第414話 地方英雄・現世の鏡の光
女・・・地方英雄のマルクィタは、風属性の「魔法使い」だった。
最初に杖に風をまとわせていたし、いざ戦いが始まっても風の術を使ってきた。
「ストーマー」や「風魔の息」と唱えた後に、圧縮した空気を用いた攻撃、吹きすさぶ暴風といった攻撃をしてきた。
それらの術は威力もさることながら、こちらを吹き飛ばしたり逆に吸い寄せたりもしてくるのだが、これが厄介だ。
至近から技を出そうとすると吹き飛ばされ、空中に打ち上げられている間にまた別の術を食らう。
かと言って距離を取ろうとすると、吸い寄せられて攻撃される。
遠距離メインの魔法使いだが、杖を持っており技もしっかり出してくるため、近づけばあとは楽、ということもない。
物理攻撃技の威力もなかなかで、3発も食らえば全快が必要になるレベルだ。
幸い、苺の白魔法「ライフ」で全快はできるのだが、それでも複数人が一気に被弾すると危ない。
「奥義 [スリングストーム]!」
美羽が虚空から無数の糸を召喚して女を潰したが、それでも耐えてきた。
糸を風術で切り裂き、強引に脱出する様子を見て、美羽は驚いていた。
「なっ・・・あの糸は、鋼鉄より遥かに硬いのに・・・!」
直後に美羽は「ウイングブレード」という技で反撃を受け、大きく仰け反った。
彼女の体を覆う銀色の鎧が部分的に壊れ、胸から血が迸る。
それでわかったが、何気に美羽は結構《《大きい》》・・・何がとは言わないが。
ある意味で、騎士ってのはそんなものかもしれないが。
「美羽!・・・[凍てつく風]!」
煌汰が氷術を唱えるが、風属性である割に反応を見せない。
その辺は、普通の異人や人間より遥かに強い地方英雄らしいか。
煌汰に続いて斧を投げる技「アクスカッター」を出そうとしたら、閃いた。
炎をまとわせた上で斧を投げるという、これまでなんで思いつかなかったのだろうという技である。
「斧技 [フレイムカッター]」
燃え盛る斧を投げ、マルクィタの体を焼き切る。
倒すには至らなかったが、怯ませて煌汰を狙った術を中断させることができた。
そこへ、苺が「グリーム」を唱える。
さらに、美羽が「岩砕打」を放つ。
美羽の武器は斧であり槍でもあるので、斧の技も出せるのだ。
次にマルクィタが出した、風の矢を高速で放つ「デッドレイヴン」という技は、受けると血の契約をつけられる。
契約を受けると「ブラッドハンティング」という技を出してきて、エグいくらいの傷を受ける一撃を浴びせてくる。
そしてそれを受けても血の契約は消えない。
血の契約は毒のようなスリップダメージもあるが、普通の回復手段が一切使えなくなるのがかなり痛い。
相手に攻撃を当てれば回復するが、向こうはこちらが契約で奪われた分の体力を回復しているらしいので、どちらにせよ不利だ。
「『慈愛の雫』。奥義 [神羅慟哭]」
いきなり、苺が奥義を出した。
空から大きな水滴が落ちてきて、ポチャン・・・と弾けたかと思うと、たちまち血の契約が解除された。
それでいて、マルクィタには水の衝撃波でダメージを与えつつ吹き飛ばした。
「た・・・助かったぜ、苺さん!」
煌汰が礼を言うと、苺は「口より手を動かしなさい」と言った。
・・・見えなくともなんとなくわかった、彼女の「中身」が入れ替わったのだと。
どういう基準で入れ替わってるのか知らんが、どうも戦闘になると入れ替わっている印象がある。
いつも出てきている主人格「サディ」より、こういう時に出てくる「エリナ」の方が、戦いが得意だからか。
肝心のマルクィタはというと、一度吹き飛んで倒れたがすぐに立ち上がり、次の技を出す。
「虚無の刻印!」
杖を掲げて叫び、苺の体に青白い刻印を刻みこんだ。
その後すぐには何も起きなかったが、10秒ほどして刻印が光を放ち、苺の体を切り裂いた。
さっき胸を切り裂かれた美羽ばりに血が流れ、見た目にはかなりエグい技だったが、それでも苺は怯まなかった。
「ライトア」と唱えて最低限の回復をし、その上で「ライトベール」という白魔法を唱え、みんなの力と魔力を高めてくれた。
「長期線は不利・・・なるべく、短時間でケリをつけましょう!」
喋りつつ白魔法「ディヴァイン」を唱え、マルクィタの杖の反撃を受け止める苺。
先ほどの攻撃でローブが破れ、露わになった胸からは今もなお血が滴っている。
美羽よりでかい・・・というのはさておき、あれでは苺の身が危ないので、俺が「修復光」、太陽の術を唱えて回復した。
苺、もといエリナは何も言わず、マルクィタを突き放してから礼を言ってきた。
「助かったわ。でも、あまり時間がない。さっき使った魔法のバフは、長くは続かない」
「大丈夫さ。俺たちみんなで・・・」
その時、マルクィタはこちらに向かってきた。
さっき美羽の鎧を砕いた、恐るべき威力の風の刃を上手く躱し、俺は「ライトフィクス」・・・無数の高温の光を収束させ、炸裂させる太陽術を放った。




