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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
6章・ロロッカの深み

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第408話 創設者は蘇る

「・・・何者だ、お前は?」


「なに、その辺にいる殺人鬼さ。ただ、俺はアンデッド退治を専門にやっててな。

その経験と知恵からくる勘と鼻が、あんたの素顔を嗅ぎつけたのさ」


「アンデッド退治・・・?ならば、私の正体に気づいたのも納得だな」


 ここで、輝が一歩前に出た。

「ちょっと待ってくれ。一体どういうことなんだ?

サードル旅団が創設されたのは何百年も前のことだけど、冒険者なら、それくらいは普通に生きられるはずだ。

なんで、アンデッドなんかになったんだよ!」


「私はかつて、我が組織の仲間たちと共にこの遺跡に巣食う異形を倒した。だがその代わりに呪いを受けた・・・体が徐々に衰弱していく呪いを。

私は苦しみの末に死んだ。だが、ある方の力で復活した・・・仮の肉体を得て。そしてこれから、本来の生きた肉体を取り戻す」


「何をするつもりだ?」


「ここには、私たちがかつて倒した異形、デヴォンガートが眠っている。その復活が叶う時、私もまた完全な復活を遂げる。

ただ、それには多くの命が必要だと、あの方から聞いた。だから私は、国中の者にかつて自身が受けたのと同じ呪いを伝播させ、その命を抜き取り、集めた」


 国中の者に伝播させた呪い、とはおそらくレヌゥ症候群のことだろう。

体が徐々に衰弱していく、というのもあの病気の症状と一致する。


薬による治療法が見つからなかったのも、あれが「病」ではなく「呪い」だったからだろう。


そして、これまで旅団の連中でレヌゥ症候群にかかっている奴がいなかったのは、仲間を殺したくはないというこいつのお気持ちによるものだったに違いない。


「それってつまり、あなたがレヌゥ症候群の・・・この国で流行っている病の、原因だったのね!」

亜李華が食いついた。


「あなたは、自身が生き返るためだけに、国中の人を死なせたってこと!?」


「私は、生きた冒険者として完全なる復活を遂げたいだけ。そのためならば、どんなことでもする」


 亜李華は手を握りしめて震えた。

そして、全身から冷たい霧のような魔力を出し始めた。

怒っているのだろうか。


「私は元より、他者の生き血を啜って飢えを満たしてきた。今さら多くの命を奪ったところで、何も変わらない」

でも、と女は続けた。


「生者としての復活ができれば・・・冒険者として完全なる復活を遂げ、この忌まわしく、日光に当たる事を許されない、呪われた肉体を捨てることができれば」


 俺は、復活して何をするつもりだと聞いた。


「旅団は今も存続している。しかし、その実態は金と戦いに飢えた傭兵の集まりだ。それを知った時、私は胸が張り裂けそうだった。

私は、旅団に在籍する価値のない者を追放し、誇り高き旅団の名を取り戻したい。そのためにも、創設者たる私が復活し、皆を正しく導く必要があるのだ」


 考え自体は、否定はしない。

確かに、今のサードル旅団は金さえ貰えれば何でもやるという奴が大半だし、何ならそこらの賊と変わらないことをしているような奴もいる。


だが、この女が正式に復活したとして、果たして旅団の組織が変わるだろうか。

そもそも組織の創設者とは言え、今の団員たちがこいつを受け入れるだろうか。


元々死人であり、自身の復活のためだけに多くの人を死なせた奴を、「本物」の団員たちが認め、受け入れてくれるのだろうか。


 それは亜李華も思ったようだった。

「仮にあなたが復活を遂げ、正しい目的を持って動いたとしても、誰もあなたに従わない!

多くの犠牲を払って、たった1人の死者が蘇っても、誰も得をしない!」


続けて、輝も言った。

「そうだ!そもそも、死んだ者が自分から蘇ろうとするのがおかしいんだ。死んだ者は、そのまま眠ってるのが一番だ!」


「お前たちに何がわかる・・・!砂漠の外の者に、私の気持ちなどわかるものか!

私は自分の旅団が、組織が、好きだった。私にとって、旅団はかけがえのない仲間だった。

長い年月が立ち、旅団が落ちぶれた今、私がこうして蘇ったのは、きっとそれを正すためだ。そういう運命なのだ!」


 女は怒ったように言った。

なんか、自らが復活する、旅団をかつての誇りある組織に戻す、という目的のために全てを捧げたような感じがする。


何かのために全てを捧げるという精神は、決して悪いことではない。

だが、こいつの場合はその方法が間違っている。


 龍神も言っていたのだが、生者として蘇ったとしても、その前に一度アンデッドとして蘇り、多くの命を奪った過去は消えない。


そもそも何百年も前に死んだとされる者が突如出てきたら、誰もが怪しむだろう。

その時、こいつは皆に何と言うつもりでいるのだろうか。



 しばし口論を続けた挙げ句、女はため息をついた。


「・・・つまるところ、お前たちは私に生きた異人として復活して欲しくないのだな?」


まあ、おおよそそんなところだ。

死んだ者は生き返らず、そのまま眠っているのが、自然の(ことわり)にも適っているだろう。


「ならば、仕方ない。我が夢と旅団のため、お前たちにはこの遺跡に眠ってもらおう!」


 やはり、そうなるか。まあ素直に聞いてくれるとは思わなかったが・・・


今回の相手は、冒険者。

冒険者とは追求者の上の種族であり、探求者系の最上位種族だ。


ただ、それは「かつて」の話。

今は、吸血鬼という種類のアンデッドだ。


 さり気なく龍神が「満月の光」なる月の術を使い、全員にアンデッド殺しの力を付与してくれた。


と言っても、この中で普通の攻撃でアンデッドを殺すことができないのは俺だけだ・・・セキアはどうだかわからないが。



 そうして、かつての冒険者であり、サードル旅団の創設者でもあった屍・・・

グラテマ・マハトメリとの戦いが幕を開けた。

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