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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
1章・始まり・セドラル

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第23話 ジステン山賊団

ミフィデルを出て、半日もしないうちに東の町に着いた。

地図によれば、「モトキス」という町らしい。

確かに、その裏には茶色い岩肌がむき出しの山がある。

…何気に見たが、人間界ではあまり見かけないタイプの山だ。


そして町の方はというと、

「な…」

なんと、山賊に襲われていた。

斧やらナタやらを手にした何人もの男達が、道行く人を襲ったり、家々を尋ねては恐喝をしたりとやりたい放題しているのだ。

「こりゃ大変だ…すぐに助けよう!」


「ああ…!」


今回のメンバーは俺の他、柳助、ナイア、キョウラ。

ド◯クエなんかのRPGにならい、これからも町やダンジョンの探索は基本的に4人パーティで行う。

昨日、馬車の中で話し合ってそう決めたのだ。

あまり頭数が多くても、統率が大変だからである。


最初に、俺達の一番近くにいるものを柳助がかち上げた。

さらに、そこへ寄ってきた連中も一振りでぶっ飛ばした。

そもそも体格がでかい柳助が、頭がやたらとでかく、柄も身の丈ほどもあるハンマーを容易く振り回すその姿は、まさしく重戦士である。


関係ないが、ハンマーってなんか不遇扱いされてる武器の印象がある。

カー◯ィはまだしも、モ◯ハンとかではハンマーは微妙だったし。

そう言えば、確か柳助は地属性?って言ってたな。

体がでかいパワー系キャラで、土属性…か。

いやいや、実際はきっと強い…はずだ。


「ふん!」

自身に気づいて近づいてくる山賊達を、柳助は容易くぶっ飛ばしていく。

おかげで、俺達の方にはまったく敵が来ない。


「柳助様…頼もしいです…」

キョウラは見惚れているが、俺とナイアは、

「なあ、これって…」


「そうね…山賊達はあいつに任せていいと思う」

と、正直引きながらも柳助の強さに脱帽していた。



そして、あっという間に外にいる山賊は全滅した。

「すげえな…ほとんど無双だったじゃんか」


「向こうは山賊、俺の敵ではない。だが、ちょっと出しゃばり過ぎたかもしれん」


「え?」


「お前達にも、活躍の場を設けた方がよかったな…と思う」

なんか、強者感を醸し出しているのが妙に鼻につく。

というかずっと思ってたが、柳助は昔とは雰囲気も喋り方もまったく違う。

こっちに来てからの…数十年?数百年?で、何があったのだろうか。


「大層な事言ってくれるじゃない」

と、家の中から残党が一人現れた。

ナイアは斧を抜いて、

「[スーパーターン]」

1度斧を後ろに回し、思い切り薙ぎ払った。

これがなかなかの威力のようで、山賊は思いっきり後ろに吹き飛んだ…柳助の攻撃に比べると弱いが。

柳助のふっ飛ばしはス◯ブラのようであったが、ナイアのふっ飛ばしはモ◯ハンのようだ。

まあ、体格的な事もあるのだろう。

それに、そもそも斧は打ち付けて使う武器ではないし。


あのパワーがナイア本人のものなのか、ナイアが放った技のものなのかはわからないが、いずれにせよ十分なパワーである。

あれなら、今後の戦力としても期待が出来そうだ。 

「なるほど…見事だ」

頷く柳助に、ナイアは不満そうに言った。

「あんたさあ…さっきからなんか偉そうだけど、そんなに戦闘の経験あるの?」


「そうか?そんなつもりはないのだが」


「はあ…悪気なく、ってわけね。質悪いわ、ほんっと。てか、あなた何の種族なの?」


「俺は戦士だ…人間上がりのな。今年で658年目になる」


「はへえ…ずいぶん生きてるんだねえ」

658年、という数字も驚きだが、それより人間上がりという言葉が気になった。

「なあ、人間上がり…って何だ?」

すると、キョウラが説明してくれた。

「人間上がりというのは、人間から異人になった方に対して使われる呼称です。基本的には転生して異人になる方が多いですが、昇華して異人になる方もいらっしゃいます」


「姜芽は転移して異人になった…んでしょ?なら、昇華だね。姜芽も、人間上がりの異人だよ」

そうか、確かにナイアの言う通りだな、と思った。


「とりあえず、町の人達の安否を確認しよう。まだ山賊の残党がいるかもしれないし、気を付けろよ、みんな」


そうして、町中を見て回った。

道に倒れている人なんかもいたが、幸いにも気絶しているだけで目立った外傷もなく、起こすとそれぞれの家へ飛んで帰っていった。


町内の家々を訪ねて回り、住人の安否の確認もした。

訪ねた先々で、山賊はもういないか、お前らは山賊の一味じゃないのか、と聞かれたが、俺はそのたびに、山賊はもういない、俺達は山賊ではなく旅人だ、と言った。


怪我人はキョウラが治療した。

そうすると、本人の家族も含めてみな、感謝の言葉を言ってくれる。

別に期待していた訳では無いが、人に感謝されるのは素直に嬉しい。

怪我人はいても、死者はいなかったのは幸運だった。

こんな事で死ぬなんて、あまりにも悲しいからな。




最後の家にて、怪我人をキョウラが治療している間に、家の人がこんな話をしてきた。

「あの…実は、ここの通りの奥にあるフェンスの向こうにも家があるのですが…よければ、そちらにも山賊がいなくなった事を知らせていただけないでしょうか?私達は、まだ外に出るのが怖くて…」


もちろん、断る理由はなかった。


家の前の道の先に、立派なフェンス…というか門が建てられた家があったので、さっそくパーティ総出で向かう。

先頭は俺だ…一応、このパーティのリーダーなので。


「門には鍵がかかっていますね…」


「呼んでみよう。おーい!」

俺が一声あげると、すぐに返事が帰ってきた。


「来るな、山賊ども!お前たちにやるものなんかない!」

どうやら、まだ警戒を続けているようだ。

「ありゃ、まだ状況を把握してないのね」


「姜芽様…どうしましょうか?」


「決まってるだろ…」

俺は声の主に向けて叫ぶ。

「俺達は旅人だ!山賊は、俺達が倒した!だから、安心して門を開けてくれ!」

すると、数十秒の沈黙の後、一人の青年が家から出てきた。

そいつはこちらへ歩いてきて、門の前で立ち止まった。

「…ここの住人か?」


「ああ。山賊はもういないのか?」


「大丈夫です。全て、私達が倒しました。怪我をされた方も、全員治療しました」

キョウラがそう言うと、青年は驚いた。

「ん…修道士さん!?

…わかった。ひとまず中へ」




家の中には、青年と同じ青髪の女の子がいた。

彼女は最初俺達におびえていたが、やはりキョウラの姿を見ると安心したようだった。

聖女…いや、修道士ってのは、そんなに信頼されてるんだろうか。


「…あれ、他に家族はいないの?」


「いないよ。うちは父さんは7年前、母さんは2年前に死んで、今は僕と妹だけだから」

なるほど、妹を守っていたのか。


青年は座椅子に腰掛け、話し出した。

「座ってくれ。それで…あんた達、旅人だって言ってたよな。あんた達が、奴らを追っ払ってくれたのか」


「ああ。俺達はちょっと探しものをしててな、それでこの町に寄ったんだ」


「探しもの…か。手伝いたいところだけど、奴らが怖いからそうも言ってられないな」


「奴ら…ってあの山賊たち?」


「うん。奴らはただの山賊じゃない…このあたりで悪名高い、ジステン山賊団の奴らなんだ」


「ジステン山賊団…?」

すると、ナイアが反応した。

「聞いた事ある。この国全域を網羅してる、凶悪な山賊団…」

キョウラが、こちらを見てきた。

「姜芽様。以前私達が倒したメルスの盗賊も、彼らの仲間かと」


「なんでそう思う?」


「山賊団はいくつかの集団に分かれており、この国の至る所に巣窟を作って活動していると聞きます。彼ら…盗賊ソネットも、恐らくは…」


「…なるほど。で、そいつらがどうしたって?」


「奴らは最近になって、この町の裏のルルク山にも拠点を作ったみたいなんだ。だから、このままじゃいずれ、この町は奴らに…」


すると、柳助が言った。

「それは放っておけんな。俺達で奴らを潰そう」


「…え、やってくれるのか!」


「当然だ。姜芽も、いいよな?」


「ああ。ナイアとキョウラも同意見だろうよ」

二人の方を見ると、二人は無言で頷いてくれた。

「…!ありがとう…!」

青年は頭を下げた。


と、隣の妹らしい女の子が彼に言った。

「お兄ちゃん。この人たちを助けてあげて」


「え?」


「ここは、私たちの村だよ。私たちが守らなきゃ」


「でも…」


怯える兄に、妹は発破をかけるように言った。


「自分の村も守れず、旅の人に助けてもらうなんて、仮にも戦える異人として情けないと思わない!?」


「…っ」


それで、兄は覚悟を決めたようだった。


「…わかった。

旅人さんたち。僕も協力させてくれ。奴らの掃討を旅人にだけ任せるわけには行かない。それに僕は狩人だから、山での戦いは慣れてる。だから…頼む!」


またも頭を下げる青年。

その様子から、彼の覚悟が伝わってきた。

「そうか。なら、ぜひ頼むぜ」


「ありがとう。僕はタッド、弓使いだ。一緒に奴らを潰そう!」


「ああ!」


家を出る時、彼は妹に「必ず帰ってくる。だから、安心して待っていてくれ」と言い残し、妹もまた、「うん。わたし、ここでずっと待ってるから」と兄を抱きしめた。

素敵な兄妹愛、である。

俺には弟しかいないから、正直よくわからんが。


山賊たちの根城は山の上の方にあるらしい。

さすがに馬車ではきついので、俺達5人で向かうことにした。




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