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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
7章・魔法の国ラーディー

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第440話 マロネの村

 首都へ向かう途中、小さな村が見えてきた。

地図によれば、「マロネ」という村らしい。


何か情報が得られるかもしれないと思い、立ち寄ることにした――が、村に足を踏み入れた瞬間、強烈な悪臭が鼻をついた。


腐臭だ。

まるで、肉が腐り果てたような・・・。


 俺と同じく村の様子を見ようと外に出たキョウラは、思わず顔を手で覆う。

煌汰とメニィは無言で回れ右し、そのまま拠点へと引き返した。


「おいっ、二人とも!」


「仕方ないです。この臭いでは・・・」


 キョウラはむせ返りながら言う。

俺だって、あまりの悪臭に吐き気がしそうだった。


「・・・この臭い。何か、おかしいぜ。村の中に、野ざらしの死体でもあるのか?」


「・・・どうやら、そのようです」


キョウラが静かに指さした先に、それはあった。


 道端に転がる人の亡骸。

すでに肉は崩れ落ち、骨が露わになり、黒ずんだ体液が地面に染み込んでいる。

無数の虫がたかり、腐臭をさらに強めていた。


「・・・うわ」


目を背けたくなるほどの惨状だった。


「死んでから、どれくらい経ってるんだ・・・?」


「おそらく、数週間は経過しています。この国の気候では、最低でもそれくらい経たなければ、ここまで酷くはなりません」


「・・・問題は、なんでこんなになるまで放置されてたかってことだよな」


普通、村には死者を弔う教会があるはずだ。

修道士がいるなら、死体が放置されることは考えにくい。


「この村には、教会はないのか?」


「あるにはあるが、そこにいたシスターはとっくに死んじまったよ」


 不意に聞こえた男の声に、俺とキョウラは振り向く。

男はやつれ果てた顔をしていた。頬はこけ、皮膚はまるで干からびたミイラのようだ。


「今じゃ、修道士なんて村に一人もいねえ。だから、死体を埋葬する奴がいねえんだ」


「そんなに多くの人が死んでるのか?」


「ああ。毎日毎日、これでもかってほどな。

この村にいる限り、誰だっていずれ衰弱して死ぬ。俺だって、もう長くはねえよ」


「・・・姜芽様、これは」


「ああ。調べる必要がありそうだな」




 その後村内での聞き込みで、この村に住む人々は最初は健康だが、次第に体調や気分に異常をきたしていき、やがては体を動かすのもやっとなほどに衰弱し、死に至るということがわかった。


そしてそれはちょうど1年ほど前から起きており、原因は現状全く不明だという。


 腐っても魔法種族の村ということで、村自体が何者かに呪いをかけられているのではないか、とうたぐる者も少なからずいたが、その推理は外れたらしい。


また、一部には異形の仕業ではないかと考える者もいたそうだが、この村の近辺には特別危険な異形は生息していないので、これも外れの推理だという。


「呪いではなく、異形によるものでもない、となると、何でしょう・・・?」


「うーん・・・わからんな。とりあえず、拠点に戻ってみんなの意見を聞こう」


 というわけで、一旦拠点に戻ることになった。


ちなみに、結局煌汰とメニィはあのまま拠点に逃げ帰ったらしく、俺たちが村の中で動いている間に帰ってくることはなかった。





 拠点ことラスタで、皆に村で起きていることを伝えた。

皆も、一体何が原因なのかわからず頭を捻っていた・・・と思いきや、数名だけ違う者がいた。


「呪いでも異形の仕業でもないってんなら、毒って可能性があるな。村人みんなが使う何かに毒が盛られてて、それでみんなやられてる、って可能性があるぜ」


 (なお)は、村人が何らかの方法で毒を盛られている、という可能性を示した。


「さっき託宣を受けてきたんだけど、『盗賊団が地下にあるものを狙っている』んだって。何かのヒントになるかな?」


ナイアは、異能で受けた託宣によるヒントを提示してきた。


「わたしは『山の中で湧き出している水の近くにいる、4人の盗賊』が見えたんだけど、それ以上はわからなかった・・・でも、きっとこれも何かのヒントよ!」


セキアもまた、異能で夜に見たであろう幻の内容を話してくれた。


要約すると、村人たちの異変は毒によるものである。

そしてその犯人に関しては、ナイアたちの示してくれたヒントからすると、盗賊がカギを握っていそうだ。


 このあたりの盗賊というと、ベルベット魔団だろうか。

だが、奴らがどのような形で村人に毒を盛っているのか。


それを突き止めないことには、村の惨劇は終わらないだろう。



 夜も、寝るまで考えた。

だが、俺にはとうとうわからなかった。

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