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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
6章・ロロッカの深み

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第336話 解決と予兆

斧持ちが向かってきたので、剣に持ち替えて対抗する。

切り合いながら左手で「螺旋火炎」を放ち、怯ませたところで「炎斬り」を繰り出す。

その横では、セルクと樹、リトとイルが水魔法を駆使して戦っていた。

完全術師であるセルクは元より、樹たちも水の壁を張ってガードしたり、水の刃を飛ばして攻撃したりしていた…のだが、太陽の光が強いためなのか、霧状に水が飛び散ると定期的に虹が現れ、ちょっときれいだった。


というのはさておき、向こうの後衛にいるボウガン持ちが脅威なので、「アクスカッター」を飛ばして牽制しよう…と思ったら、フォルとタッドが撃ち抜いてくれた。

さらに、その両脇にいる連中もキョウラやセキアが術で蹴散らしてくれた。

そして、残った1人もナイアが飛び出して技を出して切り裂いた。


と、そういう感じで、悪党どもの制裁は終わった。

「すごい…」なんて言って学院の4人が驚いてる間に、連中にまとめて縄をかけた。

これで、容疑者たちの拘束も終わった…今回の任務は、完了だ。


結界を解くなり、4人はあっけに取られたような顔をしつつも駆け寄ってきて犯人たちの縄を掴んだ。

あとは、このままこいつらを学院まで連れて帰り、向こうで待機している者達に引き渡せば、俺たちの役目は終わりだ。

ここから学院に戻るまでは、たぶん40分くらいかかるだろう。その間、何もなければいいが。


「準備いいか?」


「はい。…大丈夫です」


今回捕らえた悪党はざっと10人。

ダリとジャール、あと女の生徒…確かファシーと言った。その子が、縄で1人ずつ連結させてつないだ悪党たちを連行する。

そして、女の教師…アイシャが例の荷物が入った箱を慎重に持ち上げる。

「あとは、戻るだけね。…爆発させないよう、慎重に持って行きましょう」


「箱に入った爆発物…って、まるで爆弾だな」


「実際爆弾に使われることもあるのよ。こいつらが何に使おうとしてたのかは知らないけど、まあ取り調べが始まればわかること。さあ、学院へ帰りましょう」


そうして、学院への帰路についた…のだが。

出発して早々、ナイアが嫌なことを言った。


「変なの寄ってこないといいけどね…」


「ちょっと、嫌なこと言わないでよ…」

リトが言った直後、その背後の地面から何やら砂煙が立った。

そしてその数秒後、妙なものが飛び出してきた。

大きさは人の顔ほどで、体全体がまだらに黄色っぽい、蜘蛛のようだった。


「あっ!スコーピリアだ!」

ジャールが叫んだと同時に、他のみんなは武器を取った。どうやら、異形のようだ。

リトが素早く振り向き薙刀を振るうと、蜘蛛は容易く死んだ…と思いきや黒い体液を飛び散らせ、リトの顔にかかった。

リトは目を押さえて呻いたが、セキアが「エスト」と唱えると収まった。


ジャールたちの話によると、このスコーピリアという異形は虫系の異形なのだが、毒のある体液を持っていて、切る、潰すなどの物理的な方法で殺すとそれが飛び散る。

そしてそれを浴びるとやけどのような炎症を起こす他、目に入ると激痛をもたらし、時には失明することもあるという。

リトはそれが見事目に入ってしまったようで、「感電したみたいだった」と涙目になって言っていた。


ちなみにこの体液の毒は出血毒などと同様、解毒の魔法や薬で治療できる。

目にかかった場合も、すぐに治療すれば大したことにはならないという。

仮にセキアがいなかったとしてもキョウラあたりがやってくれたとは思うが、幸運ではあった。



それからの帰り道にもちょくちょく異形が現れた。

意外なことにいずれも虫系、あるいは鳥系の異形であった。

俺と同じく思ったのか、途中で「蛇系とか物質系じゃないのか…」とセルクがぼやいていたが、アイシャが事情を説明してくれた。

理由は不明だが、この砂漠の異形は昔から虫系と鳥系、それと爬虫系がメインなのだという。

砂漠を抜けるまで、爬虫系はとうとう見かけずに終わったが。



学院の門前までくると、すでに数人の学生が待機していた。

彼らに荷物と悪党たちの身柄を明け渡すと、そのうちの1人がこちらに来て「学院長が、感謝申し上げると言っておりました。ありがとうございます」と頭を下げてきた。

まあ大したことじゃなかったのだが。


また、その学生はこうも言っていた。

「学院長は、皆さんにしばらくこちらに滞在してほしいそうです。その代わりと言ってはなんですが、その間の宿を手配して下さったそうです」

その宿は町中にあり、学院まで歩いて数分のところだという。

拠点から遠く離れていた俺たちにとっては、この上ないくらいの朗報だ。あとで、しっかり礼を言っておこう。



そうして学生たちを見送り、立ち尽くしていると、ふとキョウラが妙な顔をしていることに気づいた。

「…姜芽様。今最後に中に入っていった学生の方なのですが…」


「どうかしたのか?」


「あの方から、微かに嫌な魔力…いや、気配を感じました。あの方に何かよくないことが起きそうです…少なくとも明日の朝までに」


「え、本当か?」


「はい。…ただ、このことは皆さんには内密にしておいてください。何故かはわかりませんが、私と姜芽様だけで行ったほうがいい気がするんです」

嫌な気配…か。

もしかしたら、例の失踪事件と関わりがあることかもしれない。

となれば、行動あるのみだ。


「わかった。明日の朝までって言ったよな?なら、今日の夜中に張り込もう」


「私もそうしようと思っていました。ただ、くれぐれも気づかれないようにしましょう。…ご本人にも」


「え?…まあ、いいが」


「ありがとうございます。では、今晩あの学生さんの様子を見ましょう」

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