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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
6章・ロロッカの深み

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第376話 北の地への道標

やがて傭兵たちに追いついた。

そしてその時、彼らはまたもリビングアールの群れに襲われていた。

今度は、計7体いる。


もちろん3人も黙っているわけではなく交戦しているが、結末は目に見えている。

奴らが普通のリビングアールだったら、違っただろうが。


 ちょうどメンバーも選出したところだし、やるか。

そう思ったのだが。


「・・・え」


俺が何かする前に、3人が光の術を使っていた。

それらは詠唱が無かったので、どれがどれかわからなかったが、とにかくそれで敵はあっさりと全滅した。


 目の前の敵がいきなり全滅したのを見て、振り返った傭兵たちは呆気にとられていた。


自分たちがしばらくやり合っても倒せなかった異形を、武器も使わずあっさりと片付けたことが驚きだったのだろう。


実際、彼らは口々に言ってきた。

「強烈な魔法だな」

「なんだ・・・あんた達、めちゃくちゃ強いんじゃん!」

「これくらいできる人達なら、私達を雇ってもらう必要もないか・・・」


 最後のモカのセリフからすると、彼らは俺たちに雇ってほしいと思っていたのだろうか。

だがあいにく、手は足りている。


「てか、もう少しで村だよな?」


「ああ、そうだ。もうちょいだぜ」






 そして、ついに村にたどり着いた。

見た感じ、家はざっと20戸。そこそこの大きさの村のようだ。


しかし、村に入って早々、違和感を感じた。

「・・・」


というのも、人の気配が皆無なのだ。

外にいる人は元より、家も中に誰かがいるという気配はない。

微かに吹く生暖かい風の他には音もない、不気味なまでの静けさである。


 傭兵たちもそれは感じたようだが、敢えて平穏を装い、「とりあえずあの方の家に行こう!」と切り出した。


あの方の家なるものは、村の一角にあった。

大きさ的には、正直他の家と大差ない。


「見た感じ普通の家だな。ここに、どんな人が住んでるんだ?」


「ああ、言ってなかったな。

ここにはな、ロゼリアってお嬢さまが住んでるんだ」


「ロゼリア、ねえ。お嬢さまって割には、ずいぶん普通の家に見えるが」


「別に金持ちじゃないからな。あの方は、狙撃手リーエンの妹ラーナの血を引いてる方でな。

体が弱くて異形とかに襲われやすかったから、昔はよくおれたちを雇ってくれてたんだ」


 彼らのギャラが幾らかは知らないが、傭兵を日常的に雇える時点でそこそこの金持ちだろう。


というか、リーエンに妹なんていたのか。

リーエン。言うまでもなくこのロロッカの国を建てた人物であり、かつての八勇者の1人だ。

その妹の血を引いてるって、結構すごくないか?


「あ、なるほどな。そりゃ確かにお嬢さまだ」


「ああ。・・・しばらくお会いしてなかったが、元気してるかな」


 そうして、ルファは家のドアを叩いた。


ほどなくして、1人の若い男が出てきた。


「おお、あなた達は。お久しぶりです」


「あんたか。姉貴は元気してるか?」

どうやら、この男は3人の元雇い主たるお嬢さまの弟であるらしい。


「それが・・・」


「ん?どうした?」


「姉は2週間ばかり前に、ホルスの霊廟に向かうと言って家を出ていきました。

あなた達とは違う傭兵を雇ってね」


「え、ロゼリアお嬢さまが?いやまあ、おかしくはないが・・・」


「てか、ホルスの霊廟って砂漠のでしょ?そんなとこまでお嬢さまが行かれるなんて珍しいね」


「ええ・・・でも何の用件かは、教えてくれなかったんです。

ただ、訳あってホルスの霊廟に行かなければならない、ひと月後には戻る・・・とだけ言っていなくなったので」


「それじゃ、ちょっとよくわからないね。

お嬢さま、どうしたんだろう?」

モカは怪訝な顔をした。


「ホルスの霊廟ですか・・・何かと不思議な話も多く聞きます」

そう言ったのは、亜李華だった。


 なんでも、彼女とレナスは元々亜李華の母を探して大陸各地を旅しており、かつてこのロロッカにも来たことがあった。


そして今話に出てきた、ホルスの霊廟という場所を訪れたこともあるのだそうだ。


「あそこに限らず、ロロッカの砂漠にはかつての有力者の霊廟がいくつかあるのですが・・・ホルスの霊廟は、その中でも最も大きな霊廟でして。

その周辺では、死んだはずの人に会えたとか、滅多に会えないような希少な種族の異人を見かけたとか・・・そのような話が、昔から多くあるんです」


「へえ・・・」


 亜李華から話を聞いている間に、傭兵たちはそれぞれの思いを語り合い、「彼女を追うことはしない」という結論を出した。


「気にはなるけど、大丈夫でしょ。

言うてうちらは、今は雇われてるわけじゃないし?」


「そうね。他の護衛をつけてったって言うし、大丈夫じゃないかな」


「あの方はお得意様だ。だがおれたちはあくまで傭兵、依頼されない限り、誰にも手を出しはしない。それが基本だ」

話の成り行きからすると、結局そのホルスの霊廟って所にはいかないのかなと思った。

のだが。







 ラスタに戻ってくると、ナイアが走ってきた。

そして開口一番、こんなことを言った。

「姜芽!次は、砂漠に行こ!」

・・・マジか。


なんでもナイアが受けた「託宣」によると、「物語は灼熱の砂漠に続く」「闇の使者は砂の中に埋まっている」らしい。


よくわからないが、闇の使者というのは気になる言葉だ。

そう言われたら、行きたくなる。


「それじゃ、砂漠に向かうでいいんだな?」


「ええ。輝には、もう言ってあるから」

えらく手回しが早い。




 砂漠に向かうことを伝えると、ルファたちは降りると言い出した。

彼らは、あくまでもこの密林に居続けたいらしい。まあ、止めはしない。



机上に大陸の地図を広げた。

ロロッカの北西から北側にかけて広がる、広大な砂漠。

そこが、次の目的地だ。


「それじゃ、出発するぞ!目的地は、ロロッカ旧砂漠の東!デザートストリートだ!」


拠点の舵を握る、輝の声が響く。


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