表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
6章・ロロッカの深み

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

424/694

第396.5話 拠点会話・葵と

姜芽たちの元同級生(あざみ)あおい。人であった時の名は、島川葵という。

整った黒髪のショートヘアに藍色の瞳、美しい顔立ちを持つ彼女は、他者を殺すことに快楽を覚える殺人鬼だ。


もともと人間であったが、その時より精神にある種の異常を持っていた。

冷酷で恐怖や良心を感じず、残忍な一方、人を引きつけ、信頼を得るだけの魅力がある。

頭も良く、少し話したくらいで、その恐ろしい本質を見抜ける者は少ないだろう。


それこそが、高位の殺人者であることを裏付ける特徴の一つなのだが。




 そんなあおいは、拠点であるラスタにて、様々な人物と「交流」している。

しかし、それはうわべだけのものであることがほとんどだ。


彼女に、人を信頼するとか、想うとかといった気持ちはない。

そんな気持ちは、人間であった時から捨てていたも同然だ。


 それが例え、同族であろうとも。


「あれ?あなたは・・・?」

 声をかけてきたのは、はなだった。


「ああ、どーも。市儚はな、さんでいいよね?」


「ええ。わたしの名前を知っているの?」


「もちろん。有名だからね。それに、同じ軍にいる同族の名前くらい覚えるでしょ?」


「そうかしら。私は案外、あまり気にしないけど」


「あら、そう?まあ、殺人者にもいろんなタイプがいるし、そういうのもアリなんじゃない?」


 あおいは、人差し指を唇に当てる。その仕草の美しさに、はなは思わず嫉妬を覚えた。


「・・・いい体してるわね」


「言ってくれるじゃん。なに、もしかして百合派?」


「そんなことないけど。ただ、あなたの体つきがいいなって思っただけよ」


 かつて、親に「子孫繁栄のためにもよい男を旦那に迎えろ」と口酸っぱく言われてきたはなは、今でも無意識に「自分が魅力的な女に見えるか」を気にしていた。

そして、あおいの美貌は、そこらの男なら一発で落ちるレベルのものだった。


「体ねえ・・・。まあ、これで男を釣って遊んでたこともあるけど」

 あおいは肩をすくめるように言った。


「でも、あんたも案外悪くないわよ」


「え?」


「あたしに言わせりゃ、あんたも十分魅力的。服のセンスもいいし、お手製のアクセも見たけど、可愛いのからシンプルなのまであってグッドだった。そりゃ、殺人者相手でも売れるわけだわ」


 はなの胸の奥で、冷え切った心がわずかに温まる。

 しかし、それがあおいにとっては何の意味もない虚構であることを、はなは知る由もなかった。


彼女は嘘つきだ。

何なら、自身の経歴や肩書きでさえ、嘘で固めているところもある。

だが、それを人に知られることは決してない。


 基本的に他人を信用しないあおいは、他人に自身の正体を明かすことはない。

種族や性癖は別としても。





 あおいは、今度はラウダスに出会った。


「あっ、あおいさん」


「ああ、ラウダスか。何か用?」


「いや、あの・・・大したことじゃないんですが」

 ラウダスは一瞬、口ごもる。

そして、意を決したように問いかけた。


「あなたは僕たちの仲間、ですよね?」


「ま、成り行きでだけどね」


「高名な殺人鬼であるあなたに、聞きたいことがあります」


「あら、興味深いわね。言ってみて?」


「殺人者は、生まれた時から心を持たない、他の異人や人間とはかけ離れた種族だと聞いたことがあります」


 ラウダスは慎重に言葉を選ぶ。


「でも、これまであなたや龍神さんを見てきて、それには疑問を感じています」


「・・・へえ?」


「少なくともこの軍では、あなた方『殺人者』は、僕たちと同じように戦い、笑い、怒り、泣いています。

もし本当に心を持たない種族なら、それは不自然ではないですか?」


 あおいは黙って聞いていた。


「もしかしたら、それは偽りのもの・・・感じてもいない感情を演じているだけかもしれません。でも、少なくとも僕の目には、そうは見えないんです。

殺人者・・・いや、殺人鬼と呼ばれる異人も、僕たちと同じように心があり、情がある。そうではありませんか?」


「・・・どうだかね。あたしにもよくわかんないわ」


「そうですか。でも、自分の心情というものは、意外とわからないものですからね」


 ラウダスは右手で自分の顔を撫でた。


「この際、はっきり言わせてもらいます。

あなたなら、この答えを知っている気がするんです」


「・・・ええ」


「殺人者は、本当は防人(さきもり)などと同じく、人間に限りなく近い種族なのではありませんか?元々は人間か、それに近い種族だった。それが何かしらの要因で変異し、殺人者として生きることになった・・・それが、彼らの正体なのでは?」


「・・・」


「不思議なことに、子供や赤ん坊の殺人者を見たことがないんです。みんな、ある程度成長してから『殺人者』になっている・・・」


 あおいは、ふと真剣な顔になる。


「つまり殺人者という異人は、始めからそうして生まれてきたのではない。彼らはみな、もともとは——」


そこまで聞いて、あおいはへえ、と呟いた。


「・・・あんた、面白いこと言うわね」


彼女は、うっすらと微笑んだ。


「一つ教えてあげる。昔、一人の人間がいた。そいつは、小さい時からすごく優秀で、それ故に周りに嫌われた。そして異世界転移して、自ら異人になったのよ──他人を犠牲にして、追い回されて生きて、どんなに辛くても逃げることを許されない、地獄の人生を辿ると・・・知った上でね」


 彼は、その言葉の意味が何となくわかった。


「・・・あおいさん!それって、もしかして・・・」


「——昔のことよ。もうずっと、ずっと前の・・・くだらない、昔話よ」


 あおいは、冷たい声でそう言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ