第289話 地底の兵器
奴らと同じように分散し、土の中を通って奴ら1人1人の背後に回り込んだ。
奴らにも、空いた空間から土の中を透視するような能力はないようだ。
俺は斧を構えて青髪をした背の低い奴の背後に回り、適度な高さの壁から手だけ出して振るった。ギリギリまで全く気づかれなかったので、楽に頭をかち割れた。
意外にも一撃では倒せなかったので、すぐに土から飛び出してもう一度斧を振るった。
今度はちゃんと仕留められた…が、飛び散った血が変に生温かく、気持ち悪く感じられた。
さらに、あちこちから戦いの音が聞こえてきた。柳助たちが各地で分散した魔人に仕掛けた不意打ちは、ことごとく成功したようだ。
俺が振り向いて視線を移した先では、イナが相手を押し倒して鎌を振り上げていた。
それはシャベルほどの大きさで、刃の部分が銀色の鎌だった…と思ったら、すぐに振り下ろされて血に染め上げられた。
…いつも思うが、鎌というのは強いのだろうか?
「こ…こんのっ!」
誰かの声が響き、視界の隅に樹がふっ飛ばされてきたのが見えた。
「何者だ!…いや、普通に考えて地上人か」
樹をやったのは、さっきメインで喋っていたリーダーっぽい男だった。
「こんな深くまで来るなんてな」
そこに、さっき仕留めきられなかったらしい2人も寄ってきた。
「なんだ、やっぱり地上人か…」
「土の中から襲ってくるなんてね。…ねえ、これもうアレ使っちゃってよくない?」
「そうだな。…よし!」
リーダーの男は、懐から銀色の石ころのようなものを取り出して地面に投げた。
するとそれは瞬時に巨大化して、丸っこい形の乗り物のようになった。
驚いている間に、奴らはさっさと乗り込んで入り口というか操縦席の蓋を締めた。
蓋は透明になっており、奴らの首から上だけが見える状態になった。
全体が、真ん中が盛り上がった丸っこい形をしており、てっぺんの部分に操縦席があるその形から、何となくUFOのようにも見えた。
それは浮かび上がったかと思うと、本体の3箇所からオレンジ色の稲妻が流れ出した。そして、一気に3つの電撃を飛ばしてきた。
俺は間一髪で避けたが、地面が軽く黒焦げになっていた。
さらに、底の部分からいかにもな感じのレーザー砲を出し、光線をばらまいてきた。
避けるのがキツかったので、盾に持ち替えてガードした。
食らったイナや美羽の肩や腕が焼け焦げていたことからすると、やはりレーザー砲のようだ。
仕返しとばかりにイナが鎌を振るって斬撃を飛ばしたが、機械本体には傷一つつかなかった。
また、キョウラが魔法を唱えて強烈な閃光を焚いたが、これも魔人たちに効いている様子はなかった。
「どうだ…これがオレたちの最先端技術の集合体…地底の力だ!」
リーダーが誇らしげに言ってきた。
「機械か…そんなものを作る技術が、地底にあったとはな」
アーツが感心したように呟く。
「だが、このままでは攻撃が通らん。どうにかしてあのマシンを破壊せねばなるまい」
とは言え、どうするか。柳助はそう言いたそうだったが、右手を横にあげて大きな岩を浮かべて飛ばす術を放っていた。
…そもそも柳助は地属性だしハンマー使いなのだから、こういうのを力任せに破壊するのは得意だと思う。
岩は機械のボディに当たり、かすかに傷をつけた。すると、奴らはより高く飛び上がりつつ何やらバリアを張った。
「バリア…!?そんなこともできんのか!」
柳助が岩を投げ、ハンマーを投げたが、いずれも容易く弾かれた。
「土と打撃に耐性をつけたか…となると!」
柳助は、こちらを振り向くことなく後退した。
「姜芽…すまんが、俺はもう攻めに回れない。ここからは、サポートに徹する」
「わかった。なら回復と強化を頼む」
柳助の武器はハンマー、属性は地だ。打撃と地属性攻撃に耐性をつけられては、もはやどうにもならないのだろう。
「ああ…[ガイアヒール]」
挨拶代わりと言うべきか、先程被弾したイナと美羽を回復して、柳助は後ろに下がった。
また、下がってすぐに「アースパワー」という術も使っていた。直後に何となく力がみなぎってきたから、おそらく攻撃力バフを付与する術だろう。
あとは、俺たちが行こう。
少なくとも、あのバリアを破壊するくらいはやりたい。
と思っていた矢先、また電撃を飛ばしてきた。防御が間に合わなかったが、柳助が結界を展開して全員を守ってくれた。攻撃はできないが、その分全力でサポートをする、といったところだろうか。
アーツが弓の技を放っていたが、矢は難なく弾かれた。続けて風の術も使っていたが、やはりバリアによって弾かれた。
「やっぱり弓…間接攻撃は使えないな。直接斬りつけるしかなさそうだ」
「直接…?でも、どうやって近づくんだ?まさか、飛びかかるなんて言わないよな?」
樹は水属性なので、電気が弱点だ。それ故、あのように電撃を放ってくるやつには近づきたくないのだろう。
「それ以外に、直接攻撃する方法なんてあるか?」
「いや…でも…!」
「あ、あんたは雷に弱いんだっけか。なら、柳助さんと一緒にサポートに回ればいい」
「いや…それはやめとく。こういうとこで、さっさと身を引くのはなんか気に食わねえ!」
そうは言っても、樹の武器は棍。つまり打撃武器だ。
下手に動かないほうがいいと思うが…。
「[雨の剣]!」
樹が詠唱すると、なんと棍の両端に剣のような刃が現れた。
「これで、斬攻撃もできる。ここは、オレにも参加させてくれ!」
アーツは、文句を言わなかった。
「…よっしゃ。そんじゃ、おれたちみんなであいつをぶっ壊すとこから始めようぜ!」




