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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
6章・ロロッカの深み

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第370話 旅団と傭兵

拠点に戻ると、皆は喜んで迎えてくれた。

「姜芽!・・・やっと戻ったか!」

そして、こちらで何があったのか聞いた。

洞窟の冒険、略奪者の第2の襲撃など、色々なことがあったらしい。


だが、それら全てを切り抜けて、全員が無事でいてくれたというのだから、これ以上思うことはない。


 昨日の夜訪ねてきたという傭兵たちにも会った。


額や腕に緑のバンダナを巻いているのは、サードル旅団の証だ。

だが、それはあくまで傭兵であることの証明に過ぎず、敵であるということではない。


それに、聞けば彼らは元々、あちこちを放浪しながら生活するために傭兵になったのだと言う。


それで思い出したが、サードル旅団というのは本来傭兵の集まりだ。

つまるところ、報酬さえもらえればどんなことでもする、という信念を持つ者たちなのだ。


もっともそう考えると、傭兵の方から依頼を受けるというのは常識破りだが。


「あんたがこの軍のボスか?なら、折行って頼みがある。

ここから20キロばかり西に行ったところに、おれたちのお得意様の家があるんだが、その近くに尻尾が生えた若い女の異形が居座ってるんだ。

そいつのせいで、おれたちはこのザマだ。あいつを何とかしてくれないか?」


 普通は依頼を受ける側であるはずの傭兵が、逆に依頼をしてくるとは。

ただ、彼らの姿勢から、必死であることは伝わってきた。


もちろん、断る理由などありはしなかった。




 アンベル村を離れるということで、フォルたちとはここでお別れとなった。

だが、彼らは村の守り手だし、仕方ない。


それに、いつかはまたここに戻ってくるかもしれない。



「しかし、傭兵って異形狩りもするんだな。・・・依頼以外で」


「そりゃ、自分たちに危険をもたらす存在だからな。行く先で遭遇したら、倒すに限るぜ」


「傭兵ってのは雇われて働くもの。そのためには、腕がいる。そこらにいる異形は、その腕を磨くための試し斬りにぴったりな相手なのさ」


 3人の中で唯一の男であるルファは、バンダナを額に巻き、剣を腰に差しており、黒髪に黒い目をしている。

そして今答えてくれた女、リリーは短剣を脇に差し、髪は白い。


なおこのリリーに関しては、バンダナを目を覆うように巻いている。

これでもちゃんと見えているらしく、このようなつけ方をしている理由は、顔を隠すためだそうだ。


「人って、目を隠すだけでも相手が誰だかわかりづらくなるだろ?うちらにとっては、そのほうが便利なんだよ。

うちらは探索者。何かと煙たがられやすい種族だ。それに傭兵は、敵を作りやすい仕事だ。だからね、あまり顔を知られないほうが都合がいいのさ」


そう言う割には、リリー以外の2人は顔を隠していないのだが。


「傭兵って、なかなかハードなんじゃないか?しかもあんたら、家がないんだろ?」


「確かに大変ではあるけどね。でも、私達はこれでいいのよ。

一つのところにいるのは、どうも性に合わないみたいでね。あちこち旅してたほうが、なんかしっくり来るのよ」


 傭兵の3人目、モカは左肩にバンダナを巻いた茶髪の女だ。

小ぶりな斧を持っており、傭兵というより木こりのようにも見える。


元の職業で使っていた道具から扱う武器を決める、ということはよくあるそうだが、モカは別に元々木こりをしていたから斧を使っている、というわけではないだろう。


この3人は同い年の幼なじみで、生まれ育ちは砂漠の方らしい。

砂漠となると、木を切る機会はあまりなさそうだ。

密林に来てからどうだったかは知らないが。


「しかし、お前さんらはつくづく変わってるな」


 龍神が、空気を読まない発言をした。

いや、もはや慣れたものであるが。


「サードル旅団って、普通は略奪者と結託したり、それみたいに通りすがりの奴を襲ったりするもんだろ?

もちろん全部がそうじゃないとはいえ・・・

お前さんらみたいな、大人しい旅団はあんまり見かけないぜ」


「・・・」


一瞬、全員が黙った。


そして、やがてモカが口を開いた。


「外国の人は特に、サードル旅団・・・っていうとガラの悪い傭兵、略奪者とかの良い仲間ってイメージがあるかもしれないね。

でもサードル旅団ってのは本来、一部の強くて勇敢なロロッカの民で構成された傭兵組織の名前で、傭兵全部をさす言葉じゃない」


「それは知ってるよ。ロロッカでは、昔から他の国より異形が多かったから、見返りを得る代わりに他人のために戦う、傭兵稼業をする者がたくさんいたって話もな」


「なら、サードル旅団だからと言って他人を闇雲に襲うような奴ばかりとは限らないっては想像できない?」


「・・・それもそうか。現に探索者であるお前さんらが、略奪者と手を組んでないわけだしな」


 モカは怒ったような顔をしつつ、ため息をついた。


「でも、あなたの気持ちもわからなくもない。いつの頃からか、この国の傭兵で、バンダナを持ってる奴なら誰でもサードル旅団を名乗れるようになっちゃったからね。

例え正規の団員でなくても、バンダナを奪うなりして手に入れれば、旅団員を名乗れる」


「そんなことまでして、サードル旅団の名を騙りたいのか?」

俺は思わず尋ねた。


「旅団の名前がないヒラの傭兵だと、報酬を出し渋られることがあるのよ。この国の奴らは、なんやかんや言っても結局サードル旅団の傭兵なら安心だって思ってるんでしょう」


 モカは、サードル旅団って名前自体の価値が昔と比べて思いっきり下がった、と言った。


「私たちは正規の団員よ。稼がなきゃないから、仕方なく旅団の一員であることを名乗ってるけどね・・・本来は、名乗りたくない。

かつては勇敢で力のある者だけが名乗れた名前だったけど、今はただの傭兵の肩書き。そんな名前、名乗りたくない。

もちろん、あいつらと同じような・・・野蛮な行為もしたくない」


なるほど、彼女らが見ず知らずの人を自分から襲うような真似をしないのは、そういうことなのか。


「そういうことだ。おれたちはわりかし新入りの団員だし、混血だが、旅団のメンバーとして恥じない生き方をしてきたつもりだ。

今のような単なる肩書きではなく、本来の誇り高き組織としての・・・な」


 そこで、ここまで黙っていた苺が立った。

彼女は、確かにかつてのサードル旅団は今のような野蛮な組織ではなかった。何なら私は、彼らに助けられたこともあったのにと言っていた。


「旅団がなんでこんなになっちまったのか・・・それはおれたちにはわからん。ただ、砂漠の方に行けば何かわかるかもしれん。

あそこは我々の故郷であると同時に、旅団の開かれた場所でもある。

とにかく、今は異形退治を任せたい。頼むぜ。しがない傭兵からの、依頼だ」


 ルファは、頭を下げてきた。


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