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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
1章・始まり・セドラル

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第28話 赤い小騎士団

「…誰だ?」


「俺はラギル…この町の騎士だ。一つ、貴公らの手助けをさせてほしい」


「手助け…?何をしてくれるって言うんだ?」


「今の会話、途中からだが聞かせて貰った。貴公らも、あの祈祷師どもの行方を追いたいだろう?」


「それはまあ…な。けど、あんた何か知ってるのか?」


「俺は訳あって、奴らを追っている。奴らの情報はあらかた入手済みだ。そして俺は、この情報を貴公らに提供したい」


「え、本当か?」


「ああ。ただし、一つだけ条件がある」

一気に不安になった。

こういう奴ってのは、大抵変な条件を吹っ掛けてくるものであるからだ。

だが…とりあえずは聞いてみよう。


「…何だ」


「俺達を、貴公らの軍に入れてほしい」


「…え?」

意外な要求に、俺は拍子抜けな声を出した。


「それだけで…いいのか?」

輝も驚いている様子だ。


「ああ。今は別行動させているが、俺には弟が2人いる。奴らも含めて、俺達を貴公らの軍に加えて頂きたい」


タッドと輝は、何やら心配しているようだった。

「大丈夫なのか…?いきなりこんな事言ってくるなんて、なんか怪しいぞ…」


「だからさ…でも、輝達が言ってもしょうがないよ。決めるのは、あくまで姜芽だ」


「うーん…」

正直、迷った。

奴らに関する情報は欲しい。だが輝達の言う事も一理ある。

これは…。


「姜芽、こいつの頼みは聞き届けた方がいいと思うよ」

煌汰がそう言った。


「そりゃ、なんでだ?」


「こいつはたぶん、小騎士団の団長だ。小騎士団は、騎士が構成する傭兵団みたいなもので、結構な実力者が構成員であることが多いんだ。だから、仲間にしておけば色々と助かると思うぜ」


「そうか…?」

俺は、疑問を浮かべるように男を見た。


「…そうだ、確かに俺は小騎士団の団長。と言っても、弟2人しか団員はいないんだがな。

俺達の団に名前はない…強いて言えば、『赤い小騎士団』ってところだな」

赤い小騎士団…。

団長の髪が赤い所から来てるのだろうか。

いずれにせよ、こいつと同じ騎士である煌汰がそう言うなら、答えは一つだ。


「わかった、あんた達を俺達の仲間に迎えよう」


「感謝する。そこの男が言った通り、俺達は傭兵団のようなものだ…金はかからないがな。これから、貴公らの軍のために尽力させてもらう」


「それはありがたいな。ところで、弟、ってのはどこにいる?」


「この町のどこかにいる。あいつらは自由奔放だからな、どこで何をするかはわからない。ただ、節度は守る」


「そうか…なら、酒場とかに行けば会えるか?」


「わからん。だがいずれ、俺のもとへ戻ってくる。心配はいらない」

そうは言われても、どんな奴なのかもわからないのに仲間に入れるというのは…。

だがまあ、今は普通に仲間が欲しいし、いて困るものでもない。


「じゃ、その時詳しく話をさせてもらうぜ。で、情報を教えてくれるか?」 


「奴らは一ヶ月ほど前からこの町に来ている。ここから1キロほど砂漠を進んだ所にある集落から来たようだ」


「じゃ、その集落に今奴らはいるのか?」


「いや、その集落はすでに放棄されている。奴らは今、北東の谷にいるはずだ」


ここで、煌汰が口を挟んだ。

「北東の…というと、サンライトの砂漠の中にある谷?」


「そうだ。先日、あの付近を通った商隊が祈祷師どもに襲われたらしいからな、まず間違いないだろう」

商隊を襲う…って。

そんな魔物みたいなこともするのか。


「そこまではどのくらいの距離があるんだ?」


「およそ3キロだ。相応の長旅になるが、貴公らは大丈夫か?」

いや、3キロで長旅?と言ったら、タッドに諭された。

「砂漠の3キロは、平地の3キロとは訳が違う。昼は暑いけど、夜は寒いし、砂のせいで歩きづらい。まともに歩いたら、何時間かかるかわからないよ」


「そういう事だ。砂漠の旅は、わずかな距離の移動でも苦労する。故に、相応の覚悟と勇気がなければ挑めるものではない」


それで俺は、ふと気付いた。

「それなら、なんで祈祷師達は拠点とここをホイホイ往復できてるんだ?」


「奴らは魔法種族だ、悪路でも大した問題はない。それに奴らは飛行や転移も容易に出来る。移動の方法はいくらでもある」


「…」

前半の意味はよくわからないが、後半は要は奴らは空を飛んだりワープしたりが簡単にできる、ということなのだろう。


「でも、なんでそんな遠いところに拠点を構えたんだ?町に住めばいいだろうに…」


「そこがミソだ。この町に住む事も充分に出来たはずなのに、なぜそれをしなかったか。答えは簡単だ。奴らは、この町の者…いや、部外者に知られてはまずいことを企んでいるのだ」


「悪巧み…ってわけか。でも、一体何を企んでるんだ?」


「最終的な目標まではわからん。だが、セドラル城の機能を完全に崩壊させるのが一つの目的である事は確かだ」


すると、輝と煌汰が同時に反応した。

「セドラル城の!?」


「そりゃ大変だ…絶対に止めなくちゃ!」


「おいおい、どうした?あの城、そんなにすごいものなのかよ?」

俺は、焦る2人にそう質問した。

「セドラルの城…いや、正確にはセドラルの王族か…は、各国の情勢を監視して、大陸全土の均衡を保つ役割も果たしてるんだ。もし城の機能が完全に停止したら、国々の均衡を保つものがなくなる。そうなったら、いつ戦争や侵略が始まってもおかしくない!」


それは確かにまずい。

国同士の戦いなんて、考えたくもない。

「その通りだ。だから、俺達は一刻も早く奴らを倒さねばならん。そして…」


ラギルは言葉を切り、一度後ろを振り向いた。

「…失礼。どうやら弟達が来たようだ」


「え?」


赤い髪をした細身で長身の男と、細身で背の低い男が、ニヤけ顔でこちらを見ていた。




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