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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
6章・ロロッカの深み

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第330話 町中にて

門の前まで来た。

それでふと気づいたのだが、この町には門番や見張り番などはおらず、まわりを城壁などで囲まれているわけでもない。

目の前の平原はいいとして、その奥には異形や良からぬ異人がうろついているであろう森が広がっているというのに、いささか不用心ではあるまいか。


それをフォルに聞いてみたら、町全体を大きな結界が覆っているから大丈夫だと言う。

そう言われてみれば、確かに町全体に何やら結界が張られている。透明で目には見えないが、強大な力を感じる結界が。

「この結界は、リーエンが張ったものなのか?」


「いや、この町の創立が学院のリニューアルとほぼ同時期…つまり1000年くらい前で、結界はその時に張られたものだから、リーエンは関係ないよ」


「ありゃ、そうか。…1000年って」

人間界ならかなりの年月だ。だが、ノワール…ことに異人にとっては、そうでもない。

もちろん普通の異人は数年に一度年を取る、3年とか5年の命を持ってるが、高位の種族のやつは100年とか1000年とかの命を普通に持ってる。

そうなると、100年で1歳だから、その異人にとっては100年が1年ということになる。…ヤバい。


そういや、狩人系種族の寿命について聞いてなかった。

これもまたフォルに尋ねてみたところ、狩人は3年、ハンターは15年、狙撃手は500年の命を持つらしい。

狩人を基準としても、1つ上の種族であるハンターになると寿命が5倍に伸び、狙撃手ともなるとさらに30倍以上の長さの命を得られるのか。まさしく人外の域だ。


なお、狩人と並ぶこの国のメイン種族である探求者は探求者、追求者、冒険者の順で昇格し、それぞれ3年、15年、1000年の命を持つという。

また狩人、探求者共に亜種の種族に関しては少々違うらしく、フォルもそこまで詳しくは知らないらしい。しかしながら樹は知ってるそうで、町中を歩く間に詳しく話してくれた。


「狩人の亜種の寿命か。オレが知ってる限りではシーフが4年、ランドが20年。略奪者が5年、アウトローが30年…って感じだな」


「略奪者以外知らない種族だな」


「あ、そっか。シーフは狩りより宝探しに興味を持つ狩人の仲間で、ランドはその上位種だ…まあ探求者に似てるけど、あくまで別の種族だな。で、アウトローは略奪者の上位種。そして、ランドとアウトローは共に狙撃手に昇格する。純粋な狩人じゃなくても、最後には同じ最上位種族に昇格するんだ」


「へえ…探求者の方はどうなってんだ?」


「探求者は、真正のが3年、追求者になると15年。亜種のレンジャーは5年、その上位のアドベンチャラーは20年。これまた亜種の放浪者は10年、上位の流浪者は100年。最上位は冒険者で変わりないから、1000年だ」


「もうわけわかんないな」

1000年。人間界で言うなら、もし紀元前1000年あたりに生まれた冒険者がいたら、つい最近ようやく3歳になったところという計算だ。まあ生まれつき冒険者なんて奴がいるかは知らないが。

そんな長生き出来るんなら、色んなところに冒険に行けそうだ。


「最も、大抵の冒険者はそこまで生きる前に冒険の途中でくたばっちまうんだけどな。本当に、大昔から生きてる冒険者は貴重だぜ…子供の頃から、ほとんど体が老けないから、見た目ではわかりづらいしな」


「老けない?不老…ってことか?」


「厳密には年を取らないわけじゃなくて、体の老化が異様なほど遅いんだ。10万年近く生きてる冒険者でも、実際の年齢はじいさんでも見た目は20歳前後の若者…なんてことが珍しくないからな」


「すげえ…樹もそうなりたいのか?」


「まあ…どっちかと言えば、な」


そんな会話をしていたその時、突如目の前で何やら騒ぎが起こった。2人の男が向かい合い、言い争いをし始めたのだ。

話を漏れ聞いた限り、どうやらこの2人は仕事仲間で、仲良く荷物…近くに置かれていた大きな木箱3つ、を運んでいたらしいのだが、片方がもしかしたら中身は良からぬものかもしれないと思い、開けてみようとした。だが、もう片方がそれは良くないと言った。それが元となり、喧嘩が始まったようだ。


すぐに仲裁に入ったのだが、俺や樹やフォルでは相手にもされなかった。しかしセキアが入ると、あっさり落ち着いた。

まあ、10歳過ぎくらいの女の子に声をかけられて、大人しくならない男なんていないからな!…と樹が言ってたが、果たしてそうだろうか。


ともかく、セキアが詳しいことを聞いてくれた。

「とりあえず、まずはあなたから事情を聞かせて。そもそも、どうしてこの荷物に良くないものが入ってるかも、なんて思ったの?」


「いや、最近違法な武器とか麻薬とかをこういう荷物に混ぜて密輸する事件がちょくちょくあってな。そういうのは決まって妙に重いらしくて、この荷物もやたら重いから、まさか…と思ってな」

セキアは、その茶色い木箱のうちの1つを持ってみた。

持ち上げるのに「んっ…!」と声を上げていたから、やはり重いのだろう。


「確かに重いね。いつもはこんなに重いものは運ばないの?」


「そりゃあな。だから、怪しいんじゃないかと思ってな…」

すると、もう1人が「だとしても、勝手に荷物を開けるなんてダメだろ!」と喚いた。

セキアはそちらの方を向き、「あなたの言うこともわかる。というか、正しいと思う」とフォローした。

その上で、「なら、この荷物を開けずに中身を知ることができればいいよね?」と言い出した。


「そんなことできるのか?」


「もちろん。[アルペニア・エムカリナ]」

セキアが魔法を唱えると、木箱全てが透けて中身が丸見えになった。

一見すると、魚介系の食料品…のようだったが、セキアはさらに追加の魔法を唱えた。

「[カルテマ・アリーマ]」

すると、荷物の中に複数の赤い光が現れた。


「あなたの考えが正しかったね。これは、何か良くないものよ」


「やっぱりか!…何なんだ?」

男が気にするまでもなく、それは箱をすり抜けて飛び出してきた。

ホタテのような二枚貝だったが、開けてみると中には赤みを帯びた粉がたっぷり入った小袋があった。


「これは、おそらく『爆発粉』。ジルドックの国にある爆発性の岩から作った粉で、火薬の代わりになるけど、威力が強すぎるから製造や取引は制限されてるはず」

セキアはフォルに、学院の者を誰か呼んできてと言った。

「これ、どこから来たかわかる?」


「それはよくわからないんだ…送り主の名前がないからな」


「まあ、それは仕方ないか。なら、送り先は?」


「砂漠の方だ。確か、エルヴァーラ峠…」

それを聞いて、セキアは目の色を変えた。

「エルヴァーラ峠!?…そう。あなた達、危ない所だったね…」


「えっ?どういうことだ?」


「エルヴァーラ峠、そしてその先に広がる砂漠、通称『無法の砂』は、昔から違法取引の温床なの。もしあなた達がこれを届けに行っていたら、生きては帰れなかったはず」


「えっ…」

男達は震えあがった。


「でも、もう大丈夫。今学院の者を呼んでよらっているから、もうすぐ来るはず。事情を説明すれば、お咎めなしで解放されるでしょう」


「はあ…ならよかったあ…」


やがて、フォルが3人の男を連れて戻ってきた。

それらはみな、制服であろう青い服を来ていた。

そしてセキアと男から事情を聞き、荷物を持って男たちを連れていった。


つまるところ、あの2人は運び屋にさせられてたってわけか。

本当に無罪放免で解放されるんだろうか…何も知らなかったのだから、それが当然だとは思うが。


しかし、首都に来て早々これとは…

なかなか嫌な始まりである。


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