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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
4章・ロードアの長旅

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第168話 正しき闇と悪しき闇

町の外に馬車を止め、一晩を過ごした。

町に着いた時既に夕方だったので、翌日城に報告に行こうと思った、というわけ…ではない。

確かに元々はそのつもりでいたのだが、昨日の夜ラウダスと会話してから、気が変わったのだ。


昨日の夜、リビングで彼と話した時に言われた。

「向こうはおそらく、もうこちらに気づいている。正規の方法を装って、正面から堂々と入っても、捕まって殺されるのがオチだと思う」


確かに、そう言われてみればそうだ。

そもそも、悪党を捕まえて手柄を立てたってことにして褒美をねだる…なんてケチ臭い方法で城に入ろうとすること自体が間違いだったか。

となると、忍び込むのが正解となるか。そう尋ねてみると、彼はあー、と唸った。

「そうだ…と言いたいところだけど、ロードア城の警備は厳しいって聞くからね。簡単には忍び込めないと思うよ」


しかし、彼はこうも言った。

「だからね、ここはとりあえず僕が兵士を落として、その間に君たちが突入する…っていうのがいいと思うな」


「兵士を落とす…?殺すのか!?」


「まさか。そうならないように、眠らせるんだよ。黒魔法を使えば、人を眠らせるくらい簡単にできるからね」


「あ、そういうことか…」


「うん。…そう言えば、この軍には他に黒魔法を使える人がいないんだよね?」


「ああ。ついでに闇を使える奴もあんただけだ」


「てことは、僕の責任は重大だね。作戦実行の時には、失敗しないように頑張るよ」


「それは助かる。てか、警備が軽いところを狙うんなら今のうちに行ったほうが良くないか?」


「いや、祈祷師は夜に魔力が強くなるからね。相手の強さがわからない以上、夜に突撃するのはやめたほうがいい。明日、明るいうちに忍び込もう」


とまあこういうわけで、夜が明けてから城に忍び込むことになった。

イーダス王子の話では、城には裏口があるらしいので、そこから侵入しようと思う。

ただし早朝から実行すると、みんなまだ頭が冴えてない状態で戦う羽目になりかねないので、9時を過ぎた頃に始める予定である。


作戦のことは、既にみんなに話してある。

ラウダスが兵士に黒魔法を使う、と言ったら苺たちは驚いていたが、あくまで眠らせるだけだと言ったら安心していた。


そして今、俺は図書室にいる。黒魔法、というものが気になったからだ。

その名前と、祈祷師が使うということからして白魔法の対になるものなのだろうが、その性質がよくわからない。

図書室の本を漁ったところ、幸運にも黒魔法について書かれた書物があったので、読んでいるのだ。


それによると、黒魔法はやはり白魔法と対をなすものであり、修道士系と対になる祈祷師系種族が扱う魔法であるらしい。

対になるものではあるが、全く逆の性質を持っている…というわけではなく、むしろ名前が違うだけで白魔法と同じ、あるいは似た効果の黒魔法もあるという。


また、白魔法は必ず光属性を持っているわけではないが、黒魔法も同様に必ずしも闇の属性を有しているとは限らない。さらに、大賢者や陰陽師、魔女や魔王は白魔法と黒魔法を両方扱える。このことからも、両者は「真逆の存在」というよりは「双璧をなす存在」であるということのようだ。


ただし、違いもある。

白魔法は自身の体力を削って放つ「生命を削る」魔法であるのに対し、黒魔法は自身の精神力を代償にして放つ「精神を削る」魔法であるというのだ。 

どういうことかよくわからないが、どうも本に書かれている内容からするに「人としての心を削り、健全な精神をすり減らして放つ」ということらしい。


つまり、使うたびに自身の精神と心が傷つく魔法であり、みだりに乱用すれば文字通りの「廃人」になりかねない。

なんとも危険な魔法だが、なんか納得がいく話でもある。


ちなみに白魔法もそうだが、「経典」と呼ばれる魔導書を使うと精神をまったく削らずに放てるらしい。これは白魔法の方にもあり、こちらは「聖典」と呼ばれるが、黒魔法のものは「魔典」と呼ばれる。

経典は魔導書ではあるが、白か黒の魔法を扱えない者には開くことが出来ないという。


それと、黒魔法は闇魔法とは別物だが、元より祈祷師が闇魔法を得意とする種族である都合上、黒魔法を扱える者は闇魔法を扱えることも多い。

ここも、光魔法とは別物であるが修道士が主な使用者なために結局光魔法と一緒に使える者が多い白魔法と同じである。



…と、色んな知識を得られたなと思って本を閉じた時、誰かに声をかけられた。


「姜芽さん、黒魔法に興味があるの?」

声の主はラウダスだった。

「興味…っていうか、なんかよくわかんなかったから気になってな」


「ふーん」

ふとラウダスの手元を見やると、表紙が不気味なほど黒い書物を持っていた。

「その書物は…?」


「あ、これ?これは闇の魔導書だよ。[ダーク]っていうんだ」


「いかにもな名前だな。それ、強いのか?」


「いや。なにせ初級魔法だからね。僕はまだ、祈祷師になってから日が浅いんだ。だから、まずは簡単な闇魔法から使っていこうと思ってね」


「そうか」


闇魔法…か。なんか敵が使ってくるイメージがあるが、まあ味方が使っても不思議はない。


ちなみにその後しばらくラウダスと会話したのだが、彼はその時ちょっと面白いことを言っていた。

「正しい闇もあれば、悪しき闇もある。僕は、正しい闇でありたいんだ」



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