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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
7章・魔法の国ラーディー

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第442話 山の中の戦い

 俺たちは急ぎ、村へ流れる川の源流があるであろう山へ向かった。


メンバーはナイア、リディア、キョウラ。

リディアは黒髪ショートの略奪者で、武器は斧と弓、属性は風だという。


セキアが言っていた通り、山の奥に湧き水が湧き出ている場所があり、その近くに4人の男がいた。


見たところ、全員が軽装の盗賊・・・ベルベット魔団だ。


「あん?誰か来たぜ?」


 1人が俺たちに気付き、不敵な笑みを浮かべた。


「お前ら、ベルベット魔団だな!」


「ありゃ、知ってたか。・・・まあいいさ」


 リーダーらしき男が、魔導書を出した。


「ここに来たからには、誰であろうと死んでもらう!せっかく、あともうちょいで大儲けできそうなんだからな・・・ここで邪魔されちゃたまんねえぜ!」


4人の盗賊たちは一斉に魔導書を出し、襲いかかってきた。




 戦いは一瞬で激化した。


「ナイア!」


「わかってる!」


 ナイアが風を纏い、大剣を振るう。盗賊の一人が吹き飛ばされた。


「はっ、動きが単調だね!」


リディアが素早く回り込み、弓で急所を狙う。


「おっと、そうはいかないぜ!」


盗賊の1人が防御するが、俺がすかさず飛び込み、斧で強打した。


「ぐあっ!」


手応えあり、だ。


「早めに終わらせます!」


キョウラが光の魔法を放ち、残る盗賊たちを包み込む。

その瞬間、リーダー格の男が手を高く掲げた。


「光か・・・なら、こっちはこうだ!」


青黒い霧が広がり、同時に魔力が低下し、気分が悪くなる。

・・・水属性の、弱体毒の魔法か。


「ナイア、リディア、下がれ!」


 俺はすかさず盾を展開し、霧を防ぐ。

キョウラが手をかざし、光の結界を張るが、毒の魔法はしぶとく漂い続けた。


「ハッ、まだまだ甘えな!」


別の男が地面に手を突き、地面がぐにゃりと歪む。

足元が崩れ、バランスを崩した。


「・・・ッ!」


「姜芽様!」


 キョウラが駆け寄ろうとするが、その瞬間風が巻き起こる。


「フフ、こっちを見てくれる?」


女の盗賊が指を鳴らすと、キョウラの目の前に幻影が生まれる。それは、俺が傷だらけで倒れている姿——まるで現実のような映像だった。


「姜芽様・・・!」


 一瞬の迷い。だが、それが命取りになりかねない。


「キョウラ、騙されるな!」


俺はすぐに斧を剣に変形させ、幻影を斬り払う。刃がすり抜けると同時に、キョウラが目を見開いた。


「・・・幻惑、ですか」


「おおっと、バレちゃった?」


 女がにやりと笑う。


リディアが素早く動いてその背後に回りこみ、矢を至近距離から放った。


「——きゃっ!」


女は跳ねるようにして後退し、弓矢を避ける。


「させるかよ……!」


その時、赤髪の男が魔導書を開き、焔が舞い上がった。


「お前ら、少し眠ってもらうぜ」


 火の魔法とともに、淡い光が俺たちを包み込む。


ナイアが強風を巻き起こし、火の魔法を吹き飛ばす。しかし一瞬遅れてしまい、キョウラがふらついた。


「っ、眠気が・・・」


「眠りの魔法か?・・・まずいな」


俺はすぐにキョウラを支えるが、その隙に地面が揺れ、バランスを崩した。

そこでリディアがすかさず斧を投げ、男の魔導書を弾き飛ばす。


 素早く盾を展開し、ナイアと共に前線を押し上げた。


「チッ、しぶてぇな・・・!」


水の魔法を使ってきた男が、再び毒を放とうとする。だが——


「させません!」


 キョウラが光の杖を振るい、純白の光を放つ。

まばゆい輝きが毒の霧をかき消し、盗賊たちの動きを鈍らせる。


「なっ・・・!?くそっ!」


今のうちだ。

俺は剣を振り上げ、一気に敵陣へと突っ込んだ。


「『煉獄、万物を燃やす!』奥義 [煉獄火炎斬り]!」


 睡眠を使ってきた男に、強烈な炎の一撃を叩き込む。

炎を纏った剣が、男を魔導書ごと叩き斬る。


その体が吹き飛び、地面を転がる。魔導書は燃え尽き、残骸が灰となって風に舞った。


「バリーがやられたか・・・!」


 水と毒の魔法使いが苛立たしげに叫ぶ。


「このままやらせるかよ・・・!」


 地の魔法使いが拳を握りしめ、魔導書を開く。地面が大きく揺れ、ナイアとリディアの足元が崩れた。


「っ、また・・・!」


ナイアが瞬時に体勢を整え、大剣を構えるが、そこに追い打ちをかける。


「『地に溶け、命を蝕め!』」


 黒い霧が再び広がり、ナイアとリディアを覆い始めた。


「[浄化の閃光]!」


キョウラが杖を振るい、光を放って毒の霧をかき消す。


「・・・また光の魔法か!」


 女が焦れたように指を鳴らし、再び幻覚を作り出そうとする。


「おっと、そうはいかないよ!」


リディアが一瞬で動き、女の懐に潜り込んで斧が振り上げた。


「[風牙登り]!」


 風を纏った鋭い一撃が、女の肩に突き刺さる。

女は悲鳴を上げて魔導書を落とし、血を迸らせて倒れた。


「これで、幻覚はもう使えないね!」


 リディアが勝ち誇ったように言う。


「・・・お前ら、しつこいぞ!」


地魔法使いの男が苛立ち、魔導書を掲げる。すると地面が激しく隆起し、俺たちを押し上げようとする。


「・・・なら、ぶち壊すだけだ!」


 俺は剣を斧に変え、全身に炎を纏わせた。

そして、この場にいる唯一の同族に「合技(あわせわざ)」の誘いをかける。


「ナイア!久しぶりに、行こうぜ!」


「えっ!?・・・わかった!」


ナイアは風を纏い、俺の隣に並ぶ。


「「[炎嵐撃]!」」


俺とナイアの同時攻撃——炎と風が交わり、巨大な斬撃となって相手を襲う。


「ぐあああ・・・!?」


 地魔法使いの男が吹き飛び、地面に叩きつけられた。

その魔導書は、バラバラに砕ける。


「クソッ、ふざけんな・・・!」


 残ったのは一人。


「お前らなんかに・・・やられてたまるかよ!」


最後の男が震えながら魔導書を掲げるが、キョウラが静かに前へ出る。


「あなた達に、勝ち目はありません」


純白の光が男を包み込む。


「『煌めく光の下に』。奥義 [聖皇技・聖滅の光]」


 まばゆい光が迸り、男の魔導書を粉々に砕いて消し去った。


「なっ・・・! ち、チクショウが・・・!」


やがて男は力尽き、その場に倒れ込んだ。




 戦闘が終わり、俺たちは深く息を吐く。


「・・・これで、片付いたな」


「ええ、でもまだ気を抜けません」


キョウラが慎重な表情で言う。


「この者たちはおそらく、単なる組織の一構成員でしかないでしょう。まだ、上に誰かがいる可能性が高いです」


「・・・ああ。こいつらは、ベルベット魔団、だよな?その本拠地も、いずれ潰さないとだ。できるかわからんが」


俺は斧を握りしめ、倒れた盗賊たちを見下ろした。




 ともあれ、これで川に毒を流していた犯人たちは始末した。

そして、水源に仕込まれていた毒の元も完全に浄化した。


「これで、村の人たちも助かるな」


「ええ。村へ戻りましょう」


そうして、俺たちはマロネ村へと帰還した。

村を襲っていた惨劇は、ようやく終わりを迎えたのだった。



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