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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
6章・ロロッカの深み

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第360話 悲願成就

輝の奥義「インジェクション・オーラ」が、ハメが始まってから数えた回数にして10回目に決まった。


もはやみんな限界だが、それと同時に拘束が解けた。

そして皆が辺りに散らばり、衝撃波の被弾を避けた・・・まだジエルは生きている。


「ウソだろ・・・!?」


アーツでなくとも、これでも倒れないことにはさすがに驚きと絶望を隠せない。

そして奴と共に吹き飛ばしをくらい、背中をしたたか打ち付けた。


 軽減されているとはいえ、なかなか痛い。

自動で回復するにしても、傷は受けないに越したことはない。

何より、再び戦線に復帰するのに時間を食ってしまう。


ここまで手ごわい相手だとは。

体力はまだしも、魔力はそろそろ底をついてきた。

これ以上戦い続けるのは、正直に言ってきつい。


攻撃が通ってないようには見えないから、削れてはいるはずなのだが・・・

この上は、早くくたばってくれることを祈りながら戦う他ない。


 息を切らしながらアーツが弓を射る。

奴とて、かなり消耗しているのだろう。

もはや、技を出すのも重い負荷としてのしかかるらしい。


だが、ここでためらってはいけない。

遠慮なく強烈な技を連発し、押し切らねば。


「奥義 [暴れ花鳥風月]・・・!」

突き、切り下ろし、切り払い、切り返しと4連続の斬撃を放つ。


いつもなら『血の華を』と決めるところだが、そんな気力はない。

というか近づくだけで、勇気と覚悟が必要だ。


技を出し終えたところで殴られた。

だが、怯むことなく刀を振るい、突き刺した。

負けてたまるかと、無我夢中になって。



 その結果、ついにジエルは大きく口を開け、低い唸り声を上げ、真横にまっすぐ倒れた。


「・・・っ!!」


次の瞬間、俺は歓喜の声を上げた。

それは、皆も同じだった。


ようやくだ。ようやく・・・ようやく倒した。

アホみたいに強いボスを、多大な犠牲と時間をかけて、今やっと・・・


「・・・ん?」


 奴は、何かを落としていった。

それは、腕につけて戦う武器である「爪」のようだった。


とりあえず拾ったのだが、みんなと合流するや否や吏廻琉に「それを捨てて!」と言われた挙げ句、亜李華の魔法で粉々に破壊された。


どうやら、「絶望の爪」という呪いの武器だったらしい。

装備すると、攻撃力がむしろ下がるという、もはや武器と呼んでいいのかというシロモノだそうだ。


 それを聞いて、途方もない虚無感に襲われた。あれだけ苦労して、頑張って倒したボスのドロップが、こんなもん?

俺たちは・・・あいつを何のために倒したんだ?


「はっ・・・?なんのために倒したんだよ、おれたち・・・」


アーツがぼやいた。


「・・・まあ、みんな生きてたんだし、倒せたからいいとしましょう?」


「そうだよ。それに・・・遺跡のお宝は入手できたんだしさ!・・・ね?」


はなとイナにそう言われても、煮え切らない何かを感じずにはいられなかった。





 その後、どうにか洞窟の脱出に成功した。


「はあ・・・」


出てきてすぐに、仰向けに大の字になって倒れた。

空を見上げると、もう夜になっていた。

だらしないわね、とはなが呆れた。


「まだ、倒れるには早いんじゃない?」


「知るか・・・ああ、疲れた・・・」


そう言ったのは俺ではなく、横で倒れた猶であった。

輝とアーツも同様に倒れ、亜李華と吏廻琉は倒れはしないまでも、杖に寄りかかった。


 とりあえず拠点に戻ろう・・・と思ったが、そんな力も湧かない。

僅かに残っていた魔力で全員の周りを覆う結界を張り、その場で寝た。


せめて家に入ろう・・・などと言ってくる者はいなかった。

言葉にしなかっただけで、みな同様に疲れていたのだろう。



 朝起きると、8時を回っていた。

他のみんなはまだ寝ていたので、起きるまで待った・・・のだが、1時間半以上誰も起きなかった。


「おはようございます・・・?」

途中で村人が、様子を見るかのように聞いてきたが、真っ当な返答をする気にはなれなかった。


「・・・」


「いや、あんたら・・・」


俺の代わりに、猶と輝が言った。


「あんたら、マジでやべえとこ住んでっからな!真下に・・・《《大魔王》》住んでるぞ!倒したけど!」


「この洞窟、もう結界かなんかで封印した方がいいよ!・・・もう絶対、誰か入れちゃダメだって!」


 他のみんなは、そのようなことは言わなかった。

だが、はなは言いたそうだった。


「村人さん・・・悪いことは言わないから、今後この洞窟に入ろうとする奴が出てきたら、全力で止めてやって。命が惜しかったら、入るなって!」


まあ、遠回しにこの洞窟をもう封印しろと言ってるのかもしれない。

俺には、わからない。



 とにかく、一夜寝て過ごしたことで回復はしたし、アンベル村までは戻れそうだ。

早く拠点に戻って、懐かしの仲間の顔を見たい。


そしてついでに美味いものも食って、あったかい風呂に入って・・・あとは、また寝よう。

疲れが取れない時は、すぐにまた寝るに限る。


遺跡での収穫もあるが、それを詳しく調べるのはまあ後でも大丈夫だ。

今は、とにかく休みたい。

休んで、十分に体を回復させたい。


「さあ、みんな。帰りましょう・・・」


 吏廻琉を先頭にし、帰路についた。


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