第293話 サードル旅団
とりあえず、メンバーを編成した。
タッド、アルテト、はな、沙妃、輝に俺を加えた6人だ。
タッドと輝は現役の、アルテトは「元」狩人だし、奴らとやり合う上で有利に立ち回ってくれるかもしれない。
はなと沙妃に関しては、この所派手に暴れてないからという理由で自ら希望してきたのを受け入れた。まあどちらも実力者なのは確かだし、いいだろう。
そうしてラスタを停め、外に出るとすぐに攻撃が飛んでくる…ということはなかったが、代わりに複数人の言葉が飛んできた。
「あれぇー?何もないとこから急に人が現れるなんて、不思議だねえ?」
「本当だなあ。一体何者だ?」
敢えて反応せず、黙って近づく。
やがて、奴らの全容がわかった。
全体的に薄手で半袖の民族風…というか、いかにも暑い地域の住人という感じの衣服を身につけた集団。
そして、その服はどれもカーキ色がメインで、かつ袖や額の部分が緑の帯で装飾されている。
「ああ、ひょっとして例のお尋ね者の旅人さん一行じゃない?透明になれる馬車に乗ってるって話だったし」
「そういうことか。確かに見かけない格好だし、ジルドックのもんじゃあないよなあ」
「変な茶番してないで、さっさと始めてくれる?」
はなが呆れたように言うと、輝が止めた。
「これがこいつらなりの挨拶なんだよ」
それで、向こうは輝に目を向けた。
「んん?あ、同族か。まさか、仲間に同族がいたなんてな」
「世も末だねえ…こんな形で同族とやり合うことになるなんて」
どうやらこいつらは狩人のようだ…奥にいる奴らも同じかはわからないが。
「…まあ、敵として向かい合うからには容赦しないけどね!」
さっきからベラベラ喋っている女が両手に短剣を出すと、他の奴らも武器を取った。その内訳は弓、剣、斧といった感じだが、弓を持っているものが多かった。
「そんなの、されたほうが困るわ?…さあて、一仕事しましょうか」
はなは俺たちと同様、武器を持って言った。
前衛がかかってくるのより先に、後ろの奴らが弓を撃ってきた。
それは単なる射撃ではなく、稲妻をまとった矢を飛ばしてきていた。おそらくは、「ボルトショット」か。
水属性の…樹あたりを連れてこなくてよかった。
と思ったら、「冷たい矢」と言って氷属性を含むらしい矢を飛ばす技を放ってきた。
一応風属性であるタッドと沙妃が心配なので、「バーニングリング」を唱えて空中にいるうちに氷を消し去る。
その間に剣持ちが向かってきた…のだが、当たらなかった。いや、避けた。
避けた…には違いないのだが、なんかちょっと違う。不思議なことに、瞬間的に異様なほど体が軽くなり、自然に動いて避けられたのだ。
以前錬金で作った、剣撃のお守りを持っていたからだろうか。
ちなみに、その後すぐに飛んできた斧持ちの攻撃は普通に食らった。水属性だったので痛かったが、幸いにも致命傷とまではならなかった。
やはり、剣撃のお守りは「剣の攻撃に対してだけ」強くなるお守りなのだろう。
なお、先程攻撃してきた弓持ちは沙妃のブーメランとはなの奥義でふっ飛ばされていた。
前衛にいた短剣持ちの女は、満を持して向かってきた。
短剣を持ったまま両手を振り上げ、全身から派手な風の魔力をオーラのように出してきたことからちょっとビビりそうになったが、怯まずに真っ向から立ち向かった。
意外にも、攻撃を躱されるということはなく普通に命中したのだが、その後が問題だった。
なんと、ふっと姿を消したのだ。
驚いていたら、背後から2回続けて斬られた。
さっきの斧の攻撃よりちょっと痛いなと思ったら、背中に妙にぬるいものを感じると同時に鈍い痛みが襲ってきた。
怯まず斧をまっすぐ構えて後ろを振り向くと、短剣2本を交差させて受け止めてきた上、足を払ってきた。
転倒した、まずい…と思っていたら、はなが女に飛びかかって注意を引きつけてくれた。
すぐに立ち上がり、「ソロファイア」を放つ。
はなとやり合っていたために見えなかったのか、火球はもろに女の顔面を直撃した…のだが、やはりというか大して食らっている様子はない。
さらに女は、飛び上がって空中で静止し、風の力を溜めて俺とはなに短剣を高速で投げてきた。しかし、これを避ける必要はなかった。目の前に沙妃が飛び出してきて、技をそのまま返してくれたのだ。
「あら、彼女…便利な異能持ちなのね」
はなは沙妃の能力を知らなかったようで、今のでわかった…というか察したらしい。
「っ…な、何、今の…!?」
女が墜落し驚いている間に、沙妃が叫ぶ。
「『廻れ、血風の風車!』奥義 [切り刻みの羽根]!」
2本の短剣を繋げ、風車のように回して女の首元を切り裂いた。電動ノコギリで木を切る時のように、あたりに血が飛び散る様子はなんともグロい。
だが、これなら威力は期待できそうだ。
残りの奴らは…というと、タッドたちとバチバチにやり合っていた。
この際、タッドとアルテトは奥義を繰り出していた。後者はともかく、前者の奥義は初めて見る。
アルテトのは、以前にも見たことがある[失われた時の記憶]だったが、タッドのは、先端が光る矢を放った…と思ったらそれがいくつもの小さな矢に分裂し、さらに相手に命中した直後にその頭上から大きな矢を落とすというもの。
宣言からすると、銘は[碧天一矢]、台詞は『全てを撃ち抜け!』。
彼ら2人のおかげで、敵は一気に減った。あとは3人だけだ。
それぞれ斧と弓と剣を持っており構えてきたが、意外にも沙妃の技一発で一気に片付いた。
「[彗星投げ]!」
水色の光に包まれたブーメランを投げる、というだけの技だったが、命中時のエフェクトを見るに氷属性を持っていたようだ。
それもあってか、奴らは一気に倒れた。
「片付いたな。しかし、雑魚敵みたいな連中相手にみんなして奥義を連発するとは」
「ちょっと強かったからね」
「まあ、だてに傭兵やっちゃないってことだね。属性持つ技も使ってきたし」
「ああ…疲れた。斧持ちの水属性技は痛かったな…んっ?」
ここで、さっきの短剣持ちに受けた傷からの出血がいまだに止まっていないこと、異様なほど体力を削られていることに気づいた。
「姜芽、どうし…わっ!?なんだその出血!?」
「さっき短剣持ちの女に背後から斬られた傷だ。まだ血止まってなかったとは…」
「それ、もしかして出血毒じゃない?」
言われてみれば、そうかもしれない。
「今回はよかったけど、毒は早めに治療しないとダメよ?[カイル]」
はなは助言しつつ、地の術で毒を消し去ってくれた。




