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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
6章・ロロッカの深み

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第378話 旧砂漠へ

しばらく町のあちこちを回ったのだが、次にどうすべきかの判断材料になるような情報が出てこなかった。

なので、拠点に戻ってナイアに助けを求めた。


「ちょっと待ってね・・・」

ナイアは目を閉じ、2分ほど「託宣」を受けた。


「アンベル村の男を唆した魔女の追跡。まずそれが、これからのメインの目標。だけど、どうもそう簡単にはいかないみたい。

まずは、砂漠に入って一番近くの村に行こう。話はそこからだ」


ここで地図を見ると、ストリートを通り抜けてしばらく道なりに進み、やや南西に行くと「リフォン村」という村があるらしい。

ここのことを言っているのだろう。


「村の近くまで来ると道が出てくる。ただ、その道に乗るまでは砂漠を進むことになる。

狩人とか魔法種族以外、特に砂に足を取られやすい戦士や騎士、あと暑さに弱い海人とか氷使いなんかは、外に出さない方がいい」


 一瞬、そもそも拠点から出る必要はあるのか?と思ったが、ナイアは続けた。

「それと、道中には敵がちらほらいる・・・サードル旅団の連中だ。攻撃して来そうだね。

詳しいことはわからないけど、拠点を透明化させてても、近くを通るとバレるっぽい。

なんなら、始めから堂々と突っ込んでいった方がいいかも」


それで、疑問に思った。

「サードル旅団って傭兵だよな?なんで襲ってくるんだ?」

しかし、これにはナイアではなく、アルテトが答えた。


「サードル旅団って言葉はな、密林と砂漠では意味が違うんだ。密林では、単なる傭兵の呼称。でも砂漠だと、サードル旅団ってのは『何らかの砂漠の部族に所属する異人』の総称なんだ」


「つまり、蛮族的な意味合いってことか?」


「まあそんなとこだ。もちろん傭兵もいるけど・・・それでも、よそ者を見ると襲ってくるやつの方が多いな」


 やつらの考えは、おれたち殺人者や略奪者に近いものがある・・・と、アルテトは続けた。

「ものが欲しけりゃ、それを持ってる奴をぶん殴って蹴っ飛ばして無理やり奪い取る。それでもし負ければ、自分が奪われる。そういう考えなんだよ、この砂漠のサードル旅団ってのは」






 食料と水の補給が終わった後、デザートストリートを発った。

これから向かう場所は環境が過酷なので、食料、水ともにいつもより多めに積み込んだ。


町の奥にある「緑の壁」。

これを越えた先に、ロロッカのおよそ半分を占める「旧砂漠」がある。

「旧」とついているのは、その光景が狙撃手リーエンの時代からさして変わっていないからであるという。


「緑の壁」は、言ってしまえば単なる人工林なのだが、これが砂漠と密林を隔てていると思うと、複雑な気持ちになった。


 ちなみに現役の狩人であるタッド、その妹のナフィーはこの壁を越えるのは初めてらしい。

同じく狩人の輝と、「元」狩人のアルテト、それに祈祷師のラウダスは、この先に行ったことがあるそうだ。


彼らは拠点の周りを固める人員に選んだ。

俺も含め、全部で6人。

これだけの人数で固めていれば、大丈夫だろう。


「しかし・・・なんか思ったより暑くないな」


 密林と比べて湿気がないからか、まだ暑さはマシなように感じられる・・・と、ラウダスは言った。

俺は火属性だからか、暑さは感じない。

寒さになら、むしろ敏感だが。


「この国の砂漠は、昼間は暑いって言ってもせいぜい30度台だ。あんたの言う通り、湿気がない分だけ密林よりマシだ」

アルテトがそのように回答した。


「ただ、夜は寒いよ。流石にジルドックほどじゃないけど、それでもマイナス10度くらいまでは下がる。

だから、夜はオアシスの水が凍ったりもするんだ。雪が降るようなことはまずないけどね」

輝が補足してくれた。



 そうして進んでいると、突如目の前に四人組の傭兵が躍り出た。


「商隊か?それとも冒険家か?」


「どっちでもいいさ。・・・さて?その荷車の中身を、全部置いてってもらおうか」


「おとなしく言う通りにするなら、生きて返してやってもいい。逆らうなら・・・殺す」


男と女が2人ずつ、いずれも斧や槍といった武器を手にしている。

腕に緑のバンダナをしているので、サードル旅団なのだろうが、やってることは完全に山賊だ。


「ああ、さっそく出てきたな」

 アルテトは弓を構え、技を出した。

「弓技 [拡散の矢]」

四人全員を撃ち抜いたが、これでは誰も倒れなかった。


「・・・へえ、面白いね。いいよ、遊んであげようじゃないか」

槍持ちの女が、アルテトに突っかかった。

彼は「ボルト・クラスト」という電の術を唱え、女を撃退した。


 また、こちらには斧持ちの男が向かってきた。

「喰らいやがれ!」なんて言って「岩砕打」を放ってきたが、楽に躱せる。


むしろ、カウンターで「登り割り」を放ち、続けて「紅蓮割り」を打ち込むと、あっさり退場した。

その際、「訓練・・・不足だったか・・・」なんて言っていた。


 斧持ちの女と剣持ちの男もいたが、これらはラウダスたちがやってくれた。

それぞれ、ラウダスの闇魔法と輝の光属性技、ナフィーの水属性技を受けて倒れ、そのまま消えていた。


やはり普通の異人、大したことはないか・・・と思っていたら、最初にアルテトに向かってきた女が立ち上がってきた。


そこでナフィーが「渦潮の槍」の技を繰り出すと、「まったく、無様だね・・・」と言い残して姿を消した。



 ふと気になったのだが。

ここまで、敵の異人を倒すとその場で姿を消す、ということが多かった。

さらっと受け入れて気にもとめていなかったが、よく考えれば不思議な現象だ。


一体、どういう原理なのか。

一応ラウダスに聞いたところ、「そういうのは総じて、緊急撤退の魔法を使っている」とのことだった。


「彼らとて、死ぬのは御免被るからね。傷を受け過ぎたら、緊急撤退の魔法を使って家や拠点に戻るんだ。

たまに撤退せず死ぬ者もいるけど、その場合でも消えることがある。この場合は、原理はよくわからない。

でも、とにかく倒したことに変わりはないし、気にすることはないよ。この世に原理のわからないことなんて、ごまんとあるさ」


 最後の言葉は、いかにも魔法の研究をしている者という感じだった。


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