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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
6章・ロロッカの深み

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第398話 英雄は熱砂に散る

 あおいの攻撃で男は大きく後退し、それなりのダメージを受けた・・・かに思われた。

しかし、あいにくとそんなことはない。

服が破けているとか、血を流しているとか、そういうわけでもないのだ。


しっかりと両足で地面を踏み、こちらを勇ましい目つきで見てくる。

その目からは悪意を感じない・・・というか、悪人には思えない。

少なくとも、そこらの賊や傭兵とは明らかに違う。


 しかし同時に、底しれぬ恐ろしさも感じる。

異人ではない人間で、ここまでの力があるとは・・・

あおいが言っていた通り、何かの間違いで、異常な存在として生まれたとしか思えない。


その間にも、「竜巻斧撃」を繰り出してきた。

もちろんこれも強烈なので、当たらないよう確実に回避する。


 樹が奥義の「水竜乱撃」を出し、あおいが鞭技の「一の破壊・露払い」で連続攻撃を仕掛け、最後に俺が奥義の「煉獄火炎斬り」を繰り出した。


ここまで怒涛の連続攻撃を仕掛けてもなお、男は倒れない。

ついでにラウダスが闇魔法を唱えても、吹き飛びはしたがすぐ立ち上がってきた。


 さらに、立ち上がると同時に斧を投げてきた。

その速度は、野球選手の投げたボールばりに速く、回転速度もかなりのもの。

まともに受けたら、頭を真っ二つにされかねない。


これ人間・・・というか、今までに出てきたボス級の異人とか異形より強いだろ。


 一体、こいつは何者だろう。地方英雄と言っていたが・・・

樹やあおい、ラウダスの反応からすると、なんか他にもいそうだ。


「[シャド ー]!」

突如、ラウダスが魔法を唱えた。

男の足元に伸びる影が動き出し、赤い目を光らせる不気味な存在となって背後に立ち、その両肩を掴んだ。


何が起きたかかわからないが、彼の反応からすると上手く言ったようだ。


「今のって・・・!」

あおいに対し、ラウダスは力強く頷いた。


「ああ・・・!今のは体力半減の魔法。これで、多少は楽になるはずだ!」


 その言葉が本当かはわからない。

なぜなら、相変わらず男がこれといった反応を見せないからだ。


もし体力が半減したなら、何かしら反応を見せると思うのだが・・・こいつの場合、それはどうだろうか。


「[アイスジャイロ]!」

 再び、斧に氷をつけて斬りかかってきた。

一か八かで炎を放射したら、氷を溶かしてキャンセルできた。


そこで、樹が「月震」と唱えた。

男の体はガタガタと振るえて膝をついた。何やら大きなダメージを受けたようだった。

ここに来てようやく、まともな反応を見せてくれた。


後で聞いたが、これもまた割合ダメージの術だったらしい。

月の術で、龍神なんかも使えるそうだ。

「これでだいぶ削れたはずだ。一気に行こう!」


 樹は「大滝昇り」という奥義を繰り出した。

棍を振り上げ、あたりに水を飛散させる技だ。

いや、正確には水を付着させた状態の棍を振り上げ、水を飛ばす技か。


そこにあおいが続いた。

「二の破壊・鉄球雨」と「三の破壊・流星」という2つの技を出してくれた。

さらに、そこへ俺が「フレイムポール」を繰り出す。


 もちろんラウダスも黙ってはおらず、奥義を繰り出した。

深き深淵の皆既食(アビスエクリプス)」というもので、台詞は『光を食む影!』。

演出は、「地面すれすれに現れた太陽を、闇の力をまとった黒い天体が覆い隠す」というもので、いかにも強そうだった。


それらの技を叩き込んだ結果、ついに男は口から血を吐いた。

「不覚・・・英雄の、名折れ・・・」

そのまま男は倒れ、絶命した。



「はあ・・・やっと終わったか・・・」

 俺は思わず震えた。

本当に、「割とマジで強い雑魚」だった。


「久々に戦ったけど、やっぱりつえーや。できれば、あんまり会いたくないな・・・」

樹が大いに賛同できる言葉を言ったが、あおいがそれにダメ出しをしてきた。


「そうは言ってもねえ。地方英雄って、ここ以外の国にもそれなりにいるわよ?」


「・・・マジかよ」


「まあ、滅多には出てこないと思うけどね。・・・あれ?何か落としてない?」


 あおいの言う通り、地方英雄は何かを落としていた。

それは、かなり古い懐中時計。

しかも、なぜか4つも落としていた。


「これは『古びた懐中時計』ね。錬金の素材に使えるやつ。普通に探そうとするとちょっと大変だけど・・・さすが、英雄さんはいいもん持ってるわ」


「懐中時計も、錬金に使えるのか」


「異人が長い間身につけていて、魔力が移って変質したものならね。この懐中時計は、どれも魔力が移ってるから、十分使える。

本当は、この国でこれを持ってる奴はいないと思ったんだけど・・・まあ、強敵を倒した報酬ってことにしとこっか」


 確かに強敵ではあった。

その報酬として、本来この地では取れないものが取れたと考えれば、まあ妥当ではあるだろう。


「しかし、樹とラウダス。あんた達がいなかったら、ちょっとキツかったわ。ありがとね」

あおいが2人に感謝の言葉を述べた。


「いいさ。正直、上手く決まるか不安だったしね」


「そうだな。ワンチャン無効化される可能性もあった。今回割合ダメージが効いたのは、ラッキーだった」


 確かにそうだ。

もしあれらの術が効いてなかったら、長時間まともにやり合うハメになっていただろう。

そうなっていたら、かなりキツい戦いになっていたことは間違いない。


「ともかく、ラスタに戻ろう。涼しい所で、休みたい」


顔どころか全身汗だくの樹を先頭に、俺たちはラスタへと戻った。

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