表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
4章・ロードアの長旅

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

136/694

第123話 不穏な気配

キョウラの奥義は、俺が思ってたよりずっと強烈だった。

ぶっとい光の柱が落ちてきたかと思ったら、次の瞬間にはスペクターたちは綺麗サッパリ姿を消していた。

何気に、術を放つ際に全く音が出ていなかったのも、別の意味ですごい…というか特異な点だと思う。今までに見てきた技や術、奥義は軒並み派手な音が出ていた。もっとも、それが威力や効果に関係あるかと言われれば疑問だし、些細なことではあるが。


「わ…」


「な…」

紗妃と猶も、言葉を失っていた。

まさか、一撃で全滅させるとは思わなかっただろう。

まあ修道士…というか光と白の魔法には特効があるし、今のキョウラが上位種族の『僧侶』であることを考えれば、不自然ではないが。


そんなキョウラは、口が塞がらない俺達の方を向いて、どこか嬉しそうに言った。

「上手くいきました。これで、依頼完了ですね」


…それでふと思った。

キョウラ、俺達がアンデッドの調査の依頼を受けてた事を知ってたのか。







翌日、早速酒場へ報告に行った。

マスターは「やはりあなた方にお任せしてよかった」と安堵しつつも、最後のキョウラの活躍には驚いていた。

まあ、それはそうだろうが。


ちなみに、マスターはキョウラの正体…というか経歴に薄々気づいていたようで、彼女の活躍を聞くや否や「ところで、あなたはもしかして…サンライトの司祭エリミア様の娘さんですか?」と聞いてきた。

キョウラが頷くと、マスターはさらに驚いた。


「あの高名な司祭様の娘さんが、我が町のために活動してくださるなんて…感激です!」


「私は、自分のできる限りのことをしただけです。それに、お褒めの言葉を戴くにはまだ早すぎます。私たちにはまだ、しなければならないことがありますので」


「…と、言いますと?」


正直、今のキョウラの言葉は予想外だった。

「なんだ…もしかして、もう次にすべきことを見つけてたのか?」


「はい。昨晩、不死者を追っている時にもう一つ、悪い力を感じました。その根源を突き止め、対処したいのです」


「悪い力?」


「ええ…この町には、不死者の他にもう一つ、よくないものがいます。不死者ではありませんが、彼らよりずっと強大で、恐ろしいものです」


ちょっと怖くなったが、一瞬だけだった。

「…い、一体どんなものなんだ?」


「上位の異人です。それも、殺人者系の…」


「殺人者系の…ってことは、殺人鬼か?」


「おそらくは。ただし、昨日遭遇したものとは違います」


「なぜわかるのです?…もしやそれも魔法ですか?」

マスターが、首を突っ込んできた。


「いえ、これは私の異能によるものです。…それで、その殺人鬼なのですが…どうやら、かなり強い魔力を持っているようです。最初に感知できたのも、その強大な魔力でしたから」


「魔力か…」

正直、魔法や術にはまだ不安がある。

そもそも、防人は術より物理の方が向いている種族である。

術主体の相手には、必然的に不利になる。

だが、仲間がいればなんとかなるはずだ。


「そいつがどこにいるか、わかりますか?」


「今は魔力も何も感知できないので、探し出すのは困難です。昨日と同じように、深夜になったら探してみましょう」


「左様ですか。…では、念のため注意勧告の張り紙を店先に貼っておきます。皆様も、お気をつけて。キョウラさんの異能にケチを付ける訳ではありませんが、向こうが昼間には何もしない、とは限りませんので」


「わかった。じゃ、また明日報告すればいいな?」


「はい、それで結構です」






そうして店を出た。

殺人鬼…か。しかも、昨日会ったのとは違う…となると、一体どんなやつなのだろう。

正直、あまり強くないといいな…と思うが、そうはいかないのだろう。






馬車に戻ると、猶の部屋に数人が集まって何やら会議をしていた。

それは猶の他に青空、紗妃、(りょう)明司(みんじ)青空(そら)(じん)と見事に殺人者ばかりだった。

一瞬、町に上位種族がいることに気づいて、それで何かしたのかな?と思ったが、一応自然に切り込んだ。

「どうしたんだ?皆さんお揃いで」


「ああ、姜芽か。いやー、なに、この町にアンデッドがいるって言うから、作戦会議をしてたんだ」


「アンデッド?…あれ、でも昨日の夜…」

そう言いかけたら、迅が割り込んできた。

「昨日姜芽達が倒したのは一部だ。取り付くシマが無くて、裸でうろついてた奴らに過ぎない」


「え…じゃ、まだいるのか?」


「それも数十…まあ少なくとも50はいる」


「50…!」

その数に驚いた。昨日、20体は倒したのだが…まだ、50体もいるのか。

というか、それだけの数、一体どこに潜んでいるのか。


迅は、ため息まじりに言った。

「どうせやるんなら、徹底的にやっていただきたいもんだな…」


「仕方ないよ。彼らはうちらと違う。アンデッド狩りに関しては、素人なんだもん」

未菜がフォローしてくれた…かと思えば、こちらを向いて謝ってきた上に、アンデッド…ことに今回出没しているスペクターについての説明もしてくれた。


それによると、スペクターは生きた人間や異人、物に取り憑いて操る能力を有しており、操られるものは普段の数倍の力を出すことができる。さらに、他者に取り憑いている間はアンデッド特有の魔力をほぼ消し去ることができる。

単体では弱いが、他者に取り憑くことで真価を発揮するタイプのアンデッドである、とのことだ。


「まあ取り憑いたところで完璧に魔力を消せるわけじゃないし、あたしらなら普通に見破れるんだけどね。にしても、まさかこんなに町の人達に取り憑いてるとは思わなかったよ。国王様は、何をやってるんだろうね」

未菜は、呆れたように言った。


「なんか、最近は国民の前に顔を見せないらしいぜ。ちょっと前まで、定期的に顔を出してたらしいけど。なーんか怪しいよな、こっちはこっちで調べてみる必要がありそうだ」


「確かにね。…でさ、姜芽さん。今、あたし達は今晩に奴らをいぶしだしてやろうか、って話してたとこなんだけど…よかったら、あの修道士と一緒に協力してくれない?」


「ああ、いいぜ」


「サンキュー。まああんたならそう言ってくれると思ってたよ。修道士…じゃなかった、僧侶さんにもよろしく言っといてね」

言うまでもなく、キョウラのことだろう。

それでは、と部屋を出ようとした時、亮が気になる発言をした。


「しかし、50か…これだけの数が町の人に取り憑いているとなると…私達だけではなかなかきついな。"伝説(レジェンド)"が来てはくれないだろうか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ