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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
6章・ロロッカの深み

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第301話 レイド第二陣

数十秒後、再び大きな重低音が鳴り響いた。

結局この音は何なのかと言うと、襲撃者たる略奪者の誰かが吹いている角笛で、新たなウェーブの開始を宣言するものだという。

つまり、この音が響くうちはまだレイドは終わっていないということになる。


来ることはわかっているので、家の前から動かずに待つ。

笛の音と共に村へ侵入した略奪者は村の住人や家を襲う。時には、家の窓やドアを破って突入することも珍しくないという。

だが、逆に言えば家の周りを固めていればこちらから突っ込む必要はないということだ。

なので、他のみんなには家の周りを重点的に固めるように伝えてあるらしい。

「略奪者の犠牲者なんて、1人も出しちゃいけないんだ!」

輝は妙に力強く言っていた。

「略奪者…か。まあ仕事なんだろうが、やられると迷惑なもんだな」

アルテトは苦々しく言っていた。

彼は殺人者であるから、この略奪者と同じようなことの経験があるのだろう。


「来た…!」

樹が指す西の方から、先ほどより多い5人の略奪者がやってきた。そのうち2人がボウガン、3人が弓を撃ちながら少しずつ近づいてきた。

結界を張って防ごうとしたが、輝に「結界破壊技を使ってくるかもしれない」と言われたので、自力で回避することにした…のだが、割と早くに矢を受けた。


ボウガンの矢だった。

食らってみてわかったが、速度も威力も弓矢とは別物だ。

左手を撃ち抜かれたのだが、矢が刺さった瞬間に弓とは明らかに違う痛覚が走った。そして、矢を引き抜こうと握ったらさらに激しい痛みが襲ってきた。

「無理に抜くな!余計傷が広がる!」

アルテトが「『短き時の逆行』」と詠唱すると、手から矢が抜けて地面に落ちた。そして、手の痛みも傷もきれいになくなった。詠唱の内容からして、異能を使って時を巻き戻したっぽい。

と、代わりとばかりにアルテト自身が矢を食らった。

横から飛んできた矢に右の頬を貫かれた瞬間には、思わず目を背けた。


「…」

アルテトは無言で再び時を巻き戻し、その矢を引き抜くと同時に自身も弓で反撃した。

彼の矢は攻撃者の右目に命中し、怯ませることに成功した。

しかしその間に残りの4人が一斉に攻撃してくるので、俊敏に動き回って回避せねばならない。しかも、地味に近づいてきている。


もちろん至近で狙われれば避けようがない。だが、こちらにとっても武器で確実に仕留めるチャンスだ。もっとも、近接でないと困るのは俺と樹で、輝とアルテトはそうでもないだろうが。


「何か…矢を無効化できる技とかないか!」


「無駄だ!向こうは、そういう技の対策手段もちゃんと持ってる!仮に持ってなくても、術とかで攻めてくる!」

俺と同じく、体を反らしつつ両膝を曲げ、横に分裂して飛んできた矢を回避しながら輝が答えてきた。

「てことは、盾でも構えて詰めたほうがいいか!」


「いや、このまま少しずつ詰めよう!下手に突っ込むと逆に危ない!」

と言われても、俺からすればこのまま矢を避け続けるほうがキツい。

向こうはかなり正確に狙いをつけてくる上、ボウガンと弓で波状攻撃を仕掛けてくるので隙もなく、一気に踏み込むのも難しい。

ついでに、さっきアルテトが目を撃った奴は既に回復している。向こうも回復の術を使えるようだ。


そうしているうちにだいぶ距離が狭まった…のだが、向こうはこちらと付かず離れずの距離で止まって攻撃を続けてくる。これがまた、攻められそうで攻められないというもどかしい状況を作り出す。

キツいのは俺だけではないようで、樹たちも息を切らして疲労を顔に出しており、またちょくちょく矢を受けていた。


近接の射程までもう少し…なのだが、勇気を持って一歩踏み込んだ樹がたちまち矢の的となったのを見る限り接近は危険なので、基本的には前進も後退もせず、その場から術と魔弾を放ち、輝や樹が足や腹に矢を受ける度に回復…というサイクルを繰り返した。だが、魔力を回復する暇がない。

向こうが弾切れになるか、せめてもう少し攻撃の速度が緩んでくれれば何とかなりそうなのだが。


皆も、このままではまずいことは理解していたようだった…が、だからといってどうにかできるわけでもない。

しかし、アルテトは違った。

「こりゃまずいな…仕方ない、大技出すか!」

彼は弓を抱き込むように抱え、叫ぶ。

「『掟に抗え』!奥義[凍結時間(フリーズタイム)]!」

途端に、俺達を除くあたりの全てが暗い青色になった。それと同時に、ピタリと固まったように動かなくなった。


「なんだ…!?」


「これは…まさか時間が止まったのか!?」


「…今のうちに、回復と攻撃を!」

アルテトの言う通り、この隙に魔力を回復する薬を飲む。そして、奴らを1人1人確実に撃破する。

俺は「オルビットラーク」で2人を倒し、樹たちが残りの3人を倒した。

アルテトのおかげだ、ありがとう…と言おうとしたら、なにやらひどく疲弊した表情をしていた。

強力な奥義を繰り出したから、その反動が来た…と言ったところか。無理もない。時間停止の技なんてのを使ったら、そりゃ反動なり代償なりもあるだろう。


「アルテト、よくやってくれた。おかげで危機を脱却できた。少し休め」


「そうはいかない…まだレイドは続いてる。それに、今のはちょっと反動が来ただけだ。少し休めば、すぐ良くなるさ」

正直、すぐ良くなるようには見えない。だが、彼の気持ちを踏みにじるわけにもいくまい。

「…わかった。なら、その辺に座って休んどけ。次の襲撃まで、まだちょっと時間があるだろう」


この隙に、猶に電話をかけてみた。

猶は沙妃と柳助と一緒におり、村の北東の出入り口を固めているらしい。

向こうにも略奪者が現れ、ちょうど第二陣を撃退したところだという。

やはり、今のが第2ウェーブだったようだ。ということは、次は第3ウェーブか。


2分ほどして、再びあの笛の音が聞こえた。

ここから、3回戦目だ。

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