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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
6章・ロロッカの深み

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第366話 第5の敵

次はどこから来る・・・と思っていると、突如何かが頭上から降ってきた。

ダメージは受けなかったが、何かが体にまとわりつくような感覚がすると同時に動きづらくなった。


目に見える形ではないのだが、何か・・・泥か何かのようなものが、体にまとわりついた感触がした。

何だ?と思っていると、さらに足元にかすかに水面に反射するかのような光がきらめくのが見えた。



 体に無理を言わせ、後ろに宙返りして術を躱す。

さっきまで立っていた所には、水の柱が立っている・・・。


動きを止めて、下から串刺しにするって寸法か。

姿を見せないあたり、変な油断はしていないと見える。


「猶・・・!」


沙妃が声を上げる。

猶の頭の真横から、水の矢が迫っていた。



 瞬時に煌汰が矢を凍らせて地面に落とした。

それはまさしく咄嗟の判断。あと少し遅れていたら、猶は頭をまっすぐ撃ち抜かれていただろう。


「そこっ!」


沙妃がブーメランを投げた。

すると、それがよぎった虚空からにわかに血が流れた。

そして、

「へえ・・・よくわかったな」

という声と共に、立派な体つきの女がふっと出てきた。


ボウガンではなく青い大きな弓を持っていること、何よりその腕に巻かれた緑のバンダナから、こいつがサードル旅団であることは明白だった。


「サードル旅団・・・さっきから思ってたけど、なんであんた達がレイドに!」


 沙妃の言う通り、本来サードル旅団は略奪者のレイドのメンバーではない。

奴らは、あくまでも「傭兵」だからだ。

・・・だが、それは同時に逆の理由にもなる。


「なんでって・・・引き受けた仕事だからに決まっているだろう?」


それで、沙妃は理解したようだった。

奴らは傭兵。報酬さえ貰えれば、どんな存在の元でも働く。

その点は、殺人者と似たようなものだ。


「この村を潰す。それが今回、私らの引き受けた仕事だ。

お前達・・・この国の者じゃないな?まあ、関係ないことだが」


 女は弓を構えた。

青く、何かの遺物から作られたようなデザインのその金属質な弓には、見覚えがある。

確か、ロロッカの砂漠の中のある地方に住まう探求者の一族に伝わる、伝統的な武器だ。


正式名称は知らないが、魔力の矢を放つ弓で、腕力ではなく魔力で引く。

扱いはボウガン以上に難しいが、扱えれば普通の弓にはできない事ができる・・・というものだったと思う。


そして、奴らの一族・・・

ことに優れた狩りの腕を持つ者の、象徴的な武器でもある。

あれを使う奴らは、旅団の中では「アクアレンジャー」と呼ばれているという話も耳にしたことがある。


 レンジャーは探求者の亜種だが、探求者より高い戦闘能力を持つそうなので、狩りより戦いの方が向いているだろう。


その意味では、傭兵になったのは適正のある職に就いたと言える。

・・・全く、羨ましい限りだ。


「さて・・・久しぶりの獲物だ。すぐ死んでくれるなよ?」


 そこで気付いたが、女の背後には複数人の祈祷師や魔法使いが並んでいる。

それらもまた、女と同じように虚空からふっと現れた。


もしかしなくても、こいつらがサポート役だろう。

姿を消していたのといい、こちらにバフをかけてきたのといい・・・厄介な援護をつけているものだ。


「[ブリザーショット]!」


凍結を狙ったのか、煌汰が術を放った。

命中・・・はしたものの、びくともしない。

続いて猶が「針乱流(しんらんりゅう)」という技を出す。


 それは、小さな針状の風の刃を無数に飛ばすという技。

ザザザザッといい感じの音が鳴り、女の体から血が流れる。


しかし、若干仰け反らせる程度の反応しかなかった。


女は浮き上がり、弓を引いた・・・と思いきや、真上に向けて撃った。

次の刹那、こちら全員の頭上から水の塊が降ってきた。


 単に水をかけられるのとはわけが違う。

魔力に満ちた、殺意マシマシの水だ。

そんなものをまともにかぶったら、当然痛いわけだ。


しかも、女はすぐに追撃してきた。

弓を横にして引き、小さな水の矢を撃ってきたのだ。


これがなかなかクセモノで、地味に威力がある上に小さく、速度も速くて見づらい。

煌汰が凍らせられなかったところを見ると、煌汰も同じなようだ。


また、何気に沙妃は反撃せずにいた。

敢えてしないのか、能力の使用条件に引っかかっているのかはわからないが・・・


 猶が風のバリアを張ると、すぐに後ろの魔法使いたちが術を唱えてそれを消し去った。

それが癪に障ったのか、猶はそいつ目掛けて短剣を投げた。


ところが、なんと短剣はその体をすり抜けた。

驚いている間に、猶は氷の術で反撃を受けた。


風のやつが氷を受けるとダメージが大きい。

ちょっと焦ったが、幸い大丈夫そうだった。


「[吹雪斬り]!」

煌汰が氷の剣技を繰り出す。

続けて、俺は「稲光の道筋」を繰り出す。


 弓しか持っていないし空中にいるので、近づけば何とかなるかと思ったが、そうは問屋が卸さなかった。

しっかり水の衝撃波を放って反撃してきたのだ。


それもまたやたらと威力があり、かち上げばりに吹き飛ばしを食らった。

普通に起きると撃たれると思い、左に1回転がってから起き上がった。


それが功を成したのか、女はあからさまに舌打ちをしていた。

そこで隙を見せず、すぐに次の技を出してきたが。


「1人も逃がしはしない!」


 奥義のような宣言をしつつ、弓を抱くように抱えた後に体を青いオーラで包んだ。

そして、手を払うと同時にそれを蛇のような形にして勢いよく飛ばしてきた。


それはさながらブーメランの技のようで、俺たち4人の中を高速で駆け抜けていった。


速度だけでなく威力もブーメラン技のそれさながらで、掠った左腕を深く切られた。

水の攻撃で切り傷を受けると、紙や草で切った時に近い感じがする。つまり、鋭い痛みが走る。


 正直慣れっこだが、これを受けるたびに、昔ノートの端で初めて手を切った時の事を思い出す。

話には聞いてたが、実際にあるもんなんだなと、当時は思ったものだ。


もっともその頃はすでにリスカをしてたから、痛みなど大したことはなかった。

それより、紙で手を切るということが本当に起きるのだということに、衝撃と感動を覚えた。


「投技 [聖天(しょうてん)幽冥]!」

 沙妃がブーメランを投げ、女の後ろの奴らを斬り裂く。

そして空間を切り開き、そこから低い音と共に暗い青色の霧のようなものを噴き出した。


すると、魔法使いたちは一斉に倒れた。

倒れた、だけで死んだわけではないが。

そして、肝心の弓の女はというと・・・


霧にさらされて結構なダメージを受けたらしく、地上に降りてきていた。

そこを狙って刀を振るい、剣を振るい、短剣を振るうと、大きく後退した。


「ここは退く・・・だが、すぐに戻る・・・」


それだけ言い残して、女は後ろの魔法使いたちと一緒に姿を消した。



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