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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
6章・ロロッカの深み

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第410話 冒険者グラテマ

 鞭の技の後、グラテマは自信を覆う六角形の地属性の結界を張ってきた。

俺は連続で斧を投げて攻撃し、結界を壊せる技である「ラスタードヨーヨー」を放つ。


すると容易に結界を破壊でき、さらにグラテマが怯んだ。

うめき声を上げて着地し、俯いてその場で動きを止めた。


 今がチャンスとばかりに、みんなで殴った。

武器を振るい、術を放ち、総攻撃を仕掛けた。


輝が光の刃を降らせる術「雨の日差し」を唱え、龍神が「稲光の道筋」を繰り出し、セキアが魔導書を開いて「ヘル」を唱える。


そして、亜李華と俺が奥義を繰り出す。

亜李華が「氷河の夢」でグラテマを氷に閉じ込めたところで、俺が「炎剣ストーカー」を出す。


 久しぶりに出した奥義だが、要は相手を剣で突き、斬り下ろした後、斜めに斬り上げる剣閃を繰り出すという三段攻撃技だ。

最初の突きと、最後の剣閃には相手の体を炎上させる効果もある。


前回は発動の際のセリフを考えていなかったが、今回はしっかりある。

『この火で焼き切る!』というものだ。

今さらだが、どうせならとことんカッコよく・・・痛く決めたい。


 効果のほうだが、亜李華が氷づけにしたのを叩き割って火属性の攻撃を叩き込む、というのは意外と悪くなく、それなりにダメージが入ったようだった。


リアクションはしないが、グラテマの体から飛び散る血の量で、何となくそれを推し量った。


また、これによって血の契約がクリアされた。

体にまとわりついていた赤い光が、きれいさっぱり消えたのだ。


 血の契約が消えたのは亜李華も同じだったようで、グラテマが盛大に血を撒き散らした後、やった!とつぶやいた。


攻撃を当てれば相殺できるとは言え、徐々に体力を奪われる上に普通の回復ができないのはやはり辛い。

前の時と違い、重ねがけされなかったのが幸いだったか。



 ここで、グラテマは復活した。

「『砂に呑まれよ』・・・!

奥義 [砂海に消ゆる魂(ロストインデザート)]!」

直後、遺跡の中を猛烈な砂嵐が吹き荒れた。


一瞬でそれは消えたが、輝が倒れており、龍神が何やら顔を押さえて呻いていた。

セキアと亜李華、そして俺はなんともない。


「ほう、耐えたか・・・ならば!」


グラテマは高く飛び上がり、両手を胸の高さで上に向け、頭上に青い光の渦巻きを起こした。

「『水蛇(すいじゃ)の如く』・・・」


 光の渦巻きの広がり方は、水の波紋にも似ている。

それを見て、俺はすぐに結界を張りつつ盾を構えた。


セキアたちは一瞬、攻撃してキャンセルさせようとしていたが、すぐに諦めて防御に入った。

そして・・・



「奥義 [冷雨の牙(ルインズヴァイト)]」


 渦巻きは大きな水の蛇となり、グラテマから見て左から右へ一気に駆け抜けた。

この際、展開した結界は破壊され、俺は耐え難い痛みと傷を受け、倒れた。




「姜芽さん・・・!」


 亜李華の悲痛な声が聞こえる。だが、俺は無事だ。

致命的なダメージを受けただろうが、生きてはいる。

だが、声が出せない。


「無駄だ。いかに足掻こうと、お前たちに勝ちはない。

お前たちもまた、封印を解く贄となってもらおう!」


 グラテマと、懸命にやり合うセキアたちの声が聞こえる。

だが、あまりの痛みに顔を上げることも、声を出すこともできない。


辛うじて腕は動かせたので、どうにか胸に手を当てて「燃ゆる生命」を唱えた。

すると、多少楽になった。


 とりあえず声は出せそうだし、体を起こすこともできそうだ。

何とか腕を踏ん張り、身を起こす。


声のする方を見ると、セキアと亜李華がグラテマと至近でやり合っている。

巧みな捌きの鞭を、亜李華は杖、セキアは手に出した小さな結界でなんとか凌いでいる。


だが、あのままではまずい。

セキアも魔力が多いとはいえ、ここまででかなり疲れているだろう。

2人がやられるのは、時間の問題だ。



 と、視界の隅に輝の姿が入った。

やつは顔だけをこちらに向け、何か言いたそうにしている。

というか、言葉はなくとも確実に何かを訴えかけてきている。


時折何かに移されるその目線の先を追うと、それは天井だった。

遺跡の天井の一部が、亀裂が入って崩れそうになっていたのだ。


 さらに、何かが懐から飛び出してきた。

それは、赤い表紙の魔導書・・・専属魔導書、「ゼノフレイム」だった。

しばらく目の前で漂ったあと、ひとりでに右手の前の地面に降り立った。



 言葉こそかけられないが、何をすればいいのかはもうわかったも同然だった。

天井を見据え、精一杯手を伸ばし、俺は魔導書の力を使った。

「ゼノフレイム・・・」


火球はまっすぐに飛び、天井の亀裂を直撃した。

すると、ミシッ・・・という音と共に亀裂が大きくなった。


 皆がなんだ?と言っている間にも、亀裂はミシミシと音を立てて広がる。

そして、パラパラと細かい欠片が落ちてきたかと思うと、轟音と共に天井が崩れた。


その瞬間、俺と輝は結界を展開してみんなを庇った。

変に逃げられたりしなかったのが、逆に幸いとなった。


 結果として、グラテマだけが天井の下敷きとなった。

辺りに立ち込めた砂ぼこりが消えた後、ゆっくりと立ち上がって、それを確認した。



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