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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
6章・ロロッカの深み

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第311話 雷使いのハンター

みんなと別れ、まっすぐ西に進む。

作戦開始前に確認した通り、水が張っているところは多くはなく、水深もさして深くない。まあ樹の力を受けたままだから、どんなに深くても問題はないけど。

ついでに苺さんの探知魔法の効果も残ってるから、近くの敵の居場所は全部丸見えだ。


これまでとは違い、水中からボウガンなどで奇襲してくる敵はいない。代わりに、ちょっと強い敵がちらほら現れるようになった。

例えば、今輝たちが相手している敵は斧持ちと槍持ちで、堂々と沼地の中に立っていたのだけど、こちらが気づくとほぼ同時に気づいて向かってきた。


斧持ちは「海割り」や「水平割り」、槍持ちは「三段突き」や「リズウェル」といった技を出してくる。

斧持ちのは特に、一度は見たことのある技が多いけど、「三段突き」に関しては今回の冒険では見たことがない。もっとも、槍で二段突きをしてきた後に一回転してもう一度突く、という技だからわかっていれば回避は容易だが。

そしてこれらの技はどれもそこそこ強く、それでいて奴ら自身も結構こっちの攻撃を避けてくる上に体力も多い。


斧持ちなんて、イナが鎌で切りつけ、アーツが剣を叩きつけてもまだ立ってるし、輝が胸を撃っても倒れないくらいだ。一応、さらに頭を「ボルトショット」で撃ち抜いたら沈んだけど、横の槍持ちが隙を潰すように「大回転」を繰り出してきた。

これは槍をぶん回しながら投げるという技なのだけど、範囲攻撃だから全員がもらう。当然、みんなが胸や首元を斬り裂かれた。


胸…というか上半身にダメージを受けると、弓を引くのが少々辛くなる。なので、速やかに回復する。

「[ヒールゲイト]」

頭上に矢を放ち、回復効果のある霧を振りかけることで味方全員を即時回復しつつ、持続回復のバフをかける。これで、しばらくはダメージを受けても大丈夫だろう。


回復すると、アーツが叫んだ。

「『響くは戦いの曲!』奥義 [探求楽・殺戮音響]!」

手をかざして緑色の円錐形の衝撃波のようなものを放ち、敵をふっ飛ばした。そして立ち上がってきたところに、輝が「漁獲射ち」を決めた。




その後は、敵が小さなやぐらの上から魔弾で狙撃してきたり、草の裏から飛び出てきたりした。前者はこちらも狙撃で応戦し、後者は回避もしくは結界で防御してから距離を取って矢を射つ。

中には、木で作られた柵で進路が妨害されているところもあった。おそらくは、あれで塞がれてるルートが砦に向かう近道なのだろう。もちろんそのような場所では、近づくまでもなく敵が出てくる。


今もまた、イナが技を繰り出す。

「[カタルシスウェーブ]!」

鎌を振り上げて斬撃を起こし、柵の横のやぐらから攻撃してきた相手を真っ二つに斬り裂いた。

「…それにしても、ちょっと改造されすぎじゃない?」


「改造…ってか改築っていうか。まあとにかく、おれたちが来ることは承知だったっぽいな」

柵があり、しかもそれも見事にこちらの進路を邪魔するように置かれていたということは、輝たちの存在が向こうにバレていたということだろう…どこから情報が漏れたのかはわからないが。

この沼地には、かつて狩人の村があったらしいけど、そんなところにどうしてサードル旅団の連中が拠点を作ったのだろう。そして、その村はどうして跡形もなく消えてしまったのだろう。


「そもそも、なんで奴らは輝たちを攻撃してくるんだ?誰かに命じられたのか?」


「あいつらは傭兵なんでしょ?だったら、報酬さえ恵んでもらえるなら誰のもとでも働くんじゃない?」


「だとしても、これだけの数がこの沼地だけに集まってるのはなんかおかしいだろ!どう考えても200人以上いるぜ!」


「…」

確かにそうだと思ったのか、イナは考えこんだ。

「ま、考えてもしょうがないや。それより、進みましょ。うちらにはまだ仕事がある」


「そうだな。もうこの辺りにはいないっぽいし、適当に柵をぶっ壊して進もう」



その柵だが、どう見ても木製とは思えないほどに頑丈だった。何しろ、輝の魔弾を撃ち込んでも壊せないのだ。

イナたちが技を放っても、もちろん壊れない。術を撃ち込んでも同様だ。

業を煮やしたイナがハンマーを取り出し、「[大地砕き]!」と叫んで叩きつけた。すると、あっさり壊れた。


「やっと壊れた…どうなってんのよこれ!」


「もしかしたら、地属性の攻撃でしか壊せないのかもしれない。今の技地属性だろ、イナ」


「ああ、一応ね…え、何?木なのに地属性じゃないと壊せないの!?」

信じがたい話だが、現に地属性技で簡単に破壊できたのならそう考えるのが自然だ。一体、何の魔法で小細工したんだろうか。




砦が見えてきたが、外に敵はまったくいない。探知で調べてみると、なんと砦の中に1人いるだけのようだ。

でも、それは逆を言えば1人でも大丈夫だと判断され、番人を任された強者がいるということでもあるだろう。用心して進む。


砦に入ると、すぐに雷の矢が飛んできた。

「来たね。…たっぷり遊んでやるよ!」

上の階へ続くであろう階段から、これまでの奴らより大柄な女が降りてきた。

額にはちまきのようにしてスカーフを巻いており、手には黄色く立派な弓を持っている。

…サードル旅団の中でも腕利きの傭兵か。


相手は弓持ち1人だけだが、電の結界を張った上でこちらに鋭い攻撃を仕掛けてくる。

イナたちに近接で戦ってもらってる間に矢を放ったら、側転みたいな動きで躱された上に落雷のカウンターを食らった。

戦闘技術も優れているが、その動きも洗練されている。


さらに戦っていて何となくわかったのだが、こいつは「ハンター」だ。

ハンターは狩人の上位種族であり、弓の扱いや狩りが狩人より上手い。そして理由は不明だが、扱う武器はそれ自体に何らかの属性の魔法の効果がある「魔法武器」であることが多い。

あの女が持ってる弓もおそらくそれで、見た目と飛ばしてきてる攻撃からすると電属性の弓か。


最初は弓や魔弾、術で攻撃してたのだけど、どれも巧みな動きで躱してくる。

それに苛ついたのか、アーツが剣を構えて一気に詰めた。すると、向こうは弓から電撃を走らせてアーツを撃退した。さらに、弓を顔の前で横に持ってかざしてきた。

視界の左右の端に、何か妙な光が見えた…と思ったら、全身に鋭い電流が襲ってきた。どうやら、電の魔導書の「プラズマ」と同じ効果が発動したようだ。


驚き膝をついたところを蹴ってきたので、とっさに腕を交差させてガードした。そこをイナが斬りつけ、女を階段の上まで再びバックさせた。


アーツはというと、どうやら麻痺を食らったらしく喋ることもできないようだった。

毒ではない麻痺は、異人の技か魔法以外でなることはほぼない。故に毒のほうと比べるとあまりかからないレアな異常だ。

幸いにも輝の術の「フェアリーシャワー」で即刻解除できた。


「結界だ…まずは、結界を…」

アーツが言葉を絞り出すように言う。でも、その意味はわかった。

結界を壊すには、普通なら結界破壊の技があればいい。でも、あいつの張っている結界は魔力の純度が高い。となると技で壊すのは難しく、弱点の属性で削ったほうがいい。


電の弱点…それは、地だ。

「…よし!」

イナは1人階段を駆け上がり、女に詰め寄る。そして怒涛の電撃を躱し、ハンマーを振り上げて「大地砕き」を繰り出す。

結界はひび割れ、たちまち砕け散った。

そこを逃さず、アーツと一緒に攻撃する。

「奥義 [探求楽・殺戮音響]!」

「奥義 [黄昏の(ディヴァイン)白光の矢(ライトアロー)]!」


アーツのは言わずもがな、輝のは光と闇を併せ持つ連射技だ。正直、かなり強力な方の奥義だと思う…というのはさておき、女には見事すべて命中した。

「必ず…戻るから…」

そう言い残して、女は消えた。


念の為探知してみたけど、やはりもう他に敵はいないようだった。




二階に上がると、すぐに部屋とベランダが見えた。部屋の壁にはレバーがあり、これを引くと入り口の扉が閉まり出した。

「おっ…!」

そして、10秒ほどで門が閉じた。

これでもう、敵はこの砦に出入りできない。

「これで、制圧完了だな」


「ああ…まずは、1つ目だ」

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