表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
6章・ロロッカの深み

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

401/694

第375話 さまよう病死者

龍姫が去った後、ルファたちを起こした。

というのも、彼らはさっき龍姫の体力吸収の魔法を食らった後、3人仲良く意識を失っていたのだ。


あれだけで気絶するか?とも思ってしまうが、頭に食らったのかもしれない。

そこまで見ていなかった。


体に受けても結構な衝撃だったし、頭に受けたんなら意識を奪われても不思議はない。


「修復光」を唱え、3人の傷を癒した。

すると、モカに驚かれた。


「あなた・・・太陽術なんか使えるの?」


「ん?ああ、そんなとこだ。術も武器も全然いけるんだぜ、俺は」


「へえ・・・まあ外国人だし、おかしくはないか。

この国では、太陽の星術を使えるのは砂漠の出身者が多いんだけどね」


 なんか、しっくりくる話だ。

砂漠と言えば太陽、というイメージはある。


「てことは、他のとこの出身に太陽術使いはいないのか?」


「まったくいないわけじゃないけど・・・あんまりいないわ。密林の出身者は、星か宇宙(そら)の術を使うもんよ。

そもそも、星術自体使える人が少ないし」


すっかり忘れていたが、本来星術とは扱える者が少ない、高位の術なのである。

一般人にそれを使えない者が多くても、不思議はない。


「ひとまず、このまま進もう。前も言ったが、この先におれたちのお得意様の住む村があるんだ」


「言うてここからちょっと距離があるし、大丈夫だとは思うけど・・・一応、安否確認しに行こう」




 それからしばらく、道なりに進んだ。

道中では狼や虎に似た異形が現れた他、川の近くではワニのような異形が現れたものの、いずれも大して手強い相手ではなかった。


ちなみにワニの異形は「ガーター」といい、全身深い緑色でヘビのような牙を持っていた。

あれに噛まれると、出血毒を移されるらしい。


ワニ、ということで爬虫系の異形であり、水と地と氷、火に弱いらしい。

弱点属性、多すぎではないだろうか。


まあおかげで楽に狩れるので、食料として優秀だそうだが・・・

いくら異形とは言え、ワニって食えるのか。





 やたら高い崖を左にしつつ進むこと数分、歩いている人たちを見つけた。

全部で3人、後ろ姿を見る限り全て男だ。


「あれ・・・もしかして、例の村の人か?」


ルファたちはしばらくその3人を見つめて、

「そうっぽいな。声をかけてみよう」

と言って声を張り上げた。


しかし、向こうは反応を見せない。

20メートルくらいしか離れてないのだが、叫び声が聞こえないなんてことあるだろうか。


「しゃあねえな、近づいて声をかけよう」


「あれ?でもさ、あそこの村には耳が聞こえない人とかいなかったっけ?」

リリーがルファに言った。

「ん?ああ、そういやそうだっけか。てことは・・・声かけるんじゃ無駄だな。肩を掴んでやるか」


背後からいきなり肩を掴まれたら、驚くこと請け合いだが・・・

まあ、耳が聞こえないなら仕方ないか。



 さっそく傭兵たちはルファを先頭にして駆け寄り、彼らの肩を掴んだ。

が、その振り返った顔を見て悲鳴を上げた。


その理由は、ここからでも見える。

彼らの顔は、赤褐色だった。



「ヤバい!」

すぐにナイアが風の刃を飛ばし、俺も「カルネージフィン」を唱える。

それだけでは倒せなかったが、キョウラが「バニシング」を唱えると片付いた。


 走り出し、傭兵たちに追いつくとすぐに安否を確認した。

「・・・3人とも、無事か!?」


「ああ・・・びっくりしたぜ」

これは、生きた人ではない。

アンベル村に現れたものと同じ、死人が蘇った亡霊系の異形・・・「リビングアール」だ。


「これって確か、亡霊系の異形だよね?なんでこんな所に?」


そこで俺は、彼らに言った。

「前に俺たちがいたアンベル村にも、こいつらが出てきたことがあった。

あの時は・・・レヌゥ症候群だっけ?流行り病で死んだ奴らが、悪い奴の力で一気に異形化したのが原因だった」


 かつて経験したことを語ったまでであったが、何となくした悪い想像も含まれていた。

はっきり言ったわけではないが。


「レヌゥ症候群・・・あれか。だんだんできることが少なくなっていって、最後は死ぬってやつ・・・」

そこで、ルファははっとした。

彼は気付いたようだ・・・俺が、どんな事態を想像していたかに。


「まさか・・・」

リリーたちもピンときたようで、すぐに村へ行こうと言って走り出した。

彼女らも、焦ったのだろう。



 もちろん俺たちもあとを追う。

そして、一度ナイアを拠点内の控えに戻し、亜李華(ありか)とレナスを出した。


亜李華はキョウラと同じ僧侶であり、物理より魔法に秀でている。

レナスは亜李華の育ての母たるマスカー。

マスカーは仮面に宿る魂を本体とし、実体と性別を持たない種族である。


奴らはレヌゥ症候群で亡くなった者の肉体の性質をそのまま引き継いでいるため火で燃えず、体が硬いために物理攻撃がまともに効かない。

その代わり、亡霊系異形となったためか光の魔法に弱い。


それ故に光魔法を使えて、かつ物理よりそちらに秀でている者が、奴らに対してはぶっ刺さる。

輝でもよかったが、なんとなく亜李華の方を選択した。


 ちなみに呼びに言ったとき、亜李華はエンズと一緒におり、彼には「シェミル」、つまり本名で呼ばれていた。

本名で呼び合っているということは、地味に親睦を深めているのだろうか。


エンズは恨み人(デルラード)、すなわち殺人者の仲間の種族である。

亜李華はレナス共々、殺人者には恐怖や嫌悪感を抱いていると思ったが・・・。


まあ、その辺に首を突っ込むつもりはない。


 レナスの隣に立つのは久しぶりだ。

最も彼女には肉体がなく、手足や体を覆っているっぽい長袖の服や靴は「それらしき体の部位があると見せかける演出」でしかない。


それらの着用物の下には、何もない。

つまり衣服や靴、武器がそれぞれ連携して、一定の高さを維持して浮いているだけ、とも言える。


付け加えるなら、マスカーに性別はない。

レナスは声や衣服が女のものだから、俺たちは女とみなしているが、本人は「私は女だ」とは一言も言っていない。


故にレナスが隣に立ったところで、キョウラや亜李華の時のような、女の子が隣にいるという感覚はない。

こう言うと、亜李華に怒られるかもしれないが。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ