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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
間章・仮面の者

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第187話 殺人者の国

 リビングに戻ると、ちょうど龍神と紗妃がやってきたところだったので、二人から話を聞いた。


そして、驚いたことに——なんと、二人とも昔はあの連中と同じように盗みを働く盗賊だったという。


「ハイウェイマンか?あれはな、この国の名物みたいなもんだ。俺も昔は奴らの仲間だった…まあ、基本ひとりで動いてたけどな」


「馬に乗って襲いかかる盗賊ね。私も昔は、あれの仲間だったよ。この国以外だとほとんど見かけないけどね。馬はいても、いろいろと取り締まりが厳しくて、簡単にはやれないから」


 走る馬車を追ってくるような連中がいるとは、まったく恐ろしい盗賊だ。

龍神の話によれば、あのような盗賊が生まれた背景には、この国特有の事情があるという。


「まずこの国では、盗みも殺しも法で許されてる。で、殺人者ってのは、まともな仕事に就けないか、そもそも働く気がないやつが多い。だから、他人の物を奪うのが一番楽で、確実な生き方ってわけだ。そして、この国はほぼ一年中雪に覆われてる。だから、寒さの中でも俊敏に動ける馬を駆って、他人を襲う盗賊が生まれた。それがハイウェイマンってわけだ」


 略奪と殺人が法で許されているなんて、なんとも恐ろしい話だ。

まあ、「殺人者の国」と呼ばれるだけのことはある。




 部屋に戻る途中で図書館に寄り、この国について書かれた本を一冊借りてきた。

ジルドックという国について、個人的にもう少し詳しく調べてみたかったのだ。


ジルドックは、数千年前に八勇者のひとり、反逆者ルーシュによって建国された殺人者の国。…まあでも、この話は知っていた。

だが、一日かけてその本を読み込んでみると、さらに多くのことがわかった。


 ジルドックは単なる無法者の集まり、という国ではない。

建国者ルーシュの独自の思想によって作られた、初めからいろいろと異質な国家だった。


気候、法律、政治、あらゆる面で他国とは一線を画しており、大陸でも特異な存在とされている。


 中でも特筆すべきは、法律に関する思想だ。

この国には、実は明確な法律というものが存在しない。犯罪に該当する行為の定義も、罰則も存在しないのだ。


一応禁じられていることもあり、それが「無用の争いをすること」と「自ら命を捨てること」。


前者はそのままの意味だが、後者に関しては、如何なる理由があろうと、自ら死を望んではならないし、生きることを諦めてはならない…という意味だ。


 要は、「どんなことをしてでも寿命を全うせよ。何が何でも最後まで生きよ」ということであり、それだけだと別に悪くはない考え方にも思える。


だがそれは、「生きるためであるなら、どんなことでも許される」ということでもある。

これは、ある意味で非常に恐ろしい。


 また、少し意外だったのは、ジルドックの中でも治安が悪いのは国境周辺などの郊外だけで、国内の多くの地域では比較的平穏が保たれているという点だった。


これは、「無用の争い」が禁じられていることが影響しているらしいが…正直、完全には理解できなかった。


 そして、もうひとつ興味深かったのは、建国者であるルーシュが“いまだ生きているかもしれない”という話だ。


彼の種族である「反逆者」は、殺人者系の最上位種族であり、寿命という概念を持たず、望む限り永遠に生き続けることが可能だという。


ルーシュは、建国から400年が経過した頃に忽然と姿を消した。それ以来、彼を見た者はいない。

そのため、今もどこかで生き続けている可能性が囁かれている。


 八勇者の中で現在も生きている可能性があるのは、殺人者の国を築いた反逆者ルーシュと、ラーディー王国を築いた魔女イーサルミーの二人だけだが、どちらも建国から数百年後には姿を消しており、以降の消息は不明であるとのこと。


まだ生きているのかもしれないし、すでにどこかでひっそりと命を終えているのかもしれない。

それは、わからない。


 そんなこんなで本を読み終えた頃、ちょうど夕飯の連絡が届いた。




 夕食を終えても、外はまだ完全には暗くなっていなかった。

冬にしては日が長いな、と思ったが、ジルドックは季節風の影響で寒冷なだけで、日照時間自体はそれほど短くないのだと気づく。


セルクとラウダスは、妙に嬉しそうにしていた。

二人とも、一度は殺人者の国に行ってみたかったのだという。


 セルクは純粋に観光目的で、ラウダスは「全ての国を回る」という目標の一環らしい。

…まあ、どちらも一人で来ていたら、今ごろ身ぐるみを剥がされていたかもしれないが。



 部屋に戻り、例の仮面の異人——マスカーについて書かれた本を手に取った。

今まで読まずにいたが、いざ読み始めると妙に面白く、あっという間に読み終えてしまった。


それなりに厚みのある本だったが、読み終えるのにかかった時間はわずか一時間半。

こんなに早く分厚い本を読み切ったのは初めてかもしれない。


 ふと窓の外を見てみたが、すっかり真っ暗だった。

ただ、窓ガラスにぱらぱらとぶつかる雪だけが、白く静かに存在を主張している。


これでは、今自分がいる場所の景色さえもよくわからない。

寒さも厳しいし、今日はもう寝るとしよう。


 どうやら今夜も、冷え込みが強いらしい。

しっかりと防寒して休みたい。



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