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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
6章・ロロッカの深み

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第304話 レイド第五陣

休息を終え、立ち上がって身構える。

鳴り響く角笛の音は、むしろ奴らがくるタイミングを掴むいい指標になる。笛が鳴ったら、準備すればいいのだから。


しかし、問題はその敵のラインナップだ。

今回は全部で7人来たのだが、そのうち2人の男女が例の怪物に乗っている。剣などの武器は持っていないので、完全術師の魔法使いの類だろう。

そして残り5人のうち1人は男の祈祷師で、あとの4人は男の略奪者と、ぱっと見ではわからない種族の女が2人ずつ。

祈祷師はともかく、残りの奴らは全員強そうだ。


「…え、無双者…!?」

謎の女2人の正体は、アルテトが教えてくれた。

無双者…ということは、殺人者の上位種族だ。とすると、ひょっとして残りの奴らも…?と思ったら、その答えをキョウラが言ってくれた。

「ま…まさかあれは、魔導士…!?」


「なんだ、魔導士って…!」


「術士の上位種族です!ただし、どの属性の専攻でもありません!」


「えっ…!?」

確か、術士が専攻して究められる属性は光、闇、(ことわり)の3つがあり、それらを選ぶことで修道士、祈祷師、魔法使いになるということだったと思ったが。

…そう言えば、いずれの属性も選ばないと術士としての上位種族に昇格できるという話も聞いたことがあるような気がする。


「魔導士は…ものにもよるが、どの属性も使えたはずだ!」

樹がそう言うと、男の方の魔導士が何かを投げてきた。

それは地面に触れると破裂し、あたりを炎上させた。どうやら、火炎瓶のような性質を持つ火の魔法らしい。


すぐに樹が水を出して消そうとしたが、女の方が術を唱え、水を凍らせた。それにより、樹自身も凍ってしまった。

さらに、そこに周りの奴らも出てきてボウガンや槍で狙ってきた。

「あっ…!ヤバい!」

とっさに俺が前に出て結界を張り、その間に「芯核熱」を唱えて溶かした。

なんとか間に合ったが、もし完全に凍りついたところに火属性攻撃を食らったり、砕かれたりしたらほぼ即死だろう。


「氷か…ちょっと分が悪いな!」


「魔導士相手では、弱点を突くことも難しいですね…」

キョウラは言いながらボウガンの矢を躱し、「バニシング」を唱えて反撃した。

「術がダメなら、物理で殴るしかないな!」

輝が男魔導士目掛けて矢を放ったが、無双者2人が槍を交差させてガードした。

「誰だ…誰を優先して倒せばいい!」

アルテトは飛び上がり、矢を撃ち出しながら言った。


「誰って言われてもな…!」

俺としては、正直弱いやつから…と思ったのだが、あいにくこいつらの中に弱いやつなど見当たらない。

祈祷師は暗い色をした、棍棒を持った子鬼のような異形を3体ほど召喚してきたのだが、こいつらの棍棒が地味に痛い。片付けようにも、祈祷師自身が魔弾などで邪魔してくる。

略奪者は相変わらずボウガンを連射してくるし、無双者たちは巧みな槍さばきで攻め立ててくる。


一応、槍には斧が有利だ。だが、こう素早く立ち回られるとむしろ不利になる。

俺はそこまで上手く舞えるわけではないし、槍使いと戦い慣れているわけでもない。

一応、輝とキョウラが光魔法で子鬼たちを片付け、そのまま祈祷師もふっ飛ばしてくれたが、無双者と略奪者は普通に引き続き攻撃してくる。

動き方が上手い近接持ちと、狙いが上手い遠距離持ちを同時に相手するのは骨が折れる。


というわけで、俺は一発賭けに出た。

高々とジャンプして「フェルバイアード」を放ち、略奪者を狙い撃つ。1人は外れたが、もう1人は攻撃を中断させることができた。

そしてそのまま斧を出し、導かれるかのように新技を繰り出す。

「[ウェーブアクス]!」

落下して斧を地面に叩きつけ、水の衝撃波を起こして周囲を攻撃する。


すると、2人の無双者が妙にダメージを受けていた。それでピンと来たのか、樹は2人に向かって奥義を放った。

「『水は暴れる』!奥義 [水竜乱撃]!」

技を受けた2人は意外なほどあっさり倒れた。ただ略奪者と祈祷師はまだ残っている上、例の怪物に乗っている魔導士たちが氷と電気の球を飛ばしてきた。

盾や結界で球をガードし、また異形を召喚しようとしてきた祈祷師をキョウラが光魔法で確実に倒し、略奪者を輝とアルテトがなんとか撃ち抜いた。


かくして、残るは魔導士2人と奴らの乗る怪物だけになったのだが、残りが自分たちだけになったと気づいた魔導士たちは結界を張ってきた。それぞれ、氷と火の結界だ。

何となくだが、氷は火、火は水の攻撃で手っ取り早く壊せそうな気がする。それはみんなも同じようで、速やかに樹が水術を唱えて火属性の結界を張った方を攻撃した。


すると、ものの数発で結界が破壊された。そこをすぐにアルテトたちが攻撃する。

向こうはダメージを受けつつも、彼ら1人1人の体に熱点を集中させて焼き付けるという術を使った。かなり熱そうだったが、みんな怯まずに攻撃を続けた。

キョウラが斬撃を放ち、輝が光魔法を放つ。アルテトが矢を撃ち、樹が水を滝のように降らせる。

そして、妨害しようとしてくる氷の魔導士は俺が食い止める。


かくして、火の魔導士は倒された。乗っていた怪物も、可及的速やかに撃破された。

あとは、氷の方だ。

結界は火の術ですでに壊してある。なので、あとは攻撃に気をつけて倒すだけだ。時間が経つとまた結界を張られるかもしれないので、なるべく早く倒したい。


斧を振りかぶり、「ミキサーボウル」を繰り出す。それに続いて、キョウラが「創星剣」を繰り出す。

向こうは氷弾を撃ち出しつつ、時折氷柱を落としたり足元に霜の霧を召喚して動きを鈍らせたりしてくる。なるべく俺が術で打ち消したが、それでも食らうときは食らった。

樹は水を使うと凍らせられかねないので、それにだけ気をつけて攻撃を仕掛ける。

斧を振るい、剣を振るい、光を放ち、棍を打ち付け…そうして、どうにか倒すことができた。

火の方と比べると、多少苦労したか。


最後に、奴が乗っていた怪物を火と水の二段攻めで倒す。どうやら、十分な威力であれば術もそれなりに通るようだ。

そうして、怪物の断末魔が響き渡るとき、皆は傷だらけの勝利とばかりに立っていた。



「もう…来ないよな?」

アルテトが息を切らしながら言った。

というか、さすがにこれ以上来るとなると、俺もキツい。

「わからない…終わりであってほしいけど…」


しかしながら、輝の心配は杞憂に終わった。

直後に、どこからともなく声が聞こえた。

「くそっ…やるじゃんか!仕方ねえ…野郎ども!撤退だ!」


それから数十秒もしないうちに、俺や樹に龍神やはなから連絡が来た。略奪者の生き残りが、あの声を合図にして一斉に撤退していったというのだ。

「…敵はみんないなくなったらしい。ってことは…」

残った敵は全員逃走した…ということは、俺達の勝利だ!


俺達は顔を見合わせ、顔をほころばせ…直後に歓声を上げた。

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