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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
2章・サンライト訪問

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第35話 術士メニィ

あの後、とりあえず俺達は馬車まで戻った。

キョウラは苺の元を離れてもなお彼女の身を思っていたのかどんよりしていたが、メニィを見た途端に元気になった。

そして2人はあっという間に打ち解け、今は仲良くサンライトについて話している。


なんか、輝とタッドみたいだ。

あの2人も、出会って秒で仲良しになってたし。


そう言えば、メニィは術士だと言っていた。 それに対して、キョウラは修道士。同族ではないが、魔法をメインに使う種族という意味では仲間だ。

彼女らが仲良くなったのには、それもあるのかもしれない。

一番の理由は、互いに気が合ったからなんだろうが。


今もまた、2人の会話が聞こえてくる。

「それにしても、その司祭は何者なのでしょう。大司祭様を容易く破り、国を乗っ取ってしまうなんて…」


「わかりません…けど、とにかくものすごい力を持ってました。あの力は、どう考えても異常です。一体、どこであれだけの力を得たのでしょうか…」

サンライトの中枢施設たる大神殿は大司祭と呼ばれる存在が総括しているらしいのだが、メニィによると神殿を襲った2人はその大司祭を一撃で倒して見せたという。

よくわからないが、とりあえずサンライトの国がその二人組に乗っ取られたことは想像に難くない。

となれば、取り戻しにいかねばなるまい。


だが、まずは敵の情報が欲しい。

それに、俺は魔法は自信がない。

なので、一回寄り道をすることになった。


目的地は、メニィの故郷。

ルードという町で、サンライトのだいぶ西の方にあるらしい。

ゼスルからだと10日ほどかかるらしいので、その間ゆったりと馬車に乗る事になる。

だが、これはむしろ好都合だった。

この移動の日数を、苺の療養の時間として使えるからだ。

さすがに全快はしないだろうが、それでも多少はよくなるだろう。


キョウラが確かめた所、苺は記憶の大半を失っていたが、魔法はある程度使えるらしい。

正直、苺の使う魔法を見てみたい。

最上位種族の魔法というのがどんなものなのか、気になる。

なぜかは自分でもよくわからないが…無理やり表現するとすれば、ロマンがあるから、だろうか。

やはり、派手でカッコいい魔法とか異能力とかいうものにはロマンを感じる。

そういうのが普通に見られてこそ、異世界の冒険である。



ところで、出発前にこんな事があった。

当たり前ではあるが、砂漠の地面は砂だ。

馬車は、そのままでは車輪が潜ってしまい使い物にならない。

そこで、どうする?という話題になった。

すると、すぐにメニィが名乗りを上げ、馬車を低く浮かべると言い出した。


正直、そんなことできるのか?と思ったのだが、普通にやって見せた。

メニィが魔法を唱えると、車輪が地面から5センチほど浮き上がり、馬車が空飛ぶ馬車になった。

もちろん、いつも通りに移動ができるという。

これにより、みんなはこれなら心配ないと喜んだ。

まあ、どうせこの馬車は元々魔法の馬車なの

だから、わざわざメニィにやらせなくても、そこはどうにでもできたような気もするのだが。


その後もメニィは食糧が暑さで傷まないよう魔法をかけたり、砂漠を徘徊する異形に見つからないよう馬車を透明化させたりと色々やってくれた。

ちなみに、メニィは故郷の町ではごく普通の娘で、神殿での修行も始めて2ヶ月ほどしか経っていないらしい。

本人は「私は別に優秀な術士じゃないです」と言ってたが、俺から言わせれば充分優秀だ。

戦闘ではどうなのかは知らないが。



苺に対しては、記憶がないと聞いて、「私の故郷の知り合いに、記憶を取り戻す魔法が得意な術士がいます。その人に頼んでみましょうか」と言い出した。

苺もまた、「それはいいですね。ぜひお願いします」と頭を下げた。


食事の時も率先して料理を担当してくれた上、味も最高だった。

ナイアが「うちでもこんな味の料理が出せたらなあ…」と残念がるほどには。




ある時、俺は個人的に気になっていた事について聞いてみた。

メニィは青いとんがり帽子に青いローブという、典型的な魔法使いのような格好をしているが、苺とキョウラは帽子を被っておらず、ローブも白い。

何なら、この前の祈祷師達もローブ姿であった。

種族によって、服装が違うのか?という疑問の答えを、尋ねてみたのだ。

そうしたら、術士の時はみんな普通の帽子を被り、簡素なつくりのローブを着る。修道士か祈祷師になったら帽子を取り、独自のローブに着替える。それ以外の種族になった時は、帽子とローブを魔力の込められたものに変える、ということらしい。

つまり、魔法種族は外見である程度詳しい種族の見当がつく、という事になる。

わかりやすくて助かる話である。


なお、樹は毎日のように彼女の部屋に入り浸っている。

そして、そのたびに煌汰がやきもちを焼く。

これまでも女が来るたびにすり寄っていた樹だが、今回は特にお気に召したようだ。

煌汰は「あいつ、女好きにも程があるだろ!」なんて言ってたが、俺から言わせれば2人はいい勝負である。

何しろ、煌汰も日々キョウラや苺、ナフィーに絡みに行っているのだから。



しかし、今に始まったことではないが、馬車で移動している間は本当に暇だ。

空調設備が完璧なおかげで、どこの部屋でも暑さ寒さはほとんど感じない。

なので、寝るのには苦労しないのだが、昼に寝ると夜に寝れなくなる。

かと言って俺の部屋にはまともな娯楽もないので、携帯をいじるくらいしかやることがない。


こんなことを言うのもなんだが、この世界にもスマホがあるようだが…なんというか、変な感じだ。

俺のは人間界にいた時に使ってたやつまんまだった…検索エンジンとかはガラッと変わってたが。


でも、こいつのおかげで色々と調べる事ができた。

魔法についてだったり、異人の種族についてだったり…。

結構色々と調べたのだが、その中でもサンライトの統治者が変わったという情報が出てこなかった事には、いささか疑問を感じた。

この世界にもネットはあるようだし、それだけの事件が起きれば情報が出回るものだと思うのだが。


もしかしたら、情報統制が行われているのか?なんて思ってしまった。

いくらなんでも、それはできないだろう。


…と、そうこうしているうちに一日が過ぎてしまう。

実は言うほど暇でもない…のかもしれない。


さて、旅立ってからぴったり10日、ついにルードの町についた。

この10日間は長かったような、短かったような。


苺はだいぶ回復し、一人で歩き回れるまでになっていた。

キョウラは、無理はなさらないでくださいと言っていたが、苺の様子を見た限り、大丈夫そうだ。


馬車を町のはずれに停め、俺の他にメニィ、苺、キョウラ、樹で降りた。

メニィを連れ出すと、間違いなく樹がうるさいと思ったので、ごねられる前に連れ出したわけである。

もっとも、それを言うなら煌汰も連れ出した方がよかったような気もするが。


そうして、俺達は町へ出向いた。











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