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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
6章・ロロッカの深み

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第402話 ピラミッドへ

「倒した・・・のか?」

 一抹の不安が残ったが、しばらく見ていると異形は徐々に灰となっていった。


「大丈夫よ。こいつは植物系の異形、火には宿命的に弱い。魔力も感じないし、もう大丈夫でしょう」


「そうか。なら、いいか・・・」


 これで、地上に戻れる。

輝が「抜け出しの糸」という道具を出してくれた。

これを使えば、ダンジョンや洞窟を脱出できるらしい。


 一応、その前にこの空洞を探索してみよう・・・ということになったが、隅々まで探しても特になにもなかった。

ただし、完全に燃え尽きた異形の灰の中から、大きな四つ葉のクローバーのようなものを見つけた。


「土喰アベルのドロップっぽいな。一応、持っていこう」

柳助にもそう言われたので、これは持っていくことにした。





 輝に糸を使ってもらうと、たちまち地上にワープした。

真昼の暑い日差しが眩しい・・・と言いたいところだが、すでに日は傾き始めていた。


「こりゃ、今日はもう止まったほうが良いかもな」


「それが無難だな。アベルは倒したから、もうさっきのように引きずり込まれる心配はない。

いつも通り、拠点(ラスタ)をステルスにしておけば、問題あるまい」


「だよな。よし、今日はここで停泊だ」





 その夜、敵が襲ってくることはなかった。

そして、さっき異形の焼け跡から出てきた素材は、やはりというべきか錬金の素材になった。


同じく以前戦った、地方英雄が落とした「古びた懐中時計」、予備として買い込んでいた一般武器の弓「狩人の弓」。

それらとこの「土喰の新芽」を一緒に釜に入れ、しばらく待つと、柄が黄色く弦が赤い弓が出てきた。


 あおいによると、これは「熱砂の陽炎の夢」という弓で、装備者の光、火、地属性の攻撃を強化してくれるという。

俺は弓は使えないので、輝に渡した。


輝は光魔法の他、火と地の属性を持つ「太陽」と「星」の術を使えるので、この武器の属性強化の効果を最大限に受けることができるだろう。


ちなみに、この武器は店売りもされているが、それなりに値が張るという。

1つで3つの属性の攻撃を強化できるのは、やはり貴重な効果のようだ。





 翌日には、目的地である『デヴォのピラミッド』が見えてきた。

その斜面には青い塗料で何かの文様が描かれていて、遺跡自体はかなり大きい。


まだ数キロはあるだろうが、それでも山の如くしっかり見えるのだから、相当な大きさである。


「あれがデヴォのピラミッドか・・・」


「かつて、この辺りにあったロブリア文明って文明の王の墓だって、聞いたことがある。

似たような遺跡は他にもあるが、ここはその中でも最大級だそうだ」

隣に立つ輝が言った。


「確かに、山と見紛うばかりにでかいな。一体、何年かけて作られたんだ・・・」


「それは、よくわからないんだ。長いのだと50年くらいかかったって話もあるし、短いと4年ちょっとで建てられたなんて話もある。

ただ、少なくとも10年くらいはかかってそうだと、輝は思うぜ」


 ピラミッド、つまり王の墓というくらいだし、やはり宝物とかが眠ってるんだろうか。

そう思ったのだが、残念ながら「今は」違うらしい。


「確かに、ピラミッドには王の死体と一緒にたくさんの宝物が納められた。でも、長い年月の間に、その大半は遺跡荒らしどもに盗まれちまったんだ。

リフォン村の件、覚えてるだろ?ああいう奴らに狙われた遺跡は、消えはしなくとも、中身のない空虚な建物に成り果てちまうんだ。・・・まったく、嘆かわしい話だ」


 そう言ったのは、樹だった。

生粋の冒険好きの種族「探求者」である樹にとって、私利私欲のために遺跡を荒らす盗賊は許せないのだろう。


「ひとまず、ピラミッドへ急ごう。そして、傭兵どもが何をしてるのか、突き止めよう!」


「もちろんだ。周りに傭兵が集まってるって話だったけど、この辺にはまだいないみたいだな。・・・ん?」


 輝は、何かに目をつけた。


「どうした?」


「あれ・・・見ろよ」


それは、真っ白な複数の部品がくっつきあって形を作り、浮遊しているような、ひし形の物体だった。

ふわふわと、低い空中を漂っている。


「なんだ、あれ・・・?機械みたいだけど・・・」


「ああ、アレはたぶん『ロブリア機構』だな。今なお起動している、既に消えた古代文明の遺物だ」


 そう言えば以前、ラウダスからそのような話を聞いた。

今もなお動き、遺跡に侵入しようとする者を排除する、という本来の役割を果たそうとしている機械が、存在すると。


「それ、前ラウダスに聞いたよ。かつて、古代文明で作られた、遺跡を守るための機械・・・」


「そうだ。まあ、もう守る主なんかとうの昔にいなくなってるんだけどな」


 その上で、アレは地味に危険な存在だ、このまま見つからないように進もう、と樹は言ってきた。

やはり、認識されれば有無を言わせず襲われるのか。


その後の道中にも、たびたびこの機械たちの姿があった。

その数は、ざっと数えた限り20は下らない。


昔はもっとたくさんいたんだろうが、今でも少なくともこれだけの数の機械が、遺跡を守ってるのか。


 そう思うと、疑問も湧いた。

遺跡荒らしや傭兵は、どうやってピラミッドに侵入したのだろう?

傭兵に関しては、中で何をしているのだろう?


それらの疑問の答えを知るためにも、俺たちはピラミッドの中へ行かねばならない。

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