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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
4章・ロードアの長旅

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第162話 影の者との戦い

まずはキョウラがいった。

「[ディヴァイン]」

中位の白魔法を唱えて攻撃し、続けて魔導書を開いて唱えた。

「[ホーリー]」

奴はわずかに仰け反ったが、すぐに飛び込んで彼女に斬りかかった。


キョウラは後ろにふっ飛んだがすぐ立ち上がり、鮮血の滴る胸を押さえて詠唱した。

「[ライトア]」

みるみる傷が塞がり、出血も収まっていく。

どうやら、光の回復魔法を使ったらしい。


そこへ煌汰が飛び込んだ。

「[吹雪斬り]!」

剣に氷をまとわせて斬りかかり、攻撃が命中した奴の腕に氷を付着させた。

さらに、煌汰は一度飛び退いて再び攻撃を繰り出した。


「[ハイブリザード]」

文字通り吹雪を吹き付ける術で、奴の上半身

を凍らせようとした。

すると、奴はなんと片腕でそれを受け止めたばかりか、残った右手で魔弾を放った。

煌汰はなんとか回避して地上に降り、盾を構えながら突っ込んだ。

奴はそれをなんなく回避し、ガラ空きの背後に魔弾をぶつけた。


煌汰が飛ばされたところで、龍神と俺が同時にかかった。龍神は雷を、俺は炎を武器にまとわせて斬りかかった。

奴は体の半身を分離させて回避してきた。俺たちは素早くジャンプし、少し時間を置いて下方向に火と雷を撃ち出した。

ちなみにこの「下方向に火を撃ち出す」というのは今閃いた術で、名付けるなら「ローフレイム」といったところである。


言わずもがな、龍神が今使っていた術…「[稲妻落とし]」から着想を得た術だ。

あちらは妙にシンプルな名前だが、こちらは…。


あれ、ひょっとしてこっちの名前もシンプルか?

まあいい。大事なのは名前ではなく性能だ。

思うように身動きが取れない空中で、無理に体を動かさなくても下に向かって攻撃できる手段というのは貴重である。

威力も、それなりにはあるはず…と思ったのだが、あいにく躱されてしまったのでここでそれを確かめることは叶わなかった。


またそれだけではなく、俺たちが空中にいる間に奴は空中に丸い光を呼び出した…かと思うと、そこから冷たい光を放って攻撃してきた。

正直そんな痛くはなかったが、なぜか体が動かなくなり地上に落ちてしまった。


「おっと!」

龍神が素早く俺を救い出してくれたおかげで、奴の一太刀を浴びずに済んだ。

感謝の言葉を言いたかったが、口も動かない。

なんだ、この感覚は…まるで、全身が痺れているかのような。


「[凍える心(マインコールド)]か…ここで麻痺効果がある術を使うとはな」

龍神はそう言いつつ「静寂の月」と唱えた。

すると、全身から痺れが消えた。


「今のは…?」


「姜芽がなったのは麻痺、今唱えたのは状態異常を消す術だ」

なるほど…麻痺か。ゲームでもよくある異常である。しかし、全身が痺れるってあんな感じなんだな…痛いというか、何というか。

何となく、金縛りのような感じだった。

筆舌に尽くしがたいほど辛いというようなものではないが、できればあまり食らいたくない。


そうしている間にも、戦闘は続いていた。

「[ストーンラッド]!」

メニィが岩…いや、地属性の魔弾を放ち、吏廻琉も「メーンエスト」と唱えて光の魔弾を飛ばしていた。

クレシュは何も言わずに魔弾を飛ばして応戦していたが、真っ黒い色を見る限り奴の魔弾は闇属性っぽい。


…何となく理解したが、魔弾にも強さがある。そしてそれは語尾3文字によって変わり、「ラッド」は最も弱い…というか基本で、「レイト」はその次。「エスト」は魔弾の中では最も強いものだ。

魔力をそのまま固めてぶつけるものである以上、威力は使用者の魔力によって決まるものだと思うが…まあ、詳しいことは後だ。

とにかく、今はこいつを倒すことに集中せねば。


「きゃっ!」

メニィが奴の魔弾を食らって飛ばされ、悲鳴を上げた。


「メニィさん…くっ!」

吏廻琉も彼女に気を取られた隙に、魔弾を食らってしまった。

見かけの割に威力があったのか、メニィは唸るばかりで立ち上がってこない。吏廻琉も、両手をついて震えながら立とうとしていた。


奴は剣を出し、横に構えようとする。

技を決められてはたまらないので、慌てて斧を投げた。

が、奴は知っていたかのように振り向き、同時に剣を振るって斧を弾いてきた。

そして俺を睨みつけ、瞬速とも言える速度で突っ込んできた。


「がはっ…」

波打つような形になった剣で胸を刺し貫かれ、数秒後に血に塗れて引き抜かれる。

それはノコギリのように俺の体を切り刻み、引き抜かれる時にまた、深く切り裂いてきた。


「姜芽!…[雷月落とし]…!」

龍神の声が響き、直後に強烈な電光と音が目と耳に入ってくる。

腹を生暖かい液体が塗らす。激痛が襲ってくる。視界も揺らぐ。だが、まだ…。


どうにか身を起こして立とうとしたが、腕が震えてできない。

何より、胸からの出血と痛みが辛い。

誰か、回復を…。


力尽きて倒れた視界の端に、キョウラが駆け寄ってきて術を唱えてくれているのが見えた。

だが、傷が癒えることはなかった。


回復が効かず、異常なほど出血していることから何となく察した…奴の剣には、回復や止血を妨害する毒が塗られていたのだ。

となると、俺は…。


意識が遠ざかり、みんなの声も聞こえなくなっていく。

視界が暗くなり、キョウラの足も見えなくなっていく。

どうやら、ここまでのようだ。


まったく、情けないな。

せっかく、異世界転移したのに。

こんな事で、やられちまうなんて…。

だがまあ、結構頑張った方だと思う。


最後に、みんなに一言かけたい気持ちだ。

あとは、頼んだぜ…と。


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