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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
6章・ロロッカの深み

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第338話 怪しい部屋

翌朝、みんなに昨日見たことを話した。

それで一番衝撃を受けていたのは、何を隠そうフォルであった。

「この学院で…僕の後輩たちに、そんなことがあったなんて…」

彼も失踪事件自体は知っていただろうが、まさかその真相がこんなことだったとは思わなかったのだろう。


「学校の都市伝説を確かめようとして、取り返しのつかないことになるパターン…か。まあよくある話だけど、間接的に巻き込まれようとはな」

樹がそんなことを言った。


「単純比較はできないけど、サンライトの魔導学院ではこんなことはなかったよ…恐ろしい学院だな、ここは…」

セルクは、怯えるように言った。

そういえば、彼は元々サンライトの学院にいたんだった。


「ロロッカでも屈指のエリートの集う学院に、そんな秘密があったとはね…どうせ入学することはなかっただろうけど、入んなくて良かったって思っちゃうな…」

タッドは苦笑いした。


「そうなると、その声の主が気になるね。あと、最後に見たっていう階段も気になる…」

セキアの言う通りである。

あの部屋は、レイアウトを見る限りどこかで見覚えがあった…のだが、思い出せない。

「ひとまず、学院長に説明に行きましょう。恐らく今ごろは、把握しているでしょうが」


キョウラの言った通り、学院長はすでに生徒がまた1人消えたことを把握していた。

また生き残ったあの2人から話を聞いたようで、「夜に校内に忍び込むのは当然禁止事項だが、その結果生徒が失踪してしまったとなると複雑だ…思わぬ形で友人を失った彼らの気持ちを思うと、責めるのも気が引ける…」とぼやいていた。

「ともあれ、失踪の原因がわかったのは大きい。屋上への立ち入りは、当面禁止しよう」


「そうしたほうがいい。…そうだ、あの2人の生徒たちはどうしてる?」


「自室で待機させている。今日はちょうど休業日だ。…しかし、あれでは当分授業などまともに受けられまい。しばらくは、公認欠席ということにしておこう」


「まあ、そりゃそうだよな。ところで、その像ってのは誰を象ったものなんだ?」


「ああ、あれか。あれはな、この学院の創立者にして初代学院長であるラムラス1世…即ち、私の父の像だ」

意外な発言に、思わず「えっ?」と声が出た。

「言っていなかったな。私の真の名は、ラムラス・バルテリナ2世…病に倒れた親父の後を継ぎ、150年前に学院長となった身だ」

親子で学院長を務めてたのか。…どおりで、あの像は何となく見覚えがあると思った。


「だが、よもやあの像に関して良からぬ噂があったとは…それも、教員たちもそれを知っていたとはな。すぐに、そのような噂は事実無根であると生徒達に伝えるよう、全ての教員に通達しよう。それにしても、どこからそんな噂が立ったのか…」


「それは俺たちも気になるところだ。けど、たぶんどんなに考えても仕方ないぜ。こういう噂は、寝てても出てくるもんだ」

人間界でもそうだ。もっと言えば、よくあるアニメや漫画の都市伝説と同じようなものである。

「…そうだな。どうせ当分屋上は閉鎖するし、もうこれで犠牲になる者が増えることはなかろう。…これだけが原因であればだが」

その言葉に、一抹の不安を感じた。


「しかし、だとしてもまだ問題があります。失踪した人々を、助けねばなりません」

キョウラが、一歩前に出た。

「ああ、そうであった。しかし、一体どこに…そもそも、その声の主の正体がわからぬ以上は…」


「確かに、声の主の正体は現時点では不明です。ですが、…」

突如、キョウラは目を見開き、咳をした。

「…失礼しました。声の主の正体はまだ不明ですが、必ず私達が突き止めて見せます。そして、何としても捕らわれた方々を助け出して見せます」


「おお、そう言っていただけるとありがたい。私も調査しておく。君たちも、当分は好きに学院内を調査してもらって構わん。何か少しでも怪しいものを見つけたら、直ちに報告してくれ」


「はい」




そうして学院長の部屋を出た俺たちは、ひとまず宿に戻った。


そしてすぐ、キョウラが口を開いた。

「姜芽様。昨日見えたあの階段の場所…わかりました」


「え!本当か?」


「はい。…おそらく、あの学院長の部屋です」

マジかよ…という驚きは、正直そんなになかった。

なんというか、この手の話ではお約束というか、よくある場所だからだ。

「姜芽様は、お気づきになりませんでしたか?あの部屋と、最後に見えた部屋のレイアウトはそっくりでした」


「…あ!言われてみれば!」


「おそらく、あの部屋のどこかに隠された階段…通路があるはずです。こうなると、あの学院長が怪しいという結論にならざるを得ませんね…」


「じゃ、あの学院長が犯人だってのか?」

そうなると、学院長は俺たちに盛大な大芝居をしていたということになるが。まあ、演技や嘘が達者な悪人なんてごまんといるだろう。

「そうとは限りませんが、可能性は十分にあるかと。今日の夜、あの部屋に潜入して調べてみましょう。必ず、何かあるはずです」


「わかった。…今度も2人か?」


「いえ、階段を見つけたらすぐに突入したいと思うので、他の方を数名連れていきましょう。犯人が誰であれ、おそらく戦闘は避けられませんから」


「わかった。それじゃ、メンバーを編成しよう」


そうして、学院長室突入のためのメンバーを募った。

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