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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
6章・ロロッカの深み

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第356話 上層探索

城壁のようになっている上を、慎重に渡っていく。

足音や揺れは発生しないとは言え、声には反応してくるから、特に黄色い岩の近くは絶対喋らないようにして通る。


「…しかし」

ポイントから離れたことを確認し、猶が呟いた。

「遺跡って言う割に、ずいぶん現代的だな」


「私も思いました。光る石はまだしも、ランタンがある遺跡なんて初めて見ました」

言われてみればそうだ。

一見普通の石だが、暗闇に置くと明るく光るという性質がある「光る石」は古くからある自然物で、遺跡に限らず色々なところで使われている。だが、ランタンは人工物だ。そして、ランタン作りには当然ながら燃料とガラスが必要だ。

この遺跡が作られた頃に、そんなものを作って運用する技術があったのだろうか。少なく見積もっても、3000年前に。


まあガラスや燃料は、それ単品ならそれなりに昔から使われてたんだろうが、それでもここと同じ年代の遺跡でランタンなんか見たことない。

これは…ちょっと、ある種のオーパーツと言えるのではないか。

それはそれでロマンがあるが。



途中に本棚が3つほどまとめて置かれているところがあった。

イナ曰くここにも宝があるそうなので、本を片っ端から調べていたところ、途中で手に取った本が襲ってきた。

「稲光の道筋」を繰り出して一撃で仕留めたが、あやうく噛みつかれるところだった。

異形の書、古い本が異形に変化したものか。昔の建物にはよくいる異形だが、こういう遺跡ではあまり見ない。

そもそも、本棚自体遺跡ではそうそう見かけない。


他にも潜んでるかもと思い、警戒しながら本棚を調べたが、もう異形は出てこなかった。

代わりに、2冊の魔導書を見つけた。

水の魔導書である「ウェーブ」、氷の魔導書の「アイシクル」、どちらも中級の魔導書だった。

ウェーブはアーツに、アイシクルは亜李華に渡しておいた。…亜李華はともかく、アーツは水に適性があるかはわからんが。



「あ、あそこにも何かお宝があるよ」

イナは、一部が崩落している広場のようになっているところを指さした。

「よし…行こう」


そこにはドンと置かれた宝箱があった。

念の為中身を透視すると、紫に光っている。

「ふむ…宝はあるだろうが、何か仕掛けがあるな…」


「仕掛け?開けたら罠が発動するタイプ?」


「…か、何か仕掛けを解かないと開かないタイプか。ただ、この辺に解錠のためのギミックになるようなものは見当たらないな…」


「てことは、開けたら罠のタイプ?…嫌ねえ、なにが起きるっていうの?」

開くと罠が発動するトラップタイプの宝箱は、開けると矢やブーメランが飛んできたり、部屋の入り口が閉まって天井が落ちてきたりする。

だがこの辺りにそのような仕掛けがある気配はない。


アーツが探知結界を張ったことで、仕掛けの意味がわかった。

どうやらこの宝箱を開けると、その音が最寄りの黄色い岩…即ちセンサーに伝わり、ジエルを呼び起こすという仕掛けのようだ。

つまり、宝を取るには奴をわざと呼び起こし、避けねばならない。

「うーん…難しいな。あいつとは戦いたくないけど、宝を見逃すなんてことしたくないし…」


イナは悩んだ末、開ける決断をした。

「すぐ空に逃げて、静かにしてれば大丈夫でしょ!」


「…まあ、そうだな。それじゃ、開けるぞ!」

宝箱を開けると、中には鮮やかな色の宝石が入っていた。


同時に、俺たちは一斉に上空へと避難する。

そして宝箱を開けて数秒後、奴が現れた。

下の地面から現れたし、大丈夫か…と思っていたら、しっかり衝撃波を飛ばしてきた。

最初のほうに放ってきていたものと異なり、三方向に分かれて飛んでくるため避けづらい。


ただ、一発被弾するくらいなら問題ない。仮に二発食らっても、何とか耐えられる。

もちろん、すぐに回復すれば全くもって問題ない。

幸いにも奴はこちらを捕捉してきてはいないので、このまま静かにしていれば消えるだろう。


そして、実際奴は約1分後に潜って消えた。

「危なかった…」

しかし、と着地した吏廻琉が言った。

「事あるごとにあいつのご機嫌を伺うんじゃ精神が持たないし、探索のペースも狂うわ。いっそ、倒してしまいましょうか」


「俺も、できるならそうしたいとは思うよ。でもよ…わかっただろ?あいつ恐ろしくタフだぜ」


「遺跡の守護者、って感じよね。でも、このままこそこそするのはなんか気に食わないのよ」

すると、はなとイナが食いついた。

「あら、あなたもそう思ってたの?わたしも同意見よ」


「やっぱり、逃げ惑うだけなんて癪だよね…こういう時は、立ち向かってこそだよ!」


「よかった、同じように思っててくれて。…とは言え、まずは探索が先よ。一通り宝を手にしてから、奴を呼び起こして倒しましょう」

いや、危なくないか?と思ったが、確かに逃げてばかりというのも気に食わない。

勿論リスクはあるだろうが、どうせなら奴を倒してこの遺跡に平和をもたらしてやりたい。


「まあ…そうだな。あいつの相手、してやるか!」

俺がそう言うと、猶たちも賛同してくれた。みんな、同じことを思っていたようだ。

「って言っても、それは最後だな。吏廻琉の言った通り、今はお宝探しに専念しよう」

戦いが終わり、疲れ切った状態で宝を探すのは骨が折れる。まずは、得られるものをすべて得てからにしよう。


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