キョウラが地図を確認しながら説明する。


「それにしても、妙に静かじゃない?」


 リディアが不安げにあたりを見回す。


俺も気になった。

鳥の鳴き声がしない。森に差し掛かる前までは、小川のせせらぎや虫の声が聞こえていたのに、今はまるで無音だ。


「何かいそうだな・・・みんな、一応警戒しろ」


俺がそう言った直後、後ろの木々が一斉に揺れた。


「っ!?・・・みんな、来るよ!」


 ナイアが大剣を構える。次の瞬間、視界に飛び込んできたのは——巨大な甲虫だった。


「うわ、デカっ・・・!」


 黒光りする硬い殻、鋭く湾曲した大顎。何よりサイズが異常で、人間よりも大きい。

そんなものが、樹上から一斉に飛びかかってきた。


「・・・やっぱりか!」


俺は斧を展開し、迎え撃つ。


「こりゃ『フォレストビート』だね!樹液じゃなく生物の体液を吸う、カブトムシに近い虫系の異形だ!」


リディアが声を張り上げた。


 ちなみに、今回外に出てラスタを守っていたのは俺とナイアとリディア、そしてキョウラの4人。

カチカチ・・・と不気味な音を立てながら襲いかかってくる異形の虫たちを撃退するべく、戦う。




「杖技 [光刃]!」


 キョウラが杖を振り、光の刃を放つ。

甲虫の一体が切り裂かれ、地面に落ちた。


ナイアが大剣で叩き斬るも、刃が殻に弾かれる音がした。


「・・・こいつら、硬い!」


「なら、急所狙いだね!」


 リディアが矢を番え、目を狙う。

矢が命中すると、甲虫は悶えながら地面をのたうった。


「一気に蹴散らすぞ!」


 俺は斧を剣に変え、炎を纏わせて奥義の「煉獄火炎斬り」を繰り出す。

火の斬撃が甲虫の群れを焼き払い、数体を一気に沈める。


しかし、すぐに新たな異形が木々の間から現れる。

それも、相変わらず大量に。


「・・・キリがないな!」


その時——

グシャッ、と粘つく音が響いた。




「な、なにこれ・・・」


 ナイアが警戒しながら足元を見ると、紫色の粘液が広がっていた。


「なんだ?スライム・・・みたいだが」


「違う、これは・・・!」


 俺が言いかけた瞬間、地面から膨れ上がるようにして巨大なスライムが姿を現した。


「・・・なんか、ヤバそうなのが来たよ?」


リディアが引きつった声を出す。

それはやたらと粘性が高く、何かを溶かすような音を立てている。


やがてそのスライムのようなものは形を変え、触手のようにこちらへ伸びてきた。


 キョウラがすぐに結界を張るが、スライムはそのまま絡みつくように押し寄せる。


「キョウラ・・・大丈夫か!?」


「このままでは、まずいかもしれません・・・!」


「そうか!なら、ぶち抜く!」


 俺は斧を盾に変え、ナイアと並ぶ。


「ナイア、またあれやるぞ!」


「オッケー!」


二人の武器が炎と風を纏い、合技を放つ。


「「[炎嵐撃]!」」


炎と風の衝撃がスライムを吹き飛ばし、酸の飛沫が周囲に飛び散る。


「よし、今のうちだ!」


「いや・・・まだ終わってないよ!」


スライムの粘液が再び集まり、形を取り戻す。


「なっ・・・しぶといな!」


「ならば、私が浄化します!」


 キョウラが杖を掲げ、光を収束させ、奥義の「聖皇技・聖滅の光」を放った。

純白の光がスライムを包み込み、その体を焼き尽くした。


「・・・やっと終わったか」


俺は息を整えながら、森の出口を確認する。


「とにかく、このまま一気に駆け抜けよう!」


 俺たちは急ぎ、森を駆け抜けた。




「まさか、あんなのが出てくるとはね・・・」


 リディアが息を吐く。

なんでも、あのスライムみたいなやつは「ジェルルージュ」という軟体系の異形で、そこそこ強い分類の異形らしい。


「盗賊団といい、この国に来てから確実に敵が強くなっていってる・・・気を引き締めたほうが良さそうだね」


いかに敵が強くなろうと、進むのみ。

俺たちは、再び歩みを進めた。


 ──こうして、俺たちは首都ラーディーへ向かう。


そこに待っているのは新たな戦いか、

それとも・・・?


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