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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
2章・サンライト訪問

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第34話 砂漠の人助け

俺達は砂漠へ急行した。

まあ、すぐそこなのだが。


勢いで砂漠に突っ込んでしまったが、すぐに後悔した。

砂に足を取られるあまり、急行するどころか走る事すらままならない。

当たり前かもしれないが、砂漠は、子供の頃によく遊んだ公園の砂場とは全然違うようだ。


輝達はというと、ゆうに数十メートルは遠くで戦っていた。

戦闘に参加しているのは俺と同行している連中と、馬車に残してきたキョウラ以外の全員…つまり輝、猶、タッド、ナイア、ラギル、ミロウ、イルクだ。

奴らは散り散りになって敵と戦闘している。

ここから見た限り押されてはないようだが、敵の数が多い。このままではいずれ誰かやられるだろう。


「俺が案内する」

柳助は謎の構えをとり、体を黄色くて透明な膜みたいなもので包んだ。

一瞬それが何かわからなかったが、すぐに理解した。

どうやら、魔力で体を包んだようだ。


柳助は水泳選手のように頭から砂に飛び込んだ。

すると、やつはなんと水中のように砂に潜り、泳ぎ始めた。

俺が驚く間もなく、柳助は俺達にも魔力を飛ばしてきた。

「なっ…!」


「これでみんなも泳げる。行くぞ」

恐る恐る砂に飛び込んでみると、本当に潜れた。

「すげえ…なんだこりゃ」


「柳助の異能、[地操]のおかげだな。砂だけじゃなくて岩の中とかも通れるらしいぜ?」


「え…」

樹の言葉を聞いて、普通に驚いた。

岩の中を通れるって…なんだそれ。

もはや物理法則をガン無視している。


「さあ、行こうか」

柳助はすごい速度で泳いでいった。

すぐに追いたいが、どんな感じで泳げばいいんだろう?砂って、めちゃくちゃ重いらしいが。

そう思って両手足をジタバタさせてみたら、意外にも抵抗は水中とほぼ同じ感じだった。

これなら、普通に泳げる。


平泳ぎで、柳助を追う。

他のみんなも、同様だ。



輝達がすぐそこに見えてきた。

柳助に言われるがまま砂に潜って上を見上げると、上で戦ってる輝達の足が見えた。

「ここなら敵に気づかれない。しっかり相手を確認した上で、奇襲を仕掛けてやろう」


「わかった」

何気に砂の中でも息が出来てるし、呼吸も出来ている。

これも柳助の異能によるものか…

つくづくすごいな、と思った。



一度みんなバラバラになり、それぞれ別の敵の下へ向かう。

俺は、輝とやり合っていた弓持ちに狙いを定めた。

敵が弓に矢をつがえて放とうとしたその時、俺は勢いよく背後から飛び出し、背中に斧を振り下ろした。


「…え、姜芽!?」

輝の驚いた声を皮切りに、あちこちで次々に同様の声が上がる。

みんな、上手くやってくれてるようだ。


「遅れてすまない。まずは、こいつら片付けようぜ!」


そこからはあっという間だった。

柳助が敵を引き付け、砂に潜っては背後や足元から奇襲するのを繰り返してくれたおかげで俺達もほとんど攻撃されずに済み、その上結構な速度で敵の数を減らすことができた。

その間救助対象…青い魔法使い風の衣装を着こんだ女は、ミロウとイルクが守ってくれた。


そしてほどなくして、敵はいなくなった。

「これでいいな」


「ああ。柳助のおかげだな」


「俺は大したことはしちゃいない。それより…」

柳助は、女の方を見た。

「大丈夫だったか?」


「はい…ありがとうございます」

ここで、俺は改めて女の顔を見た。

緑色の髪をした、若い女であった。


「私はメニィ…魔法使い志望の術士です」

ちょっと意味がわかりにくかったので、樹に説明を頼んだ。

それによると、術士は主に人間が昇華してなる最下級の魔法種族で、そこから光、闇、理のいずれかの属性を選んで修行をすることで修道士、祈祷師、魔法使いのどれかになれるらしい。


「てことは、あんたは理の魔法を使うのか?」


「はい。地と火の魔法なら使えます」


「地…柳助と同じ属性か」

すると、彼女はいえいえ、と否定しながら、「とんでもない!彼のような芸当は、私にはとてもできません!」と両手を振りながら言った。

「そういう事じゃない。地属性の魔法を使えるってことだよな?って」


「あっ、そういうことですか。

私は、救援要請のためにゼスルの町を目指していたんですが…」


救援要請、と聞いて思わず反応してしまった。

「救援!?どこの誰が困ってるんだ?」


「あ、それは…その」

メニィは一息ついて、話しだした。

「順を追って説明しますね。私は元々、この国の辺境の村に住んでいたんですが、最近になってサンライトの大神殿で魔法の修行を始めたんです。数日前、突然2人の女の司祭が  神殿に現れ、神殿を乗っ取ってしまいました。それで、私は師匠に、この事をゼスルに伝えに行ってくれと言われて、歩いて向かっていたんです」


「なんでワープを使わなかったんだ?…あ、そもそもないのか?」


「いえ、神殿にはゼスルにつながるワープはあります。しかし、当時はあの司祭達に破壊されてしまって使えなくて…それでやむを得ず、歩いてここまで。そしてその途中で、あのならず者達に襲われてしまい…」


「なるほど、そりゃ大変だったな。ちなみにその司祭達ってのは、どんな奴らだったんだ?」


「一人は白い目と髪、もう一人はオレンジ色の髪に緑の目をした、恐らくは姉妹…の司祭です。とてつもなく強く、邪悪な魔力を感じました。見ているだけで足がすくむほど…」

メニィは言葉を切り、泣きそうな顔で言ってきた。

「…お願いです!どうか、神殿を取り戻すために協力してください!」


「言われなくてもそのつもりだ。な、みんな?」

仲間たちの顔を見回す。

みんな、無言でうなずく。


「…こういう事だ。俺は姜芽、喜んであんたに協力させてもらうぜ」


「…!あ、ありがとうございます…!」

メニィは深々と頭を下げた。



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